Kawakyun 篠原ともえが訪ねた、 革の生まれる場所。

Fashion 2020.11.18

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現在はアーティスト・デザイナーとしても幅広く活躍する篠原ともえさん。革を使ったものづくりのインスピレーションを求めて、鞣しの現場「栃木レザー」を訪問しました。

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“皮”はどのように“革”に生まれ変わり、バッグや革小物となって私たちの手元に届けられるのだろうか。
今回、革という素材をめぐる旅のナビゲーターを務めてくれるのは、自身も衣装デザイナーとして革を扱ったことがあるという篠原ともえさん。

「私がいちばん惹かれたのは、革が天然素材であるということ。自然からの贈り物である革が、どういうプロセスで私たちの手元に届くのか、その行程を見ることに興味がありました」

そう語る彼女は、「栃木レザー」へと足を運んだ。日本産の革のなかでも「植物タンニン鞣し」と呼ばれる手法にこだわり、熱心なファンも多い、日本を代表するタンナー(製革業者)のひとつだ。

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自然×自然は、相性がいい。

栃木駅からほど近い、趣のある古い建物と新しい工場とが隣接する広い敷地内は、若い従業員たちで朝から活気にあふれていた。そんな現場へ篠原さんを案内してくれたのは、栃木レザーの専務取締役・遅澤敦史さん。同社で革製造の全行程を経験し、栃木レザーの魅力を国内外で伝えている。

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自身がデザインした衣装を纏う篠原さん。原皮を水洗いする、ドラムと呼ばれる機械の前で。

その彼に、篠原さんが真っ先に投げかけた質問が、皮はどこから来たのか、ということだった。「食肉に使われた副産物です。最近ではSDGsが話題になっていますが、この業界はもともとがそうした考え方です」。遅澤さんがそう伝えると、篠原さんは晴れやかな表情で答える。「気になっていたんです。食肉として消費した動物たちの命の贈り物を無駄にしないで活用していく、素晴らしいですね」。疑問が解けたところで、革が生まれる場所へ出発!

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まだ毛が付いた状態で、塩蔵で輸入される原皮(げんぴ)。ドラムで24時間水洗いすることで、塩分や汚れを洗い流すという。「毛並みが綺麗」と篠原さん。

薄暗い広大な空間に、いくつものプールのような槽が並ぶ「石灰漬け」の現場を訪れた。その特徴的な光景と臭いに、篠原さんはかつて訪れたモロッコのフェズの鞣し工場を思い出したという。

「世界遺産でもある旧市街のフェズの鞣し工場では皮を柔らかくするために、鳥のフンを使っていたんです。一時は大量生産のために別のものに変えたこともあったそうですが、独特の風合いを引き出すのは叶わず、やはり天然のものは天然のものと相性がいい、揺るぎない答えがそこにあったそうなんです」

そんなエピソードにも通じるのが、栃木レザーの最大の特徴のひとつである「植物タンニン鞣し」だ。栃木レザーでは、主にミモザの樹液を使用している。

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4つの濃度の樹液に順番に、計1カ月ほど漬け込むという「植物タンニン鞣し」。篠原さんが「ワインのような色で美しいですね」と表現した、160ものピット槽が並ぶさまは壮観。

「いわゆる“鞣し”がここで行われます。生の皮を、樹液に含まれるカテキンやポリフェノールの効果で腐らないようにしています」と遅澤さんが説明する。

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粉状になったブラジル産のミモザの樹液を溶かして、植物タンニン溶液を作る。黄色い可憐な花を咲かせて春の訪れを告げるミモザが、革づくりに重要な役割を果たしている。

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遅澤専務(右)と。触れてみて、油分が入ったことで思いのほかしっとりした触感に驚く篠原さん。「生き物からいただいているっていう感じがしますね」

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油をなじませた革はセッターと呼ばれる機械で伸ばされ、その後2週間ほど乾燥。こうして自然乾燥させているところは、いまでは少ないのだとか。手作りの道具でてきぱきと大きな革を干している従業員の方に、「重いですか?」と篠原さんが尋ねる。手のひらを見せてもらい、「タコができてる! ごくろうさまです」と思わずねぎらいの言葉をかけた。

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チョコレート色に染まった革がドラムの中から出現。この笑顔を見せた後に篠原さんがとった行動は……

染色工場に入ると、ちょうど染色された革がドラムから出されるタイミングだった。その光景を見て、篠原さんはスチールカメラマンの井上佐由紀さんにカメラを借り、自らシャッターを切った。

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篠原ともえさん撮影。「いい表情が撮れました!」と職人さんとのコミュニケーションも。

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染色した革を伸ばす「再セッター」の工程にて。綺麗に伸ばし、ぎゅっと締まることで丈夫になる。赤の発色の美しさも栃木レザーの特徴。

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以前から篠原さんを応援していたという職人さんと。

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毛並みに添って、命に敬意を払うように。

仕上げを行う工場へ移動。その中で最初に訪れたのは「ハンドセッター(手伸ばし)」の工程。ここで篠原さんはとても印象的な光景に出合うことになる。

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工場の中に入ると、色味も風合いもさまざまな革が積み上げられている。

ハンドセッターとは、すでに1回機械で伸ばした革を、さらに職人が両手で扱う機械とヘラを使って手伸ばしする工程。全身を使ったリズミカルな動作を見て、篠原さんは「ダンスのよう!」と思わず拍手する。

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ハンドセッターの作業の様子。1枚1枚、革の個体差に合わせて力加減を変えているという。

「牛の毛並みは下に向かっているので、その毛並みに添ってならしているんです。いまは機械も発達しているけれど、自然物である革には個体差があり、いろんな工程を経ていく中で、その都度慣れた人間の目で、確認しながらやっています。この作業を取り入れているところは、いまでは少なくなりましたが、このひと手間をかけることで“生き物対生き物”の関係に戻す。そんな昔ながらの方法にこだわっています」と、遅澤さんが説明する。

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トライしてみたものの「あ、できない……(笑)。集中力がいりますね」。見た目以上に力のいる作業のよう。

「動物の毛の流れに合わせて、丁寧に丁寧に撫でるようにならしていくのを見て、私はこういうふうにものづくりと向き合えているのかな、って。職人さんが目を凝らして、手の感触を使って素材と向き合っている姿に、なんて尊い仕事なんだろう、と。私もこうして育まれてきた革で、誰かの役に立つような、優しいアイテムを作れたらいいな、と心がときめきました」

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伸ばした革は、1枚の重さが15キロほど。この後1週間ほど乾燥させる。「幟(のぼり)のよう!」

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手持ちのスプレーで塗装する行程。機械での染色では個体差により色の付き方が違うため、1枚1枚目で見ながら微調整して、色を合わせていく。台に敷いている革も、前の行程ででた副産物の再利用だ。

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革という素材の特徴と魅力を熟知したプロフェッショナルたちが、命に敬意を払い、無駄にすることなく素敵なプロダクトに生まれ変わらせる。栃木レザーのあらゆる工程で大切にされている考え方は、篠原さんの思いに重なるものがあったようだ。

今年7月に篠原さんが開催した個展『「SHIKAKU」展−シカクい生地と絵から生まれた服たち−』で、彼女はデザイナーとして、生分解可能な新素材をコラボレーションして作り出し、廃棄されてしまう余剰生地を美しいドレスに生まれ変わらせた。素材と真摯に向き合い、大切な素材が無駄になってしまうことに心を痛めるからこそ、素晴らしいアイデアが湧いてくるのかもしれない。

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乾燥させる日数は革の厚みに応じて変えている。蛍光灯であっても日焼けが起こるため、基本的に電気はつけないという。

「食用だった動物たちの皮を使ったり、自然に還る植物のミモザで皮を柔らかくしたり、まさに“エシカル消費”だな、と学びがありました。自然のものと触れ合うのは幸せな時間なんだって、職人さんたちの笑顔を見た時に感じました。私もデザイナーとして、革に向き合ってクリエイションに使ってみたい。

それに、革に触れた時の皮膚感覚がとても優しくて。だから触れてうれしいものを作りたい、と強く感じました。最近は金属アレルギーの人が増えているから、革を使って肌に優しいアクセサリーを作れたらいいですね」

丁寧に育まれた革で作る、肌に優しいアクセサリーという素敵なアイデア。どのような形で実現するのか。篠原ともえさんの革をめぐる旅はまだまだ続く。

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「革は、大人の嗜みというイメージ。大人が愛せるようなデザインのアクセサリーを作りたい」と篠原さん。

篠原ともえ Tomoe Shinohara
1995年歌手デビュー。文化女子大学(現・文化学園)短期大学部服装学科デザイン専攻卒。歌手・ナレーター・女優活動を通じ、映画やドラマ、舞台、CMなどさまざまな分野で活躍。現在はイラストレーター、テキスタイルデザイナーなどさまざまな企業ブランドとコラボレーションするほか、衣装デザイナーとしても松任谷由実コンサートツアー、嵐ドームコンサートやアーティストのステージ・ジャケット衣装を多数手がける。2020年、アートディレクター・池澤樹と共にクリエイティブスタジオ「STUDEO」を設立。
www.tomoeshinohara.net
Instagram : @tomoe_shinohara

* 日本タンナーズ協会公式ウェブサイト「革きゅん」より転載

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篠原ともえが、技を受け継ぐ革職人に出会う。
篠原ともえさん連載「TOMOE SHINOHARA MAKING」

photos : SAYUKI INOUE, video : MITSUO ABE, coiffure et maquillage : YOKO SUEMITSU, costume : TOMOE SHINOHARA, collaboration : TOCHIGI LEATHER

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