ライター栗山愛以による、パリコレ日記。東京から遠隔でコレクション取材を続ける栗山が、マニアックな視点で気になる最新トレンドを綴る。
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PARIS COLLECTION
DAY 4
Chanel
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モデルたちがいやに大げさなウォーキングをするなあ、と思っていたら、アーティスティックディレクター、ヴィルジニー・ヴィアールは1980年代のショーの高揚感を表現したのだそう。今季は「ザ・シャネル」な感じがするルックが揃っている気がするが、ヴィルジニーさんはリアルショー復帰で、演出においても王道のファッションショーをやってみたくなったのかもしれない。そしてフォトグラファーはランウェイ正面のカメラ席におさまっているのではなく、ランウェイを囲んで身を乗り出している。客席からちゃんと服が見えるのか心配になったが、当時は彼らも歓声をあげたりして、きっと盛り上げ役だったんでしょうね。モデルたちもそれに乗せられて笑顔でポーズをとったりしていたのかも。
以前80年代に取材していた方に話を聞いたことがあるが、今みたいにスマホで気軽に撮影できるわけではなく、すぐに写真やビデオがネットにアップされるわけでもないので一瞬でも見逃すまいとかなり真剣にショーを見ていたそう。皆が集中していたからこそ、今よりもっと高揚感があったのだろうなあ。見る姿勢についてもちょっと考えさせられた。
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Miu Miu
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リリースに「デイリーなファッションの普遍的なアイテムの特徴はそのままに、様々なカットを加え、バランス変えることで、新しいプロポーションを生み出しています」とあったが、まさにそれ。見慣れたアイテムがカットされることでこんなに新鮮に見えるとは! 刺繍が施されたクラシックなスカートスーツも、ちらっとお腹を出すだけで印象が変わる。正面にロゴが入っているローライズボトム用のアンダーウエアはなんとしてでも手に入れねばらならない。
とにかく肌見せづくしの今シーズンだが、こちらの見せ方には5月にブログで取り上げた「Y2K」(2000年ごろに流行ったスタイル)の薫りがする。そこで「敬愛するスタイリスト、ロッタ・ヴォルコヴァさんがそのムードに関心を持っている様子」と書いたが、そのロッタさんが先シーズンからミュウミュウのスタイリングを手がけている。ものづくりの段階から関わったのでは⁉ と推測したくなるくらいロッタさんのテイストが出ているような気が。ミウッチャさんの知的で品格のあるスタイルとの化学反応は最高だと思う。
時折挿入されるモロッコ出身のアーティスト、メリエム・ベナーニのビデオもユーモアがあって面白かった。
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Louis Vuitton
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「“時”のル グラン バル(仮面舞踏会)」をイメージしたよう。会場のルーブル美術館には豪華なシャンデリアが飾られ、モデルたちは仮面を思わせるサングラスをしている。18世紀、スカートを左右に広げるために用いたパニエや燕尾服、マントのようにクラシックなシルエットが目立つが、1920年代的ムードが感じられたりデニムや光沢のある素材で作られていたりして、時代を特定することは難しい。そういえば19世紀のクリノリン風ドレスなどが登場した2020-21年秋冬「タイムクラッシュ」でも同様の試みをしていた。アーティスティックディレクター 、ニコラ・ジェスキエールは、さまざまな過去を参照してミックスすることにいま新しさを見出しているのかなあ。
text: Itoi Kuriyama photos:imaxtree