女子も大好き! バンクシー。 驚愕の「事件」を連発し、世界を揺さぶる覆面ヒーロー!?

Culture 2020.05.06

アート界におけるバンクシーの特異な立ち位置に目を向けるとともに、社会全体を巻き込みながら繰り返し演じられた、珠玉の“バンクシー劇場”を振り返る。


1999 年に故郷のブリストルを離れ、新天地のロンドンで活動を本格化させてから現在に至るまでの約20年間、バンクシーは実に多くの“事件”を引き起こしてきた。それぞれの行為が世間に与えたインパクトは、年々膨れ上がる彼の知名度と比例して巨大化する一方だが、かたやその行為のスケール感を見てみると、それは必ずしも右肩上がりとは言えない。なぜなら彼は初期も現在もまったく遜色がないほどに、毎回見る者の度肝を抜くような大立ち回りを一貫して演じてきたからだ。オークションやギャラリーといった既存のシステムに反抗し、かたくなにストリートで活動を続ける覆面アーティストの姿は、アート界を俯瞰から眺めるメディアの目にはどのように映っているのだろうか? ウェブ版『美術手帖』編集長の橋爪勇介に、バンクシーがバンクシーたる所以を訊いた。

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YUSUKE HASHIZUME
橋爪勇介 /
ウェブ版「美術手帖」 編集長

 

1983年、三重県生まれ。美術年鑑社『新美術新聞』で記者を務めた後、2016年に美術出版社入社。ウェブ版「美術手帖」を立ち上げ、副編集長を経て2019年から現職。バンクシー関連の記事は特に注目度の高いコンテンツ。

「バンクシーというアーティストはほかに比べる対象が見当たらないほどに特異な存在なので、それゆえに彼のアートも、“バンクシー”というジャンルとみなす以外に分類すべき枠組みがありません。現在、日常でアートの話題を耳にする時、それは“誰の作品がいくらで売れた”というような、作品の内容とは切り離されたニュースであることも多いですよね。しかし、ことバンクシーの場合は、事情がまったく異なります。というのも、彼の作品の多くはそれ単体で完結する性質のものではなく、むしろその作品が世の中に現出したことによって引き起こされるさまざまな現象のすべてが歯車となり、初めて全貌が明らかになる総合的な“装置”のようなものだからです」

ときに人は、その壮大ないたずらにも似た彼の曲芸を、畏敬の念を込めて“バンクシー劇場”と呼ぶ。

「今年2月にブリストルの街中で彼の新作が発見された際には、そのニュースが日本のメディアでも大々的に報じられ、山手線のトレインチャンネルにも速報が流れました。新作を描いただけで世界中のヘッドラインニュースになるようなアーティストは、美術史をひっくり返してみてもバンクシー以外には見当たりません」

さらに橋爪は、その状況を生み出しているバンクシーのスタイルの特徴についても触れた。

「彼のように社会性のあるテーマを扱うことは、現代アートの世界でも増えています。しかし多くの場合、作品を理解する前提として、ある程度のコンテクスト(文脈)を理解する必要があったり、美術史的な知識を求められたりすることも多く、決してわかりやすいものばかりではありません。それに比べてバンクシーのアートは常に単純明快で、しかもその時に誰もが頭の隅で感じている疑問や違和感のようなものをタイムリーにピックアップして、鮮やかに斬り捨てる社会風刺としての瞬発力も持ち合わせています。だからメディアもその作品の値打ちをアピールするまでもなく、単純に内容のおもしろさだけで話題にできる上に、幅広い層にリーチしやすいバンクシーの一挙手一投足を、こぞって報じているのです。その仕掛けを十分に理解していたとしても抗えないほど、バンクシー劇場は実に巧妙に仕組まれています」

当然、難しい説明がなくても伝播しやすいバンクシーの話題は、常にインスタントな情報を求めているSNSともこの上なく相性がいい。そうやって最終的にはメディアだけではなく、社会全体がバンクシーの手のひらの上で踊らされているのだ。

「さらに言うと、バンクシーの謎めいたキャラクター性も、他のアーティストとは比べものにならないほどキャッチーですよね。この隠しごとのできない情報社会にありながら、メディアもファンも無闇に彼の正体を暴こうとせずに、むしろ覆面ヒーロー的なアイコンとして、彼の活躍を楽しみに見守っている部分もありますよね」

そんなバンクシーの姿はアーティストというよりも、悪を懲らしめ弱者に手を差し伸べるロビン・フッドか、はたまた社会を混乱に陥れるジョーカーか、その存在を信じているものにだけ魔法をかけてくれる、ファンタジーの世界の住人のようにも見える。

Information

『バンクシー展 天才か反逆者か』

世界5都市を巡回しながら100万人以上を動員した展覧会が、日本初上陸となる約70点の作品とともに来日。大型スクリーンの映像も。
会期:~9/27
アソビル(神奈川・横浜)
開)10時〜20時30分(入場は閉館の30分前まで)
無休
料)日時指定前売り:一般¥1,800(平日)、アフター6¥1,500(平日)、¥2,000(土日祝) 

※現在休館中。今後の予定はHP参照。
※10月から大阪へ巡回予定。

https://banksyexhibition.jp
『バンクシーって誰?展』

バンクシー自身がプライベートコレクターに譲ったというステンシルアートをはじめ、体験型コンテンツも用意されるらしい。
会期:8/29~12/62021年夏開催予定
寺田倉庫G1ビル(東京・東品川)
※大阪、名古屋、郡山へも巡回予定。
https://ilovebanksy.com

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女子も大好き! バンクシー 。

réalisation : SHINGO SANO, バンクシー公式ページ

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