フィガロが選ぶ、今月の5冊 イスラム、異文化について、親密に語り合う往復書簡。
Culture 2017.12.21
ニュースでは伝えられない、異文化の壁を越えた往復書簡。
『私たちの星で』
梨木香歩、師岡カリーマ・エルサムニー著 岩波書店刊 ¥1,512
連日のように報道されているイスラム関連のニュースと、それを「わかりやすく」解説するテレビ番組の数々。いくら解説されても異文化に対する謎は解けぬまま。なぜならそこには個人としての顔がすっぽり抜け落ちているからだ。梨木香歩と師岡カリーマ・エルサムニーの往復書簡では、宗教というものが毎日食べるごはんと同じくらい自然で生活に根差したものであることが親密に打ち明けられる。国家や宗教といった群れに属さず、個人対個人の魂の交流が描かれたライブ感。この星の地下には「共感の水脈」が流れていることを確信させてくれる一冊。
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*「フィガロジャポン」2017年12月号より抜粋
texte : JUNKO KUBODERA