ローマからソウルへ、フェンディとバンチャンそれぞれの新章。
Fashion 2025.12.19
ソウルで開催されたStray Kidsのバンチャンとフェンディの体験型スペシャルナイト。音楽とファッションが交差した一夜限りのイベントの舞台裏を、本誌独占インタビューとともにお届け。

パラッツォ フェンディ ソウル内に設置された自身のパネルの前で。
2025年11月4日、Stray Kidsのリーダーでブランドアンバサダーとしても活躍するバンチャンによるフェンディとのコラボレーション楽曲「Roman Empire」のリリースを祝し、ソウルのパラッツォ フェンディ ソウルでスペシャルイベントが開催された。今夏、ローマ本社のイタリア文明宮で撮影されたミュージックビデオから続いてきた創造の旅は、この記念すべき一夜で最終章を迎えた。
会場に到着するとまず目に飛び込んできたのは、ソウルのスピード感と壮麗なローマが溶け合うポスターウォール。ゲストは足を踏み入れた瞬間から「Roman Empire」の物語に誘われ、視覚と感性を使いながら楽曲の世界観を体験していく。ブティック内はフロアごとに異なる仕掛けが施され、2階には今回のコラボレーション楽曲をじっくり堪能できるプライベートミュージックブースやフォトスポットが登場。音楽とファッションが軽やかに融合し、バンチャンのアーティスト性を肌で感じられる空間が広がっていた。3階に進むと、ミュージックビデオでバンチャンが実際に着用した2026年春夏プレコレクションのルックが来場者を迎えた。
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ソウルのコエックス(COEX)K-POPスクエアにあるメガスクリーンでのスペシャルプレミア。
インフルエンサーやゲストたちは、実際に手に取って素材感やディテールを確かめながら、バンチャンが纏ったアイコニックなルックの試着を楽しんだ。鏡の前でシルエットを眺めるたび、まるでMVのワンシーンに入り込んだような高揚感が広がり、ショッピングそのものがひとつの体験型パフォーマンスへと昇華。音楽とファッションの境界を超えてバンチャンの世界をより身近に感じられるこのフロアは、イベントの中でも特に熱気に満ちた場所となっていた。4階のVICフロアで、イベントは遂にクライマックスを迎える。イタリア文明宮のアーチをイメージした光と重厚な影が呼応するLEDディスプレイの前でバンチャンのパフォーマンスが始まると、空気が一瞬にして震え、観客は息を呑む。ライブで披露された「Roman Empire」がエモーショナルに響き渡り、ローマの遺産とソウルのエネルギーが音楽を通してダイナミックに結びつく、まさに没入型の体験となった。照明がリズムに合わせて緩やかに変化し、ディスプレイに映し出されるアーチが音とともに脈打つ。バンチャンの伸びやかな歌声が、会場全体を熱気と感動で満たした。
バンチャン自らが作詞・作曲・プロデュースを手がけた「Roman Empire」は、フェンディのアイコン「ピーカブー」や象徴的な"F"を音楽で再解釈した意欲作だ。音楽とファッションという異なる表現が交差することで生まれた「Roman Empire」は、メゾンのクラフトマンシップと若い才能が共鳴する新たな物語となった。
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Q:フェンディとの関わりの中で、アーティストとしてどのような刺激や影響を受けてきましたか?
難しい質問ですね。実は、初めて本格的なファッションショーを観たのがフェンディだったんです。そこから何度かショーにご招待いただき、多くの刺激を受けました。何より心に残っているのは、フェンディが"ファミリー"という価値を非常に大切にしていること。私たちもグループとして家族的な結びつきを重んじているので、その精神性が強く響き合いました。それが、フェンディというブランドに自然と惹かれた理由のひとつだと思います。
Q:今回の音楽プロジェクトに取り組むうえで、個人としての音楽づくりにどんな葛藤や模索がありましたか?
フェンディとの音楽プロジェクトの話をいただいたのが2025年のはじめ頃。しかし、そこからずっと悩み続けていました。"何を表現すべきか""どの方向へ進むべきか"という大きな問いが立ちはだかったんです。グループの音楽なら、メンバーを思い浮かべるだけで自然にアイデアが湧きます。けれど、僕個人としての音楽となると、自分がどんな音を愛し、どんな音楽を創りたいのか──まだ手探りの状態で。いまでも宿題を続けているかのような気持ちです。僕自身が少し照れ屋なところも影響しているのかもしれません。
Q:作詞・作曲の過程で意識した点、新しく挑戦した部分を教えてください。
もともと楽曲の解説をするのが得意ではなくて......聞いてくれる方々が自由に解釈してくださればという思いがあるんです。それでも少しだけ申し上げますと、フェンディはローマで生まれたブランドですよね。ローマといえば、誰しもがローマ帝国の壮麗さや文化を思い浮かべるのではないでしょうか。そうした背景を念頭に置きつつ、「ピーカブー」や「FF」ロゴといった、ブランドのアイコンを言葉に織り交ぜながら制作しました。受け取り方によっては、愛を歌っているような印象も受けるのではないでしょうか。実はこの曲、日本のホテルで録音したんですよ! とても忙しい時期だったんですが、急に閃きが訪れて。予定が詰まっている日だったのに、夜になってから一気に録音しました。

MVを見ながらコラボレーション楽曲をじっくり楽しめる、没入型のプライベートミュージックブースにて。
Q:歌詞の中で特にお気に入りのフレーズはありますか?
25年はフェンディの100周年ですよね。そのことも意識した、"Hundred years ain't enough when I'm here with you"というフレーズがとても気に入っています。100年という時は大きな節目ですが、それでも足りない、もっとともに歩んでいきたい、という思いを込めました。そして "You're the F to my F" の部分では、「FF」ロゴの象徴性も楽しみながら言葉を重ねています。
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Q:今回のコラボレーション楽曲とMVには、あなたとフェンディに共通する美学が反映されているように感じました。
MVはまた別の解釈を与えてくれるものですが、私自身の小さな物語も忍ばせています。韓国に渡り、長く練習生として過ごした時間、そして自分の音楽を創り上げるという過程──その一端が映し出されていると思います。
Q:ローマでの撮影はいかがでしたか? 現地でインスピレーションを感じた部分があれば教えてください。
7月の真夏で、このレオパード柄のコートを着て撮影しましたが、意外と大丈夫でした(笑)。建物の壮麗さには圧倒されました。まるで巨人のようで......こんな場所で撮影できるなんて、とても光栄でした。アーチ型の窓も素晴らしかったのですが、特に印象的だったのはダンサーの皆さんと呼吸を合わせながら、ひとつの絵を描くように撮影が進んでいったこと。衣装に合わせて場面が変化する構成も、おもしろい体験でした。

MVでバンチャンが実際に着用した2026年春夏 プレコレクションのルックが展示された3階フロア。毛足の長いウールにレオパードモチーフをプリントしたピークトラペルのダブルブレストコートや、バンチャン自身も気に入っているというラムレザーのブラウンカラーのジャケットなど、MVの中でも印象的だったアイテムが目を引いた。
Q:あなたにとって、ファッションとはどのような存在ですか?
音楽は音として自分を表現できますが、ファッションは視覚で"理想美"を提示することができます。最近は多様なスタイルを試しながら、"ここにこのエッセンスを加えようか"と試行錯誤する時間が増えました。私にとってファッションは挑戦であり、自己探求のもうひとつの方法です。
Q:アーティストとして今後挑戦してみたいことは?
挑戦したいことはたくさんありますが、まだ探している最中です。ただ今回のプロジェクトを通して、自分の"色"に少し近づけたように感じています。そうした機会をくださったフェンディには感謝しかありません。この経験は、私の音楽性にとって大きなヒントとなりました。異なる分野でも互いに影響し合う、良い関係性を築けているとあらためて感じました。
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photography: ©Fendi interview: Eri Masuda






