我が愛しの、ジェーン・バーキン カトリーヌ・ドヌーヴら、俳優同士の優しい繋がり。

Culture 2024.06.13

同時代を駆け抜けた同志、年下の共演者......。どこか家族のような結びつきがあった3人の俳優が明かす、ジェーンとの思い出とは?


カトリーヌ・ドヌーヴ
女優

思うまま自由に生きて、
ある意味フェミニストだった。

02-memories-of-jane-230206.jpg

1977年、パリのナイトクラブ、レジーヌで開かれたポール・アンカのパーティで一緒だったふたり。©️ Bridgeman/amanaimages

作品で共演したことはなかったけど、ジェーンにはとても親しみを持っていました。また、女性としても敬愛していました。近所に住んでいたので、よく路上で会ったものです。ケイトが亡くなった時は、娘を持つ同じ母親として、子どもに先立たれることがどれだけ辛いかと思い、花を持ってジェーンの家に駆けつけ、彼女を抱きしめました。次女のシャルロットは、映画デビュー作『残火』(1984年)で私の娘役を演じてくれたので、それ以来ジェーン一家を家族のように感じていたのです。彼女は女性として思いのままに自由に生きた人だと思うし、いまとは違うかもしれないけど、私たちの時代としては、ある意味フェミニストだったのかもしれません。

Catherine Deneuve
ジェーンより3歳年上で、10代から映画に出演。1964年の映画『シェルブールの雨傘』のヒットで世界的スターに。23年秋に公開された『Bernadette』では、シラク元大統領の妻を演じて話題に。

---fadeinpager---

パスカル・グレゴリー
俳優

太陽のように明るく、
裏に暗さを秘めた気遣いの人。

pascal-greggory-photos-240613.jpg

僕が初めてジェーン・バーキンに会ったのは1985年、マリヴォー作『贋の侍女』で主役を演じていたナンテール・アマンディエ劇場の楽屋です。演出家パトリス・シェローが紹介してくれた。太陽のように明るく、裏に暗さを秘めた人だと思った。その後、パリのマルシェで会ったりすると、家族のように親しく話しかけてくれた。彼女がジャック・ドワイヨンと暮らしていた時に、僕が彼の映画に出たので、自宅に夕食に招かれたことがあって、パトリスと一緒に行ったことがある。少し遅れてセルジュ・ゲンズブールもやって来て、ジェーンは少し落ち着かない様子になって、セルジュとジャックの両方にとても気を遣っていた。当時、病み上がりだったセルジュはステッキをついていたよ。セルジュが先に帰ることになり、僕らはみんな外に出て、彼がタクシーに乗るのを見送った。ジェーンはともかく特別な女性だった。

Pascal Greggory
1954年、パリ生まれ。75年に舞台で本格的デビュー。2007年の映画『エディット・ピアフ~愛の讃歌』でセザール賞助演男優賞候補に。24年2月公開された『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』に出演している。@pascalgreggory

---fadeinpager---

マチュー・ドゥミ
俳優、映画監督

自然体で冒険好き、
どこかロックンロールだった。

04-memories-of-jane-230206.jpg

1987年の作品『カンフー・マスター!』。マチュー・ドゥミが「家族ぐるみで付き合いがあった」と言うように、本作ではジェーンの娘役をシャルロットが演じたり、ルー・ドワイヨンも出演している。©️ Ciné-tamaris/ReallyLikeFilms

カンフー・マスター!』の撮影の時、僕はまだ13歳で赤ん坊同然だった。母のアニエス(・ヴァルダ)はジェーンをフィルムに収めたくて、彼女がいろいろなシチュエーションで異なるキャラクターを演じるという漠然としたアイデアだけを抱いて作り始めた。それが『アニエスv.によるジェーンb.』だった。その中のひとつの要素がジェーンのほうから提案してきたもので、40歳の女性がミッドエイジクライシスに陥り、とても若い男の子と恋に堕ちるというものだった。結果的にそれがひとつの独立した映画となったのが『カンフー・マスター!』だ。

撮影前にすでにジェーンに会ったことがあったかは覚えていない。当時僕は映画に興味がなくてやりたくなかったし、学校よりもビデオゲームにハマっているような子どもだったんだ。それでアニエスが僕に合わせて、ビデオゲーム好きな少年の役にした。アニエスもジェーンも、近しい人と家族のように接して仕事をするから、すぐに家族ぐるみで打ち解けられたし、撮影後もジェーンはしょっちゅう家に遊びに来ていたよ。

ジェーンはとても自然体だ。たぶん映画のテーマが微妙だったこともあるのか、すごく優しかった。だからキスシーンも問題なくできた。ジェーンが僕の口に指を入れて、トイレで吐かせるシーンはおもしろかった。偽の嘔吐物を用意したりして。具体的なエピソードを覚えているわけじゃないけれど、いつもみんなで一緒に昼食を食べてヴァカンスみたいに楽しかった。撮影をした家は当時実際にジェーンが住んでいた家で、英国風の内装で、暗いなあと思った(笑)。

ジェーンは冒険好きで、どこかロックンロールなところがあって、何も恐れない。『アニエスv.によるジェーンb.』はまさにそんな彼女が出ていると思う。アニエスはジェーンがいろいろな役を演じるのを楽しんでいたし、彼女の可能性を見たかったんだと思う。ミューズだけど、ただのお飾りではなくみんなをインスパイアする、エネルギーとカリスマ性にあふれた人。言葉で説明するよりも、映画を観てもらえればそれが一目瞭然だと思う。

Mathieu Demy
1972年、パリ生まれ。映画監督のジャック・ドゥミとアニエス・ヴァルダを両親に持つ。ジェーン・バーキンとはアニエス・ヴァルダが関わる作品で共演。現在は主にフランスのドラマへの出演が多数。@mathieudemy

※『カンフー・マスター!』『アニエスv.によるジェーンb.』は8月23日より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開予定。

Indexthumb-500-bkpk-jane-burkin-index-2403.jpg

▶︎ジェーン・バーキン、永遠のファッションアイコンの魅力を紐解く。

*「フィガロジャポン」2024年3月号より抜粋

text: Kuriko Sato (Mathieu Demy)

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

Business with Attitude
Figaromarche
あの人のウォッチ&ジュエリーの物語
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories