壮大な長江の情景に浸る、美しい叙事詩のような映画。
Culture 2018.04.01
大河の懐に抱かれるような、魂の叙事詩、霊妙な映画体験。
『長江 愛の詩』
主役は、古代以来、文明を育んできた大河・長江。河の化身のように「恋する女」がその流域に現れる。船長だった父を弔うため、青年が老朽船を上流へと駆動する。船の遡行に連れ、父と関係があったのか、「恋する女」も時を遡るごとく若返ってゆく。経済成長の代償として歴史ある古都があっけなく巨大ダムに沈んでも、太古からの時間が、慈悲の心を乗せて河面や河辺になお漂流するよう。どこかエロティックな幻惑感すら帯びて。魂の源流を濾し取るような名手リー・ピンビンの、広大無辺にして深遠なフィルムの撮影も圧巻だ。 ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞。
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*「フィガロジャポン」2018年4月号より抜粋
réalisation : TAKASHI GOTO