独自のセンス全開のウィローの新作ほか、注目アルバム3選。
Culture 2024.07.04
人気グループによるコンセプトアルバム。
『ラブ・ハート・チート・コード』ハイエイタス・カイヨーテ
ビート ¥2,860
何度もグラミーにノミネートされ、いま最も動向が注目されている音楽集団の最新作は、これまで以上に野心的な作品に仕上がっている。ゲストも含めた凄腕ミュージシャンによるサウンドプロダクションは、ストイックなビートを繰り出したかと思うと、たゆたうようなチルな雰囲気を作り上げていく。いずれもネイ・パームの個性的かつ変幻自在のボーカルによって、彼らにしか成し得ない世界を構築しているのが圧巻。神秘的なアートワークも含め、トータリティを感じさせる大作だ。
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ポップながら実験的な指向を感じるソウル。
『エンパソーゲン』ウィロー
ビッグ・ナッシング ¥2,970
ウィル・スミスの娘という話題性を伴って登場したシンガーが早くも6作目を発表。ジョン・バティステとセイント・ヴィンセントが参加しているということだけでも、力の入りようが伝わるだろう。実際、クールな佇まいでありながらも、時折エモーショナルな歌声を聞かせるスタイルにいつしか引き込まれる魅力的な作品だ。ジャズやネオソウルに接近したオルタナティブな感覚は昨今のR&Bのトレンドであるが、時代性だけでなく独自のセンスを全開にした唯一無二の作品に仕上げている。
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最新サウンドとリンクした驚くべき問題作。
『ヘイ・パンダ』ハイ・ラマズ
Pヴァイン ¥2,750
ショーン・オヘイガン率いるソフトでドリーミーなポップサウンドを展開するバンドの、長い沈黙を経た8年ぶりの新作。旧来の桃源郷的なテイストはそのままに、ヒップホップやR&Bのサウンドを大胆に取り入れたことで、彼らの持ち味が現代的にアップデートされている。SZAやスティーヴ・レイシーにインスパイアされたという、硬質で抑制されたビートやオートチューンを駆使したボーカルなどに驚かされつつも、独特の浮遊感を保ったまま新しい世界に連れていってくれるのはさすが。
*「フィガロジャポン」2024年8月号より抜粋
text: Hitoshi Kurimoto