キャサリン皇太子妃がリードする、この秋話題の「ハンター」スタイルとは?

Fashion 2025.11.09

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週末は田舎で過ごす。そんなとき、親から子へと代々受け継がれてきたスタイルは長靴にバブアーのジャケット、頭にはキャスケット帽。この「ハンタースタイル」がいま注目されている。

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ポータダウンを訪問したキャサリン皇太子妃とウィリアム皇太子。(2025年10月14日)photography: Jackson Chris/PA Wire/ABACA

20歳のカピュシーヌはビジネススクールの学生だ。生まれはディジョン、育ったのはヴェルサイユだ。両親同様、子ども時代の一部を豊かなブルゴーニュの田舎で過ごした。いまでも時々週末に訪れている。そこでは「ハンター」スタイルが伝統として受け継がれている。

「小さいころから両親はとてもクラシックな服を着せてくれていました。2年前に猟犬を使った狩猟に招かれ、誰もがバブアーのジャケットにゴム長靴、帽子、スカーフのスタイルだったのがとても素敵に見えました。グランゼコール準備学級(プレパ)に入るには良い印象を与えることが大切ということを知っていたので、それ以来、服装はこのスタイルに統一しています」とキャプシーヌは語ってくれた。

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以来、彼女は洋服の趣味が共通する母親のエルメスのスカーフを借り、自分のバブアーを購入した。帽子なしで外出することは滅多にない。

若者世代の常として、彼女が自分の趣味を発信するのはTikToKでだ。1万4千人以上いるフォロワーに向けて「今日の服」を動画で披露している。インスピレーション源は、インフルエンサー、英国のカントリースタイル、そして時々はイギリス王室、とりわけキャサリン皇太子妃を参考にする。「Pinterestでスタイルを研究したり、専門誌を読んだりすると、皇太子妃の名前は必ず出てきます。自分にとってまさにエレガンスのお手本です」とカピュシーヌは言う。

10月中旬、キャサリン皇太子妃が北アイルランド訪問した。「ロング・メドウ・サイダー」という家族経営のアップルサイダー醸造所を訪れた時の服装がまさに「ハンター・シック」なスタイルだった。バブアーのコーデュロイ襟付きジッパージャケットのなかにウールのカーディガン、ボトムは茶色のネオブルジョワ風スカートにベルト、足元にはチョコレートカラーのスエードブーツ。「ヴェルサイユでは、こういうスタイルの人が街じゅうにいます」とカピュシーヌ。

「ハンター」スタイルとは?

「それはまさにタイムレスなスタイルです」と英国文明史が専門の大学講師、レティシア・ラングロワは語る。

「流行のスタイルと認識されることが少ないのは、英国で定番の男性ファッションスタイルのひとつ、"ジェントルマン・ファーマー"に由来しているからです」ジェントルマン・ファーマー、それは田舎に農場を持つイギリス中産階級の男性だ。「これはどこでも通用するユニバーサルなファッションです。ジェントルマン・ファーマーは臆することなく、都会でも田舎でも常変わらない定番アイテムを纏うのです」と、ウェブサイト「Cravate Avenue」では説明している。基本となるのはツイードのジャケット、刺繍が入ったベスト、防水パンツやコーデュロイパンツ、バブアー、ゴム長靴、そしてキャスケット帽だ。

イギリスの田舎に暮らし、まさにジェントルマン・ファーマーのスタイルを守り続けるイメージコンサルタントのアッシュ・ジョーンズによれば、重視すべきは「流行よりも実用性」だそうだ。メディア「ジェントルマンズ・ガゼット」の取材に対し、アッシュ・ジョーンズはこう語っている。「実際のところ頑丈な服が必要です。例えば、10月から2月にかけてのイギリスで、私はウェットスーツ地で裏張りしたゴム長靴を履いて暮らしています。じめじめした寒い天気ですから」。また、靴の手入れを欠かさないこと、腕時計は良いものを持つこと、服素材はコットンなど暖かい自然素材を選ぶことを勧めている。

この美学を実践する人物がもうひとりいる。英国ではよく知られているナイジェル・ファラージ、イギリスの国粋主義者だ。レティシア・ラングロワによると「彼は右派ポピュリスト」だそうだ。「彼のワードローブはイギリス男性の典型的なアイテムばかりです。服を通して外来文化や"ウォーキズム"の影響を受けない"純粋なイギリスのアイデンティティ"、を表現しているのです。」

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ロンドンの街頭でのナイジェル・ファラージ。(2024年11月)photography: Mark Kerrison / In Pictures via Getty Images

社会階級を示す

レティシア・ラングロワはさらにフランスに言及し、「フランスの上流ブルジョワ階級はだいぶ前からこのスタイルを取り入れています。馬術界もそうですね」と指摘した。「ファッションでは文化交流が多くおこなわれてきまいた。この典型的な英国スタイルを好きなフランス人は多いですね」とも。その影響は文化遺産(城、マナーハウス、美術品など)にみられるだけでなく、フランスの田舎での裕福なライフスタイルにとりわけ現れているそうだ。

受け継がれる伝統

「ハンター・シック」を愛用する人々にとって、伝統は家族代々大事に守っていくものだ。目まぐるしい流行と大量消費、ファストファッションが隆盛を極める時代にあって、ハンタースタイルはあたかも時を止めたい意思の表明にも見える。ウールのスーツ、防水コート、チェック柄はいずれも高貴なアイテムとして世代を超えて受け継がれていく。英国文明史の講師であるレティシア・ラングロワは次のように結論づける。「人々は長年、英国貴族のイメージをふくらませてきました。人気ドラマシリーズの「ダウントン・アビー」、「ザ・クラウン」、「ブリジャートン家」によってジェントルマン・ファーマーのエレガントな暮らしぶりに再び注目が集まっています」

若いデジタル世代を顧客層にしたいラグジュアリーブランドも、この流れを取り入れ始めている。たとえばバーバリーでは、シルエットや素材、色使いで典型的な英国の伝統を守りつつ、モダンに解釈したハンター・スタイルを提案している。イザベル マランの2026年春夏コレクションを見る限り、同ブランドでは実用性を重視しているようだ。スカーフを留められるストラップ付きのマルチポケットブルゾン、多機能カーゴパンツ、オールラウンドブーツなどが登場した。エリザベス女王の狩猟服のような古臭いイメージを払拭しようと、どのブランドも工夫を試みている。

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バーバリー2024年秋冬コレクション。photography: Launchmetrics

アメリカでもこの「カントリーサイド」スタイルが注目されている。2019年にデザイナーのジョージア・ダントが立ち上げた英国ブランド「マーファ スタンス」が米国で大人気なのがその証だ。上質で実用的、かつタイムレスなアウターウェアを提案し、休日の「ハンター・シック」スタイルにぴったりなワードローブを展開している。2,000ユーロ近くするパラシュートパーカーがアスペンやハンプトンズで飛ぶように売れているそうだ。レティシア・ラングロワは地域的な特性を指摘した。「ハンプトンズは、WASP(白人・アングロサクソン・プロテスタント)の家系が多く暮らす地域として知られています。東海岸でこのスタイルが広まっているのは興味深い現象です。まるで英国とのつながりがヘリテージとしていまも続いているかのようです」。いずれにせよクラシックスタイルはやはり老舗ブランドが強い。少なくともフランスの田舎で「ハンター・シック」な人たちに愛されるゴム長靴は「ハンター」ブランドであっていまのところ他のブランドの追従を許さない。

From madameFIGARO.fr

text: Augustin Bougro (madame.lefigaro.fr)

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