ヘソ出しルックがボディポジティブに新風吹き込む?

Fashion 2022.06.22

2000年代を象徴するヘソ出しルックが再ブーム!? この流行はボディポジティブの脅威か、それとも新たなムーブメントになりうるのか。活発な議論を呼んでいる。

【関連記事】世界の流行りは「ウルトラミニ」!? クロップトップとミニスカートの組み合わせが世界を席巻。

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パリ・ファッションウィークにミュウミュウのルックで現われた、インフルエンサーのレオニー・ハンネ(2022年3月8日、パリ)。Photo: Imaxtree

美の新しい"アンチスタンダード"は、すでに脅かされている……? 380万人が利用するファッションウェブサイト「Who What Wear」が運営するインスタグラムアカウントにはそんな空気が漂っている。

MTVムービー&TVアワードで女優シドニー・スウィーニーがローカットのミニスカートを履いた投稿写真に寄せられたコメントに注目してみよう。

「ローウエストファッションが流行ると、ボディポジティブが衰退する」
「こうしたファッションの流行は、摂食障害を助長してしまうのでは」
「ローウエストの再ブームは勘弁してほしい。私の身体では無理」……

これらは、ミュウミュウのヘソ出しルックを着たシドニーの投稿写真(6月6日)に寄せられたコメントの一部だ。フォロワーたちは、ボディポジティブ運動の利点がすべて、この2000年代のトレンドの復活によって一掃されるかもしれないと懸念する。果たして、この不安は的を射ているのだろうか……?
 

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ミニスカートが大流行

2021年10月5日、パリ・ファッションウィークの最終日となったこの日、ミュウミュウは切りっぱなしのローカットのマイクロスカートとクロップドトップスのルックを発表した。長年、ハイウエストのカットで覆われていた腹部があらわになったファッション。そのシルエットは、大きなインパクトを与えた。

ニコール・キッドマンが雑誌「ヴァニティ・フェア」の表紙を飾ったのを筆頭に、あらゆるところでミニスカートが再登場し、20世紀初頭のポップスターたちが好んだアイテムが一夜にして再ブームとなった。

かつてのブームと今回との違いは、性別や年齢、体型も対照的な人々が着ていることだ。たとえば、豊満体型で知られるモデル、パロマ・エルセッサーは、雑誌「i-D」の表紙でローウエストのファッションを披露した。だがこれをレアケースとみなすボディポジティブ支持派の心は静まることはなく、フォーラムやSNS上では、徐々にそのシルエットに対抗する姿勢が見え始めている。

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2000年代と痩せ願望

「あらゆるサイズに対応し、あらゆるボディへの敬意、愛、スタイルを促進することを使命とする」Power of Plus(パワー・オブ・プラス)の共同設立者であるジャンルカ・ルッソは、Yahooの取材に対して、ローウエストの主な問題点は、細身の人々が牽引するファッション界の排他的なシステムの延長線上にあることだと語っている。そのため、このファッションは不幸を助長することになる、とも。

この点について、記号学者でトゥールーズ大学の教授キャロリーヌ・クルビエールは次のように批判する。「モノ自体が何かを主張していると非難するのは、行き過ぎた論議です」。さらにこう続ける。「ボディポジティブの基本的な考え方は、どんな体型の人でも何でも着こなせるというものですから、とても矛盾しています」

では、なぜいま、ローウエストが問題視されるのだろうか? 2000年代は、ある人にとっては甘美なノスタルジーを呼び起こし、ある人にとっては、痩せ願望、つまりボディシェイミングや苦悩の代名詞となっている。しかし、ボディポジティブの成果によって、現代のモードに対する見方が、より民主的になったのは確かだ。
 

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可能性を閉ざさない

ファッションはキム・カーダシアンのシルエットに代表されるようなスタンダードを生み出す。だが一方で、表現が多様化したことによって、各人が自由に選択できるようになった。

「体型と、それに伴うドレスコードは過去のもの」と、メゾン・クレオのデザイナー、マリー・ドゥヴェはコメントする。その最新のファッションショーには、あらゆるサイズのモデルがセクシーなアイテムを着用して登場した。

プラスサイズモデルのアレクシア・チュエラもショーに登場したひとり。「このスカートが表現するものは2000年代と変わりません。キャンペーンでこのローウエストを履くのは主にスリムな人物ですから。でも、社会の動きは広告よりも進んでいます」。だから、彼女はトレンドに取り残された気持ちになることはなく、これらのアイテムを喜んで取り入れているという。

おしゃれであるという満足感だけでなく、何が「似合う」「似合わない」かはとてもパーソナルな問題だ、とキャロリーヌ・クルビエールは指摘する。「若い痩せた体型を魅力的でないと感じる人もいれば、ローウエストの方がお腹を包み込まないので体型に適していると考える人など、人それぞれ感じ方が違います」

ということは……、ローウエストのスカートにも、名誉回復の余地があるのでは?
 

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それぞれの身体の存在感を示す

超ローウエストは、セクシーなファッションと同様、包括性(インクルージョン)のプロセスにおいては必要だとさえ言えそうだ。

「ローウエストは、お腹を見せることで、必ずしも標準的ではなかった私の体型を逆に“普通”のものにしてくれる」とモデルのアレクシア・チュエラは言う。カルロス・ナザリオのスタイリングで、ミュウミュウのマイクロスカートを着こなしたモデルのパロマ・エルセッサーも同じ意見だ。パロマは、この注目アイテムを着てポーズをとることで、「人々が参考にできるイメージを作りたい」というメッセージをインスタグラムで発信した。ファッションとはコンプレックスに関係なく、見本を示したり、慣れることでもある、と主張するメゾン・クレオのマリー・ドゥヴェにとっても、これは重要な使命だ。

「ボディをたくさん露出する人と隠す人とが共存するのは素晴らしいこと。多様性のひとつのかたちですから」。記号学者のキャロリーヌ・クルビエールはそう付け加える。
 

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すべての人にセクシーを

メゾン・クレオのショーでは、さまざまな体型のモデルたちが、透け感のあるドレス、パレオ、ウエストチェーンなどの2000年代のカルト的なアイテムをまとった。そこにはブリトニー・スピアーズクリスティーナ・アギレラなどの当時を代表するパーソナリティたちを真似ようという空気はない。

「それぞれが自分の服装になじみ、強い女性が身につけることの少ない、セクシーなルックを着ることを楽しんでくれたと思う」と、それぞれのシルエットをできるだけ尊重するためにオーダーメイドで服づくりをするマリー・ドゥヴェは説明する。

カットオフのデザインを得意とするデザイナー、エスター・マナスも、妊娠を堂々とアピールしたリアーナも、ヌードでポーズをとるモデルのアシュリー・グラハムも、タイトなジャンプスーツに身を包む歌手のYseultも……“誰も締め出さない”セクシーのコンセプトをアピールしている。

ローウエストの復活?……怖くもなんともない!

text: Mitia Bernetel (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi

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