フィガロが選ぶ、今月の5冊 不可視の世界へ誘う、ポール・オースターの新作長編。

Culture 2019.01.12

サスペンスフルに進化した、オースター節全開の最新作。

『インヴィジブル』

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ポール・オースター著、柴田元幸訳 新潮社刊 ¥2,268

1960年代のコロンビア大学が舞台となれば、冒頭からオースターの青春小説の傑作『ムーン・パレス』を思い起こさずにはいられない。詩人志望のアダムは、フランス人の客員教授ルドルフから資金を提供するから文芸誌に参加しないかと持ちかけられる。不穏な事件に巻き込まれた顛末を、作家お得意の小説内小説を駆使してサスペンスフルに描く。語り手が替わると、小説も万華鏡のように色を変える。アイデンティティの消失を描いてきた作家の深化した語り口に惹き込まれる。見極めようとしても謎は深まるばかり。タイトルどおり不可視の世界に誘われる。

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*「フィガロジャポン」2019年1月号より抜粋

réalisation : HARUMI TAKI

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