「ウォール街の暴君」「10人の子どもの父」お家騒動ブルックリン・ベッカムの義父、ネルソン・ペルツとは?
Celebrity 2026.02.09

ニコラ・ペルツ含む10人の子どもたちの父であるネルソン・ペルツは、アメリカでも屈指の恐れられる投資家のひとりだ。2022年以降は、ブルックリン・ベッカムの義父でもある。

フロリダ州マイアミで開催された「未来投資イニシアチブインスティテュート(FII)・プライオリティ・サミット」に出席したネルソン・ペルツ。(2023年3月30日、アメリカ)photography: Bloomberg / Bloomberg via Getty Images
写真には3人が写っている。片側には、喜びがあふれ出ているようなブルックリン・ベッカム。もう一方には、純白のドレスに身を包み、彼に笑顔を返す妻ニコラ・ペルツ。そしてその中央、ふたりの間に立っているのが新婦の父ネルソンだ。この日のために用意した原稿を手に、いままさに読み上げようとしているところだった。この場面が撮影されたのは昨年8月、ニューヨーク。結婚からすでに3年を迎えた夫妻が、誓いを新たにする場でのひとコマである。周囲には、白いバラのブーケの陰に笑顔を隠しながら、ペルツ家の一族がずらりと座っていた。ニコラの母親、そして9人のきょうだいたち。しかし、そこにベッカム家の姿はなかった。
もしかすると、この写真は、数か月後に明らかになる出来事をすでに予示していたのかもしれない。ブルックリン・ベッカムと両親であるデビッドとヴィクトリア・ベッカムとの関係悪化は、いまや公然の事実として報じられている。この1枚の写真は、ひとつの転換点を示していたのだろうか。義理の息子となったブルックリンは、義理の家族の影響下に置かれ、もはや実の親ではないものの、明らかに、はるかに影響力のある家長のもとを歩む立場となった。
なぜなら、ネルソン・ペルツはブルックリン・ベッカムの義父であるだけではないからだ。「フォーブス」によると、彼はウォール街で最も恐れられる投資家のひとりで、推定資産は約16億ドルに上る。83歳にして、まるでドラマ「メディア王 〜華麗なる一族〜」のローガン・ロイのように、彼はいまも出席する会議室で冷や汗を誘う存在であり続けている。ベッカム夫妻のようにファッション界で確固たる影響力を持つ、きらびやかなイメージとは対照的に、ネルソン・ペルツは別次元、全く別の世界で活躍している。
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きっちりひげを剃った実業家
ブルックリンで中流ユダヤ系家庭に生まれたネルソン・ペルツは、食料品流通会社を経営する父モーリス・ハーバート・ペルツの姿を見て育った。私立校で学んだ後、名門として知られるペンシルベニア大学ウォートン・スクールに進学するが、すぐに学業を離れる。若き日のネルソンは、都市よりも道や森、天に向かって伸びるモミの木に心惹かれていたのだ。かつてはスキースクールのインストラクターになることを夢見た時期もあった。しかし、山にこもる前に、まずは世界を見たいと考えていた。「オレゴンへの旅のガソリン代を稼ぐために、家族が経営する食品会社で仕事を引き受けました。ニューヨークで生鮮や冷凍の果物や野菜を扱っていて、2週間、週100ドルでトラック運転手として働いたのです」と、ネルソン・ペルツは雑誌「ライフスタイルズ」のインタビューで語っている。この発言は、ジューイッシュ・バーチャル・ライブラリーに転載されている。「父は『ひげを剃るなら、その職を与えてもいい』と言いました。だから私は剃ったのです。会社は本当に小さな規模でしたが、そこにはあらゆるチャンスがある一方で、皆が犯している数々のミスも見えました。すると父は、『それが気に入らないなら、なぜ変えてみない?』と言ったのです」
こうしてロードトリップの夢は消えた。数年後、35歳になった彼は、実業家という役割にすっかりなじんでいく。1977年、父の死を受けて、兄のロバートとともに家族経営の会社で共同会長兼最高経営責任者に就任する。同じ年、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、A.ペルツ&サンズを食品流通業界の主要企業と評し、総売上高が「1億4千万ドルを超えた」と伝えている。数十年のうちに、彼は数えきれないほどの投資会社を次々と立ち上げ、判読しがたい巨大な帝国を築き上げていく。1985年には、ニューヨークを拠点とする自身の企業トライアングル・インダストリーズがナショナル・キャン社を買収。さらに、スポーツ用品チェーンのダナムズ・スポーツなども傘下に収めた。その後も、スナップルやハインツへの投資が続いていく。

ニューヨークの自身のタワービルにいるネルソン・ペルツ。photography: Bloomberg / Bloomberg via Getty Images
「私たちは何かを発明したわけではありません。アメリカン・ナショナル・キャンを世界最大の包装企業に育て上げたことも、スナップルを再建したことも、あるいはあまり知られていないものの同じく大きな成功を収めた他の案件も、すべてに共通しているのはただひとつ、基本に忠実な健全な判断力です」と、彼は雑誌「ライフスタイルズ」に対して語っている。
彼はそのインタビューの中で、自身のレシピに欠かせない"ひと味"、すなわち強烈な攻撃性については語らなかったようだ。というのも、ネルソン・ペルツはウォール街で最も恐れられている金融家のひとりとして知られている人物だからだ。英紙『タイムズ』によれば、英国における金融の中枢であり、「都市の中の都市」とも称されるロンドンシティにおいて、彼は消費財大手ユニリーバ(ダヴ石鹸の親会社)に対する攻勢で名を上げた。さらに、ハインツやモンデリーズから、ディズニー、そしてパンパースやジレットといったブランドを擁するプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)に至るまで、数多くの米国多国籍企業への買収や経営介入を通じて、その名を広く知られるようになった。取締役会での強硬かつ攻撃的な姿勢でも知られるペルツは、ある取締役から「年老いた暴君。ドナルド・トランプと同じだ」と評されたことさえある。この比較が決して偶然ではないことは、彼が2020年、後にアメリカ大統領となるドナルド・トランプの選挙キャンペーンに向けた資金集めを主導していた事実からも明らかだ。
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手強い慈善活動家
米誌「ローリング・ストーン」が「共和党を代表する有力な献金者」と評するように、ネルソン・ペルツの政治的関与は、彼が別の場面で掲げている価値観とは一見すると対照的に映る。というのも、強硬な姿勢を見せる一方で、彼自身は慈善活動家であることも公言しているからだ。実際、彼は「前立腺がん財団」をはじめ、複数の団体に積極的に関わってきた。ユダヤ教徒である彼は、反ユダヤ主義と積極的に闘っているほか、より広い意味で、人種差別や少数派に向けられるあらゆる差別にも反対している。さらに彼は、約40万人の会員を擁し、人権擁護に取り組む国際的なユダヤ系団体「サイモン・ヴィーゼンタール・センター」の理事会共同議長も務めている。「私たちは不寛容に対して常に警戒していかなければなりません。問題にすべきなのは反ユダヤ主義だけではなく、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック、アジア系の人々、そしてそのほかの人々に向けられる不寛容も同様です」と、彼はライフスタイル誌「ライフスタイルズ」で語っている。「そうしたものを目にしたなら、決して見て見ぬふりをしてはいけません。誰も、生まれつきそのような感情を持って生まれてくるわけではありません。それらは教育によってのみ身につくものです。だからこそ、親は自分たちが子どもに何を伝えているのかを意識する必要があるのです」
こうした活動に取り組むようになったきっかけは、数年前、マディソン・スクエア・ガーデンの場内で起きたある出来事にさかのぼる。酔った男たちの一団が、彼とその友人たちに向かって侮辱的な言葉を浴びせたのだ。彼はこう振り返る。「すべては小さな出来事から始まります。そして、それをすぐに対処すれば、芽のうちに摘み取ることができます。私はその現場を間近で見てきましたし、子どもたちも、年月を通じて同じものを目にしてきました」
40年続く愛
ネルソン・ペルツには多くの子どもがいる。彼はその子どもたちが、自身の財産を受け継ぐにふさわしい、強靭で周囲から敬意を集める後継者に育つことを願っている。最初の結婚は22歳のときで、エマーソン・ラジオ&フォノグラフ社の共同創業者の娘であるシンシア・エイブラムスと結ばれた。この結婚からは、身元が公表されていないふたりの子どもが誕生している。その後、実業家としてすでに大きな成功を収めた後の1985年、元モデルのクラウディア・ヘフナーと再婚し、ふたりの間にはさらに8人の子どもが生まれた。現在70歳のクラウディア・ヘフナーは、ペルツ家の女家長として知られ、かつてはロレアル、カルバン・クライン、シャネル、レブロンなどのモデルを務めていた。
兄弟姉妹は年長順に、父のビジネスにも関わる経験豊富な実業家となったマシュー、トップモデルとして活躍するウィル、元アイスホッケー選手のブラッド、子ども服を専門とするデザイナーのブリタニー、若手起業家のディーゼルがいる。さらに、2024年公開の映画『Lola(原題)』を手がけた女優・映画監督で、ブルックリン・ベッカムの妻でもあるニコラ、そして最後に、今後の進路がまだ定まっていない双子のザカリーとグレゴリーが続く。ネルソン・ペルツは、子どもたちにとって成功の象徴であり続けている。それは仕事の面だけではない。私生活、つまり愛情面においても同様だ。娘のニコラは、2023年に米誌「コスモポリタン」のインタビューで、こう語っている。「両親はもう40年以上一緒にいますが、いまでもいつも冗談を言い合っています。父は本当に愛情深い人で、母が部屋を出た途端に『なんてきれいなんだ』って言うんですよ」と彼女は明かした。「ふたりはいまだに若い恋人同士みたい。しょっちゅうキスをしていて、あまりに頻繁なので、兄が『もう見てられない。目を閉じるよ、キスはやめて!』って言うほどです。あんなに深く愛し合っている両親を見て育つなんて、本当に素敵なことだと思います」
2026年の時点で、ネルソン・ペルツは、以前と変わらず、あらゆる面で恵まれているように見える。2024年3月に『ニューヨーク・タイムズ』に掲載された記事で、同紙の記者は彼の所有物リストを次のように描写している。「彼は億万長者だ。フロリダ州パームビーチに、ヘッジファンド運用者である億万長者ケン・グリフィンが移り住む以前、ペルツ氏は、同市で最も高額な固定資産税の記録を保持していた。評価額3億3400万ドルとされる海辺の邸宅によるものだ。ニューヨーク州ベッドフォードにある、ハイ・ウィンズと呼ばれる52ヘクタールの広大な敷地には、専用のヘリポート、屋内アイスリンク、さらには滝まで備わっている。彼は自身の会社のプライベートジェットも利用できる」
しかし、かつてスキーインストラクターを目指していたこの億万長者に、まだひとつだけ欠けているものがある。「彼はヨットを所有していない。いまのところは、借りているだけだ」
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text: Léa Mabilon (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi






