何歳になったらパリに別れを告げよう?

Culture 2019.01.16

「ボルドーに戻って少しでも両親のそばにいてあげたいし、庭のある家を買って週末はもっと質の高い生活を送りたいわ」と35歳のエマニュエルは願う。ちなみにイル・ド・フランス(パリを中心とした地域圏)のふたりにひとりがエマニュエル同様、イル・ド・フランスを去ることを願っているという(2012年度CSA調査)。彼女は夫のロマンと2歳と6歳になるふたりの娘とともに、昨年7月にボルドーへと戻った。「9平米の部屋に子どもふたりはもう限界でした。十分なスペースもないし、家族の絆も乏しいし、生活そのものも貧しくなっていたわ」

190115-metro-parisien-metro-abbesses.jpgパリの地下鉄 アベス(Abbesses)駅 photo : Getty Images

そんな彼女もパリにひとり住み始めた頃の生活といえば、そこかしこでイベントがあり、飲み会もあり、レストランやバーで食べたり飲み歩いたり、ゆっくりブランチをしたり、その時代はベビーシッターなんて必要なく、時間は有り余るほどだった。

さよなら、パリ

「パリに住む多くの人々は日常に不満を抱えており、地方でのより豊かな生活に関心を持っています」と地方活性化団体「Parcours France」の共同創業者であるアントワーヌ・コルソン氏は述べる。同団体は毎年10月に地方に関するイベントを実施している。「通勤に多くの時間を費やし、パートナーと過ごす時間がどんどん少なくなり、働きすぎている自分にもう限界を感じました」と一昨年ナントに引っ越しをした31歳のアマディーヌは述べた。エクス・アン・プロヴァンスに旅立とうとしている36歳のアルバンもこう発言する。「パートナーはもう少しゆったりと生活する必要を感じているし、私は私で働く意義を見失っています」

そんな彼らは地方に何を求めているのだろうか。買い求めやすい不動産、自然との共存、家族ともっと親密に暮らすこと、そして都会の喧騒を離れた生活だ。「我々は成功するためにパリに住まわざるを得ない状況下にあります。教育の機会を得て、学び、ネットワークを構築していく場所なのです」と社会学者のジャン・ヴィアール氏は言う。問題は、獲得した豊富な経験を持ち、いつパリを去るかということだ。

決断のできる年齢は28歳

「パリを去るタイミングとしては、ふたつの波があります。ひとつはリタイアの時、そしてもうひとつは30〜40代に差しかかる時です」とアントワーヌは言う。新たな職を得て、地方へと旅立つ場合もあるし、そうでない場合もある。36歳のアルノーは次のように回想する。「少しリスクはありましたが、この仕事のためにすべてを投げ打って飛び込みました。勉強しながら専門性の高い仕事を得られると思ったからです」

現在、ボルドーでワイン部門のセールスマネージャーとして充実した毎日を送るアルノーは、何も持たずにパリを去ることの難しさについて認めている。「妻は仕事を見つけるのに1年近くかかりましたし、私も同様でした」

引っ越しについて社会学者のヴィアール氏はこう考える。「安定した基礎を得た時に去るというのがロジックでしょう。つまり、大人になって自分自身で生計を立てることができるようになり、子どもを育てることができるようになった時こそがそのタイミングといえるでしょう。最初の会社と正社員雇用契約し、第一子を出産するのが平均的に28歳です。そういったことから、パリを去るタイミングなど、選択することができるようになるのが30代以降なのです」

子どもにとっての大切な年齢

今回私たちが聞き取りを行なった人々の多くがパリを去る決断をしている。42歳のマリー・ロールの場合、“2番目の家族”のために仕事を辞める決意にはまだ至っていない。彼女は平日パリで仕事をし、長い週末はパリから2時間半以上かけて電車でサン・テミリオンに移動し、6月からそこに住むパートナーと3人の子どもたちに会いに行っている。当初は楽観的だった彼女だが。その生活はうまくいかなくなった。「すれ違いがあり、パートナー間にロジックが成り立っていませんでした。本来の家族として機能できなかったのです。家族というのはもっと側にいるべきでしょう。近いうちに選択を迫られ、引っ越しも考慮せざるを得ないでしょう」とヴィアール氏は言う。

「もし彼女がパリを去るのによいタイミングが見つからないというのであれば、“子どもにとって大切な年齢が存在する”ということを認識すべきです。私は4歳、6歳、12歳の子どもがいますが、想像力とエネルギーに満ち溢れ、日々自立しはじめています。明らかに家族にとって大切な年齢というのが存在し、たとえば、思春期を迎える頃には家族で出かけるのは難しくなります。思春期を迎える時には家族としての強い絆を作っておきたいですね」と「Parcours France」の共同創業者であるアントワーヌは言う。

「30〜40代というのは、仕事の専門性が高まり、個人としての生活スタイルもより定まってきます」と同氏は続ける。「特に新世代にとっては、パリという街で生きていくのは容易ではありません」と社会学者のヴィアール氏は述べ、次のように続ける。「人生とは短くても20年かけて育っていくものです。人生が長ければ長いほど、短い区切りで見ることができます。我々の両親世代は主に3つの人生目標(結婚、正社員雇用、家の所有)を掲げていました。しかし最近の30〜40代は結婚相手を変えたり、転職したり、政治に対する考えを変えたり、住まいを変えたり大忙しです」

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texte : Marion Galy-Ramounot (madame.lefigaro.fr), traduction : Hanae Yamaguchi

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