エリザベス女王の歴代ドレスに隠された秘密とは?

Fashion 2021.04.22

若き日のグラムールなスタイルから、色鮮やかなルックで知られる95歳の現在まで、エリザベス女王は、おしゃれ心と外交上の気づかい、王室の規則を操りながら、常に一目でわかる自分のスタイルを確立してきた。

【写真】エリザベス女王、ファッションクイーンの歴史。

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若き日のグラムールなスタイルから、色鮮やかなルックの95歳の現在まで。Photos:Abaca

エリザベス女王のルックといえば、思い浮かぶのはプリント、カラーブロックのコート、羽根飾りやベール、リボン飾りのついたおそろいの帽子、そして手袋をはめた手首から離れることのない、あのハンドバッグ。その愛らしい古臭さをたたえたブレないモードは、それでも、数十年の間に、実にさまざまなニュアンスでバリエーションを見せてきた。

偏愛する色はブルー、ピンク、ひよこイエロー。時に冷やかされることもある、その誰にもまねできないスタイルの裏側には、厳しい規則に縛られる王家のドレスコードが存在している。

第一に、エリザベス女王は、遠くからでも見分けのつく存在でなくてはならない。そしてその服装については、透ける素材はご法度、陛下にとって絶対に着心地の良いものでなくてはならない。

女王自身の要望で、靴のヒールは7センチを超えないこと。そして履きやすいようにあらかじめ柔らかくこなされている。また、思わぬ突風などのせいでショッキングな光景を見せることがないよう、お針子たちの手で、裾には重りが縫いこめられている。

また、かぶり物はといえば、頭にきっちりと固定され、どんなに大風が吹いても決して飛んでいかないのが自慢。こちらは決して、女王の顔を隠すようなことがあってはならない。真珠のネックレスは3連がお気に入りで、年月を経るうちに、かのブローチと同じくらい、なくてはならないアイテムになったようだ。

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ウェディングと戴冠式のドレス

とはいえ、若き日の女王のスタイルは、普遍の英国アイコンである白髪のイメージを打ち消してしまう。

1953年6月2日の戴冠式の日にウェストミンスター寺院の外陣を歩む、グラマラスな若き女王のか弱げなシルエット。息を飲むようなドレスはお気に入りクチュリエのノーマン・ハートネル、そして、足元は、ロジェ・ヴィヴィエがデザインした、かの有名な「ガーネットをちりばめたゴールドのキドニーヒールサンダル」。1951年、オタワのダンスパーティで、ニュールック風のウエストをマークしたドレスに身を包み、くるくると踊っていた若き女王の姿を、誰が覚えているだろう?

2016年には、そんな思い出の数々をよみがえらせる回顧展が行われた。タイトルは「Fashioning a Reign:90 years of Style from The Queen’s Wardrobe」。最長在位を誇る英国女王のエレガンスを評価し、オマージュをささげた展覧会だった。150着のスーツ、ドレス、コート、そしてアクセサリーが3つの会場の歴史に合わせて選ばれ、エリザベス女王の多様な好みを垣間見せつつ、在位中の節目となる出来事やファミリーのイベントを振り返った。

そこには1947年の結婚式で着用した、こちらもノーマン・ハートネルのデザインによるウェディングドレスも。ダッチェスサテンにユリとオレンジの花を刺しゅうした見事なドレスは、配給切符で支払われたのだという。

過去から掘り起こされたチャーミングな衣装の数々にも、そして1926年に生まれた模範的なプリンセスのティーンエージャー時代にも、世界大戦が影を落としていた。1941年にサー・セシル・ビートンが撮影した1枚の写真は、グレナディアガーズの連隊長のユニフォームを身につけた15歳のエリザベスを写している。その表情はメランコリックで、彼女がやがて君臨することになる母国への連帯を浮かべている。

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外交のためのファッション

ノーマン・ハートネル、イアン・トーマス、スチュワート・パーヴィン。荘厳な衣装を、時にはタータンチェックで作り上げた彼らは、いずれもエディンバラ・カレッジ・オブ・アートの卒業生。エリザベス女王は、1962年、国家訪問したノルウェーのオーラヴ5世をホーリールード城に迎えた。オーラヴ5世のために催されたロイヤル・ライシーアム劇場のガラで、エリザベス女王はラベンダー色のシルクファイユに真珠、スパンコール、クリスタルやダイアモンドを縫い込んだ、いかにもノーマン・ハートネルらしいドレスを身につけた。

また、20年以上も前になる1997年には、クチュリエのジョン・アンダーソンが、イギリス連邦首脳会議の際に、日本風のイメージの白、ピンク、金、アイボリーの真珠を刺しゅうしたシルクのドレスを製作した。ハーディ・エイミーズによるデザインのルックが、ウエストを強調し、女王のフェミニンさを大胆に表現したのとは違い、こちらは控えめでピュアなシルエットだった。

だが、王家のファッションには、女王が迎えるゲストの感性に気を配った外交的な側面もある。刺しゅうのモチーフひとつをとっても、イベントや伝えるべきメッセージに沿って選ばれる。

在位中、7人のローマ法王を知ることになったエリザベス女王だが、ヴァチカンで法王と会談する際には、綿密にカトリックの伝統を尊重している。そのため、1980年にヨハネパウロ2世と会見した時には、英国国教会の最高権威者である彼女も、黒いシルクビロードのワンピースに、ベールを身につけた。

一方、6月末から7月初めに滞在するホーリールード城のスコットランド文化へのオマージュはそこまで荘厳ではない。有名な女王のガーデンパーティには毎年8000人が集まる。2009年には、スチュワート・パーヴィンのデザインしたシルクのピンクのドレス、白いジャカードのおそろいのコート、ごひいきのフィリップ・サマーヴィルのピンクの帽子というルックがセンセーションをよんだ。

しきたりとプライベートの間で、厳格そうな外面の下に、エリザベス女王はいつもおしゃれ心を覗かせているのだ。

text : LISA KASSAB (madame.lefigaro.fr)

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