北海道・夕張の小さな書店「小鳩書房」で、大人が読むべき本と出合う旅。
Culture 2025.09.24
店主の"本愛"が詰まった個性派書店は全国に点在。北の大地で名作にどっぷり浸かったり、レトロな建物でアート本に刺激を受けたり。厳選された本とこだわりのインテリアを目的に、旅する気分で書店巡りを。
小鳩書房
[北海道夕張郡]
自分だけの時間と空間で、大人こそ読むべき古典の世界。
子ども向けだが大人にもファンがいる岩波少年文庫。絶版の作品も多い。
札幌市街から車で約40分の田園地帯にある小鳩書房。店主・柴田翔太の本業はハーブ園経営だが、岩波少年文庫に特化し世界一の蔵書を誇る書店を2023年に開業した。きっかけとなったのが祖父の書棚で発見した岩波少年文庫の『星の王子さま』。巻末の「一物も残さず焼きはらわれた街に、......若々しい枝が空に向かって伸びていった」などの言葉に打ちのめされたという。小鳩書房がユニークなのは、隣にあるハーブショップの白銀荘で鍵を受け取り、書店へ入ってからはすべておまかせというスタイル。ほかのゲストがなければ一日中店内を占有できる。国内にとどまらず、海外からの客が多いのもうなずける。
店内に入るとギャラリーが広がり、切り出した木に宮沢賢治の詩がレーザーで印字された作品が壁に掛かっている。右:木彫りの熊があちこちに。
ハーブショップで書店の鍵を受け取って入店。
装丁の変遷がわかるのも、同店ならでは。
赤い柄の表紙は津軽こぎんがモチーフで1950年の創刊当時の装丁。左から、『あらしの前』『あらしのあと』(ともにドラ・ド・ヨング著 岩波書店刊 各¥1,500)、見開きのものは当時の非売品目録、右は『星の王子さま』(サン=テグジュペリ著 岩波書店刊 ¥2,500)。
柴田店主と猫のシャイン。
左は書店兼住宅、右はハーブショップ。
*「フィガロジャポン」2025年9月号より抜粋
●掲載している価格や営業時間、定休日、料理は変更される場合があります。特に輸入本は取材時から価格が変わる可能性があります。
●レストラン利用時や宿泊時に、別途サービス料や入湯税がかかる場合があります。
photography: Ikuya Sasaki text: Yoshihiro Watanabe