平成から現在にいたるまで、毎クール連続ドラマを視聴し続けて、約3000本を網羅したドラマファンなエッセイスト/編集者の小林久乃が送る、ドラマの見方がグッと深くなる連載「テレビドラマ、拾い読み!」。今回は秋から始まったドラマをチョイス! 見逃してる方、まだTverで間に合います。
秋ドラマが始まった。出演者を見わたすといつになく、豪華な印象だ。三谷幸喜脚本、メインキャストがほぼ主役クラスの『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系)は、まるで和製ミュージカルを観ているように楽しい。主演・大泉洋のキャラクターが冴える『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系)もいい。妻役の宮崎あおいは39歳の年齢を疑いたくなるほど可愛い。彩豊かな作品が並ぶ秋ドラマで、私こと小林久乃が勝手にベスト5を選んでみた。「来週も見たい!」と小さな衝動を起こす5作品、今からでも連続ドラマには間に合うので、今夜はチャンネルを合わせてみようか。
MY B E S T5「ザ・ロイヤルファミリー」
日曜21:00〜/T B S系/妻夫木聡、目黒蓮ほか
栗須英治(妻夫木)が税理士から、派遣会社の競馬事業部に転職。馬主と共に勝てる競走馬を探し、育てる。普段、日曜劇場は「お父さんたちの月曜からの活力」と思っているので、お気に入りにはならないのに、今回の『ザ・ロイヤルファミリー』には夢中。まず題材が馬であるのも珍しいし、単純につぶらな瞳で可愛いし、毛並みが美しい。動物ビジュアルでグッとくる。競馬はあまり縁がなかったけれど、数多くの人たちのロマンが詰まっているのだと、ドラマで改めて確認した。少しヘタレでよく泣く人物の演技が似合う妻夫木の演技が、栗須の競走馬への想いとリンクする。女性ファンが今かと待ち兼ねていた目黒蓮が第4話から登場と、焦らすプロモーションも斬新だ。ドラマ舞台である、2011年のファッションや文化の再現率も面白い。
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MY B E S T4「娘の命を奪ったヤツを殺すのは罪ですか?」
火曜23:00〜/関西テレビ、フジテレビ系/齊藤京子、水野美紀
篠原玲子(水野)は嫁いだ娘が、ママ友たちのいじめによって自殺したと知り、外見を20代に整形(演:斎藤)、篠原レイコと偽名を名乗り、幼稚園児の仮の息子も取り入れて、娘の死の復讐に挑む。数多ある深夜ドラマでも本作がピカイチ。娘を死に追いやった連中を、娘と同年代に整形して仇討ちに出るとはテーマにインパクトがある。その母親を演じるのが水野美紀。彼女といえば数々の深夜ドラマで、視聴者を驚かせてきたサイコパスな演技の名士だ。ほぼ斎藤のターンで演じられているが、時折、水野がイマジナリー風に登場するとドラマがグッと引き締まる。復讐方法も色じかけや、お受験への母親の欲を利用......といった一般的なドラマの演出でも、斎藤の背後に水野がいるのだと思うと、気持ちが高揚。すごいんだから、水野美紀!
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MY B E S T3「ぼくたちん家」
日曜22:30〜/日本テレビ系/及川光博、手越祐也
50歳、動物園職員、ゲイの波多野玄一(及川)は同じアパートに住む女子中学生から、父親代わりに。さらにその中学生の担任教師・作田索(手越)に恋をしてしまい、同居を提案する。数々のドラマでインテリ教師、睨まれ役、キラー役......と何かと手グセの強いを演じてきたミッチーが、なんと今回は心優しいゲイ役に。恋したり、困ったりみたりとこのドラマでは"おじかわいい"全開なのだ。ミッチー演じる玄一にとある事情から仮の父親の契約をする楠ほたる役の、白鳥玉季ちゃんの演技が秀逸。両親に捨てられて、トー横キッズになる役なのに卑屈さが感じられないのはさすが。子役時代から見守っているけれど、いい俳優になるんだろうなあと、いまからツバをつけておく。
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MY B E S T2「小さい頃は、神様がいて」
木曜22:00〜/フジテレビ系/北村有起哉、仲間由紀恵
小倉渉(北村)は食品会社に長年勤務するサラリーマン。息子は消防士、娘は大学生。平凡でも順風な暮らしだと思っていたある日、妻のあん(仲間)から熟年離婚を言い渡されてしまう。全国のお父さん、号泣必至のドラマの登場です。離婚の「り」の字も想像だにしていなかった中年親父が、19年前に約束したと妻から三行半を突きつけられる。でもずっと我慢をしていた妻の気持ちも分かる。筆者の私個人は未婚だけれど、周囲の既婚女性の99%は離婚を考えていて、既婚男性は「ないない」と離婚を考えたことがないという。男って......。岡田惠和氏によるキャラクター豊かな登場人物を誰も置いてけぼりにしない脚本はお見事。小倉家が暮らす『たそがれハイツ』のどこかノスタルジックな雰囲気が良くて、住みたくなる。
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MY B E S T1「じゃあ、あんたが作ってみろよ」
火曜22:00〜/T B S系/竹内涼真、夏帆
海老原勝男(竹内)と山岸鮎美(夏帆)は結婚を目前にしながら、別れてしまう。良妻賢母を目指して、家事で勝男に尽くしてきた。が、芽生えてしまった自我で新しい人生を楽しむ鮎美、忘れられない勝男。インパクトのあるタイトルで、放送前からぶっちぎりの「秋ドラマ、ベストワンでは」と狙っていたけれど、期待が裏切られなかった。色々と見どころはあるけれど、なんと言っても竹内涼真による勝男の前時代男のアップデートぶりがいい。女性は家事ができなくちゃダメだと言っていたけれど、練習を重ねて筑前煮もおでんも、とり天も作れるようになった勝男。ほかに疑いながらもアプリ婚活にトライしてみたりと、初回の憎まれぶりはどこへやらの成長だ。そんな勝男と交際していた鮎美も、本当は自分が何をしたかったのかを考えて、新しい恋に進む(苦戦中だけど)。「自分らしい」ってどこか気恥ずかしい言葉だと感じていたけれど、彼女を見ていると「頑張れ、自分」と鼓舞する気持ちに。最終話、どうなるのか。
コラムニスト、ライター、編集者
平成から現在に至る まで、毎クール連続ドラマを視聴し続けて、約3000本を網羅したドラマファン。趣味が高じて「ベスト・オブ・平成ドラマ!」(青春出版社)を上梓、準レギュラーを務めるFM静岡「グッティ!」にてドラマコーナーのパーソナリティーを務める。他、多数のウェブ、 紙媒体にて連載を持ち、エンタメに関するコラムを執筆中。







