「家族は悪魔と手を組んだ」ハリー王子、ふたつのインタビューで語った"現状"とは?
Culture 2023.01.10
1月8日、回想録の出版を2日後に控えたハリー王子が、CBSとITVでそれぞれインタビューに応じ、思いを語った。
ハリー王子のことを「まるでカーダシアン家のようだ」と批判する人もいる。回顧録の発売を2日後に控えた1月8日、イギリスのITV、アメリカのCBSのそれぞれでハリー王子のインタビューが放送された。アンドルー王子のスキャンダルからサセックス公爵の称号を維持し続けていることや、カミラ王妃との不仲など、さまざまな話が飛びかった。
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回顧録は書く必要があった
ハリー王子はまず、回顧録を書く「必要があった」と言い、家族を「傷つけるつもりはない」と断言した。メーガン夫人の夫は、イギリスのITV局に対し、「38年間、多くの人が私のストーリーを意図的に歪曲・操作しながら語っていた。そろそろ自分の手に取り戻し、自分で自分のストーリーを語る良い時期だと思った」と語った。
さらに「父も兄も家族も自分は愛している。それはこれからも変わらない。彼らを傷つけたり責めたりしようと思ってこの本を書いたんじゃない」とも言った。ウィリアム皇太子の弟は2020年に妻メーガン夫人とカリフォルニアへ移住したことに対する「責任」を明確にすることを条件に家族と「和解」する意思があることも語った。
2021年にアメリカのジャーナリスト、オプラ・ウィンフリーがおこなったインタビューに関連し、ハリー王子は、王室メンバーのひとりが生まれてくる子どもの肌の色の話を持ちだしたからといって、王室が人種差別をしたと自分は非難していないと語った。「自分が非難したんじゃない。イギリスのマスコミがしたんだ」と言い、「無意識の偏見」について語った。
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「悪役」はカミラ?
もっともどちらのインタビューでもサセックス公爵はウィンザー家に対して容赦なかった。ITVでは、イギリス王室がイメージアップのために「悪魔(=タブロイド紙)と手を組んだ」と語った。「私や家族について長年嘘をつき続けてきた末、ある時点で一部の家族と報道機関の関係を修復するため、言うなれば悪魔と契約することに決めた」
ハリー王子はインタビューの中で、父親の妻であるカミラ王妃をことさら批判し、メディアが報じたプライベートな会話の一部は彼女が「リークしたとしか考えられない」と語った。そして彼女は「危険」で「意地悪」な女性であり、マスコミとの「コネ」を作ることで「自分のイメージアップを」図ろうとしたと非難した。それが誰かに悪影響を与えることには無頓着に。また、自分たち夫婦についての嘘が出回ったのに、王室は「真実を話すつもりがなく」自分たちを守ってくれなかったことも語った。
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バルモラル城へ赴く
一方、CBSの「60ミニッツ」でのインタビューでは、2022年9月8日に女王が亡くなった際、家族の態度が「ひどかった」ことを語った。女王の枕元へ一緒に行こうと「誘ってくれなかった」というのだ。当時、バルモラル城へどのように行くつもりなのか、兄に問い合わせていたにもかかわらず。
「その数時間後、ウィンザーとアスコット周辺に住む親族一同が一機の飛行機に乗った。12席か14席、もしかしたら16席の飛行機だった。だが自分は招かれなかった」とハリー王子は苦々しく語った。回顧録ではチャールズ3世からメーガン夫人を連れてこないよう言われたことが書かれており、この部分はマスコミにリークされている。
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「ファブ・フォー 」なんて一度も存在しなかった
アーチーとリリベットの父親であるハリー王子は、一族が妻の「苦しみ」に「加担」してきたと思っており、一族を「虐待者」になぞらえている。彼によると、ウィンザー家はメーガン夫人の評判を落とすようにしむけ、そのせいで夫妻はカリフォルニアに移住することになったが、一族には「和解するつもりは一切ない」そうだ。だからなのだろう、サセックス公爵がCBSで語ったように、「かなり長い間」父親や兄と言葉も交わしていないのは。
ハリー王子はキャサリン皇太子妃を「姉のような存在」と呼ぶ一方で、メーガン夫人に対して「ステレオタイプ」なレッテルを流布させたことを非難する。ウィリアム皇太子夫妻は義妹を「バツイチで混血のアメリカ女優」と描写し、ふたりの態度が王室に彼女を迎え入れるにあたって「障害になった」そうだ。また、「メグジット」前に自分たち夫妻と兄夫妻が「ファブ・フォー」と呼ばれたことに関しては、「実体のない」呼び名だったと語った。結婚当初から競いあう関係だったそうだ。「すぐにメーガンvsケイトという構図になった。しかも公の場でそんなことが起きるともう隠せない」とITVの番組のインタビュアー、トム・ブラッドビーにハリー王子は語った。
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ダイアナ妃の死
「最愛の兄であり宿敵」についてハリー王子は回顧録でもインタビューでもこきおろしている。とりわけ2019年にメーガン夫人をめぐって口論になった際、ウィリアム皇太子が自分を地面に投げ飛ばしたことを非難している。自分がセラビーを受けていなければ、兄を殴り返しただろうとも。
1997年8月のダイアナ妃の死にも話は及んだ。最初、兄とふたりでこれが母の自作自演ではないかと思ったそうだ。つまり、母は交通事故で死んだのではなく、「しばらく姿を消す」ことにしたのだということだ。当時13歳だったハリー王子は、すべてが真実であることを確認するために事故写真を見せてほしいと頼んだと、CBSのインタビューで語った。お付きの秘書官が見せてくれたそうだ。
回顧録では母のダイアナ妃が亡くなった後のトラウマに関しても多く言及されている。ITVでのインタビューでハリー王子は「一度しか泣かなかった。埋葬のときだ」と語り、兄と一緒に当時ロンドンのケンジントン宮殿の外で弔問に訪れた国民と握手しなければならなかった時のバツの悪い思いを語った。
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恥ずかしいスキャンダル
アンドルー王子に関してもハリー王子は矛先を向けた。前ヨーク公爵がジェフリー・エプスタイン事件に関与して告発されたことを公の場で言及した王室メンバーはハリー王子が初めてだ。「恥ずかしい」スキャンダル、とハリー王子は表現した。
「恥ずかしいスキャンダルの渦中にあり、若い女性への性的暴行で訴えられているにもかかわらず、誰も彼の警備をやめるべきだとさえ言っていない」と憤慨しながら、自分の警護はされなくなったことを語る。もっともアンドルー王子は、公務や軍での地位を剥奪された。ハリー王子は、称号を保持するかどうか尋ねられ、決して手放すことはないと答えた。「手放したって何も変わらない」と付け加えた。
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ウィリアム皇太子は激怒
バッキンガム宮殿はいまのところ、ハリー王子の話に公には沈黙を守っているが、英国のメディアでは否定的なコメントも出始めている。サンデー・タイムズ紙は、ウィリアム皇太子の関係者の言葉を引用し、皇太子は「悲しく」思い、「激怒している」が、「家族や国のために黙っている」そうだ。一方、ハリー王子は兄の意図がよくわからないと言う。
5月のチャールズ3世の戴冠式までの間に、「いろいろなことが起こり得る。ボールは彼ら側にある」とITVのインタビューで語っている。そして「黙っていても事態は好転しないと思う 」と続け、「父親や兄が自分の本を読むとは思えない 」が、家族との「対話」を望むと語った。
1月5日以降、イギリスのメディアのハリーの話に対する反応は、童貞喪失や薬物使用などあまりにプライベートな内容に対する疑心と、王室に対する公然の攻撃のように見えることへの憤りがいりまじったものになっている。アフガニスタンでの任務でタリバンの戦闘員を25人殺害したという告白は、とりわけ大きな反発を呼んだ。ウィンザー家は反応しなかったが、サセックス公爵はチャールズ3世の戴冠式で「公式な役割」から一切外されているようだ。
text: Chloé Friedmann avec AFP (madame.lefigaro.fr)