5冠受賞の話題作ほか、いま手に取りたい4冊。

Culture 2025.09.07

暑さもようやく和らぎ、季節は秋へ。
四季折々の随想録をはじめ、名作を語り直した話題作など秋の夜長に読みたい4冊をお届け――。


古民家を改築して宿を開業。旬を供する日々のエッセイ。

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寿木けい著 新潮社刊 ¥1,980

『わたしの美しい戦場』

ブドウ畑の真ん中にあった築130年の古民家と出合ったことがすべての始まりだった。料理家、エッセイストとして活躍していた著者は山梨県に移住。紹介制の宿、遠矢山房を開業する。オーナーシェフとして薪割りから調理までを担当、人をもてなすようになる。四季折々の里山の自然の豊かさをそのまま食卓に供するような日々。時間をかけ心を尽くして旬を集める。冬から秋にかけての12カ月を12章で綴った味わい深い随想録。

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黒人奴隷ジムが語ることで、あの名作の世界を覆す。

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パーシヴァル・エヴェレット著 木原善彦訳 河出書房新社刊 ¥2,750

『ジェイムズ』

『ハックルベリー・フィンの冒険』というアメリカの良心みたいな名作を、ハックと行動をともにする逃亡奴隷ジムの目線で語り直す。白人が優越感に浸れるように敢えて拙い英語を使い、愚鈍なふりをする。すべて過酷な現実を生き延びるための処世術だ。多くを語らなかったジムが、実は豊かな内面を持つ人物として描かれ、それこそが白人社会が恐れていたことだと看破してみせる。全米図書賞、ピュリツァー賞など5冠受賞の話題作。

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いまを生きる人々の街の声が、聴こえてくるような詩集。

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黒川隆介著 実業之日本社刊 ¥2,600

『生まれ変わるのが死んでからでは遅すぎる』

夜の雑踏に身を潜めていると、自分も孤独だが誰もが孤独で心地いいことがある。そんな時に聴こえてくる街の声を集めたような詩だ。「夜更かしなのは怠惰だからではない/深夜三時に散歩すればわかる/地上が貸し切りだ」。声高に自己主張したりしない人たちが心の奥で本当は思っていることを、流行りの歌も歌ってはくれないから。鮮烈なタイトルを裏切らない、しぶとい言葉にぐっとくる。

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日常なのにエロティック。たなかみさきのイラスト集。

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たなかみさき著 トゥーヴァージンズ刊 ¥3,520

『日読み』

たなかみさきの描く日常のエロはとてもキュートだ。無造作に髪を結んだうなじ、脱ぎっぱなしの服、おっぱいもお尻もこれ見よがしじゃない。女の子たちの日々の生活の中のワンシーン。365日の日めくりカレンダーのように描いたイラストには短い一言が添えられている。「変化を続ける私につまらない言葉をかけてはいけない」「心がポッキリ折れても蛇のように柔軟になっていく」、眠れない夜にめくったら、ぐっときてしまいそう。

*「フィガロジャポン」2025年10月号より抜粋

text: Harumi Taki

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