エゴン・シーレから現代まで......眺めることで自分を見つめ直す、今月の展覧会4選。

Culture 2023.02.04

都市の運動から抜け出し「ただ、眺める」体験。

SKY GALLERY EXHIBITION SERIES vol.5『目 [mé]』

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深遠な洞察力とスケール感を持つメンバー、荒神明香の発想を、見事に概念化・物質化してきた現代アートチーム目[mé]。ある現象の不思議さのエッセンスを不思議なまま掬いとり、日常と地続きの風景に異空間を構築することで、果てしなく不確かな現実世界が実感に引き寄せられる圧倒的な作品を次々と展開してきた。本展では、世界の不確かさを見つめる彼らの観点と、非日常的な視座から都市を眺めるSHIBUYA SKYの眺望を重ね、膨大で無常な都市という運動体と、その運動を担いつつ固有の時間と生活を営む私たちの現在地を、ただ「眺める」ことを促す。既成概念や定説を疑い、五感の隙間を狙い撃ちする彼らのアートが、またひとつ哲学するきっかけを与えてくれるだろう。

SKY GALLERY EXHIBITION SERIES vol.5
『目 [mé]』

会期:開催中〜3/24
会場:SKY GALLERY(東京・渋谷)
営)10:00〜22:30 
無休
料)一般¥1,800 ※渋谷スカイ入場チケット

●問い合わせ先:
03-4221-0229 
www.shibuya-scramble-square.com/sky/me

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安心と閉塞がせめぎ合う、多彩な室内の表現。

『部屋のみる夢―ボナールからティルマンス、現代の作家まで』

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コロナ禍で誰もが多くの時間を過ごした「部屋」の空間。本展では19世紀から現代まで、密室で起こる出来事や窓から差し込む光などを着想源とした室内の表現に特徴のある作家を取り上げ、小さな世界の中で織りなされる親密な記憶や夢想のありようを見つめ直す。無数の突起物に覆われて変容したベッドにオブセッションを込めた草間彌生や、日常生活を送りつつ制作に明け暮れた室内を親密な眼差しで捉えたヴォルフガング・ティルマンスの新収蔵作品を展示。スケールや時間の感覚を揺るがす髙田安規子・政子の緻密なインスタレーションや、コロナ禍において庭や自然から一層の渇望を促された佐藤翠と守山友一朗による、閉じられた部屋と開かれた自然の関係を再考する新作にも注目したい。

『部屋のみる夢―ボナールからティルマンス、現代の作家まで』
会期:1/28〜7/2
会場:ポーラ美術館(神奈川・箱根)
営)9:00〜17:00 
無休
料)一般¥1,800

●問い合わせ先:
0460-84-2111
www.polamuseum.or.jp

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自分とは何者かを問い続けた画家の葛藤。

『レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才』

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19世紀末を経て、芸術の爛熟期を迎えたウィーンで28年という短い生涯を駆け抜けたエゴン・シーレ。保守的な教育に満足せず美術学校を退学し、若い仲間と芸術集団を立ち上げるが、常識にとらわれない創作活動により逮捕されるなど、波乱に満ちた生涯を送った。ナイーブな感受性による深い自己洞察で、時に暴力的なほど生々しく人間の内面や性を描き出した。本展では、ウィーンのレオポルド美術館の所蔵作品を中心にシーレの生涯と作品を振り返るほか、クリムト、ココシュカ、ゲルストルなど同時代の作家たちの作品も併せて紹介。絵画の伝統を打ち破る挑発的な裸婦像やクリムトの影響が見られる装飾的な静物画など、夭折の天才画家のアイデンティティ追求の葛藤を実感する体験となる。

『レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才』
会期:1/26〜4/9
会場:東京都美術館(東京・上野)
営)9:30〜17:30 ※金曜〜20:00
休)月
料)一般¥2,200 ※日時予約制

●問い合わせ先:
050-5541-8600(ハローダイヤル)
www.egonschiele2023.jp

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社会の暗部を覗かせるダークなユーモア。

『Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎』

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日常で実感するズレや矛盾、摩擦に着目し、暗に定められたルールや模範、定説に潜む先入観に批判的な視点を注いできた泉太郎。裏と表、自由と不自由など、日頃無意識的に切り分けられる常識を懐疑的に見つめ、思いがけない角度から疑問を提示し続けている。海外でも2017年にパリのパレ・ド・トーキョー、20年にバーゼルのティンゲリー美術館で個展を開催した。本展では、古墳や陵墓、ストライキ、再野生化、仮病、鷹狩におけるマニング(懐かせる)やフーディング(目隠し)のほか、数々のキーワードが絡みあう思考のプロセスと、コスプレ、キャンプ、被葬などの体験を織り交ぜ、不可知に向き合い続けるための永久機関を立ち上げる。社会の暗部を覗かせるダークなユーモアは健在だ。

『Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx. :泉太郎』
会期:開催中〜3/26
会場:東京オペラシティ アートギャラリー(東京・西新宿)
営)11:00〜19:00
休)月、2/12 
料)一般¥1,200

●問い合わせ先:
050-5541-8600(ハローダイヤル)
www.operacity.jp/ag

*「フィガロジャポン」2023年3月号より抜粋

text: Chie Sumiyoshi

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