50歳の電撃婚! 新作ドラマで大石静が描く「しあわせな結婚」とは?
Culture 2025.03.27
7月からスタート予定のドラマ「しあわせな結婚」(テレビ朝日系)。主演は阿部サダヲ、脚本は昨年、大河ドラマ『光る君へ』の終了後、初の執筆となる大石静だ。物語は阿部演じる、弁護士の原田幸太郎が50歳にして電撃結婚することから始まる。ただ、最愛の妻となったネルラはとてつもなく大きな秘密を抱えていた......という、マリッジ・サスペンスだ。まだヒロインも未発表、第1話を書き終えたばかりという大石に、作品や自身の結婚観についてインタビューを行った。
──ドラマ作りのヒントは日々の生活の全てにある、と以前のインタビューでお話していらっしゃいました。今回は生活のどこに着想を得て、ホームドラマでもあり、マリッジ・サスペンスでもある作品が誕生したのでしょうか。
今回のチームとのコミュニケーションで、成立した作品です。ホームドラマがテーマと聞いて、のどかなイメージをしていたんですけど、放送時間はテレビ朝日の看板である木曜9時。事件的要素を加えた方がいいというプロデュ―サーの意見と、自分の経験と、ずっと考えていた企画を合致させています。演じるのは私が日本一の役者だと思っている阿部さんですから、こちらからお願いすることも、求めることもないです。どんな芝居してくれるか、いまから楽しみでなりません。

──これまでも「長男の嫁」(1994年)、「大恋愛〜僕を忘れる君と〜」(2018年)、「恋する母たち」(2020年)と、多くの結婚や家族に関するドラマの脚本を書かれています。今回、ご自身が70代を迎えて書く「しあわせな結婚」は、いままでの作品と何か違うものはありますか?
なんでみんな年齢のことばかり言うのかしら? 私が私らしいものを書くことは、年齢にはほとんど関係ないと思います。それに夫婦の真髄は普遍的なものでしょう。結婚はお互いを許し合いながら、どこまで寄り添えるかに尽きると思うんですよ。お互いを許すことができなくなったら、夫婦はうまくいかないじゃないですか。
──ご自身はパートナーに対して許せなかったことはありますか?
一昨年、夫を亡くしているんですけど......。許せなかったことといえば、稼ぎが少なかったことくらいでしょうか(笑)。もう少し稼いでいてくれたら良かったなと思います。でも彼はずっと私の応援団でいてくれましたので、ま、それでいいかな、と思います。許せないというほどのことはないです。
──ドラマタイトルは「しあわせな結婚」ですが、大石さんにとって幸せな結婚とは何でしたか?
結婚ってね、あんまり幸せじゃないんですよ(笑)。でも幸せではないけれど、一応、夫婦並んで生きていくことを成し遂げられれば、結果的に幸せな結婚なんでしょうね。彼が生きている間は「も〜、お父さん、いつまで生きてんのよ!」と思っていました。「もうひとりになりたい」とも(笑)。でも苛酷な看病の末、夫を亡くしてから思い返せば、幸せな結婚だったような気はします。
──今回は主役の原田幸太郎が50歳で、電撃婚を果たします。結婚に憧れる人たちに、婚活や電撃的に結婚する方法があればアドバイスをいただきたいのですが......。
結婚は生活のペースを乱されますから、おすすめしないです。さらに電撃婚は"賭け"ですよね。ただ私も25歳の時に、出会って1週間で結婚の話が出て、その後1カ月というペースの電撃婚でした。一緒に暮らしてみたら相手に絶望することばかりでしたよ。それでも45年間も続いたから、結果的には良かったんですけども。それに実際に結婚したカップルで、とても幸せそうな人たちはいないと思います。幸せそうに見せておきながら、実は幸せじゃない。電撃婚や、幸太郎のように妻を守り抜こうとする夫は、夢ですよね。だからこそドラマで結婚生活に夢を見てもらいたいです。
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──これから夏まで脚本を書かれますが、体調は大丈夫でしょうか。以前のインタビューでも食生活に関しては「パンとワインがあればいい」。ふだんの健康管理には全く気を遣われないということでしたが......。
......うーん、大河で疲れ果ててしまって、恒常的に体調はあまり良くないんですね。若い方は検査を怠らない方がいいと思いますけど、私はこの頃、わざわざ自分から病気を見つけにいくのもどうかなと思っています。夫が生きていた頃は料理もしていたんですけど、独身になると栄養バランスも偏りがちですし、仕事以外で努力はしたくないので、運動も一切しません(笑)。でも、ひとつだけ、自分が倒れるまでは仕事をしていたいと願ってはいます。
──以前「ひとつのドラマに、私らしいセリフがひとつあればいい」とお話ししていらっしゃいましたが、今回の作品でも同じお気持ちでしょうか?
もちろん今回もそうです。そのセリフが1回の放送でひとつの時もあれば、2つか3つの時もありますけれど。脚本に私らしいセリフがなくては、プロとは言えませんよね。でも視聴者の皆さまは「どこにセリフがあるのか」と、深く考えて観ていただかなくてもいいんです。わかる方にわかればいいし、私たちチームに意図が伝われば。
脚本家
東京都に生まれる。86年「水曜日の恋人たち 見合いの傾向と対策」でデビュー後、現在まで連続ドラマの脚本を執筆。執筆作に「ふたりっ子」(96年)、「セカンドバージン」(2010年)、「家売るオンナ」(16年)、「和田家の男たち」(21年)、「光る君へ」(24年)などがある。
interview & text: Hisano Kobayashi