英国女王様のワードローブ、10のルール。

Fashion 2020.08.02

英国女王は、おしゃれ大好き。衣装に凝らされた工夫から、色の選び方、おなじみのハンドバッグ、由緒正しいブローチ、パンツをはかない、などなど…… 女王様のファッションには王室儀礼に基づいた慣例がたくさんある。そのなかから10の約束事をご紹介。

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エリザベス女王のワードローブにはたくさんの秘密が隠されている。(ロンドン、2000年6月17日)photo : Getty Images

70年近い在位期間に、エリザベス女王が独自のファッションスタイルを築いてきたことは確かだ。公の場に登場するたびに注目をあびてきた、その装いの色づかいをはじめ、女王を象徴するハンドバッグや帽子などのアクセサリーは、王室ウォッチャーたちの心に長く明記されるにちがいない。2019年10月に出版された、王室ファッションの裏側を語る『The Other Side of the Coin : the Queen, The Dresser and the Wardrobe』の中で、専属ファッションアドバイザーのアンジェラ・ケリーが、女王のファッションの秘密の一端を明かしている。

女王が在位期間中に着用した装いについてまとめたこの本には、いままで明かされてこなかった逸話も収録されている。過去にも、『デイリー・メール』紙などイギリスの多くの新聞が、エリザベス女王のファッションの秘密を探り出してきた。さまざまな色づかいのスーツや、羽根つき帽子、手袋をはめた手首にいつもぶら下がるハンドバッグなどなど、エリザベス女王のワードローブにはちょっとしたこだわりがたくさんある。

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英国女王のスカートは突風でも舞い上がらない

帽子が風で飛ぶ? シルクのスカートが突風で舞い上がる? 英国女王の身にはそんなことが起こるはずもない。こうしたアクシデントを防ぐため、コートやスカート、帽子の裏地には、風のある場所でも決して乱れないように小さな重りが縫い付けられている。

毛皮への愛は冷め……

女王は今後一切動物の毛皮を使った衣服を新調しないー2019年10月、専属ファッションアドバイザーが女王の決断を伝えた。長い間、動物愛護団体からの非難を平然と受け流してきた女王だが、ここにきてあえてキツネの毛皮のトークハットをかぶらなくてもいいと思い直したようだ。かくして93歳で“ファーフリー”に転身したエリザベス女王。以後、女王の衣装に使用できるのはフェイクファーのみとなった。ただし、すでに所有している毛皮つきの服を着用することはある。

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50年以上使い続けるハンドバッグ

1968年より英国王室御用達の革製品メーカーに指定されているのが、ロンドンの「ロウナー」だ。女王のために考案されたハンドバッグは、女王だけが持つことができる特別なもの。持ち手を通常よりやや長く、ストラップはつけず、留め金も仕切りもなし、そして内張りは絹で、という女王の細かい注文に応えて製作された。女王はこのモデルのエナメルバッグを200個所有しているという。中に入っているものは、口紅、手鏡、イニシャルが刺繍されたハンカチ、メガネ、ミントキャンディ、チョコレート、そしてクロスワードパズル帳!

“オー、マイ・ロード!”、パンツははかない

エリザベス女王はパンツはあまりお好みではない。これまで女王がパンツルックでカメラの前に現れたのはせいぜい10回程度。王室儀礼では、英国王室の女性は王室を代表する公務の際にはドレスかスカートを着用することと定められている。

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傘は透明

エリザベス女王は、縁取りが入ったタイプの傘をたくさん所有している。縁取りの色をお召し物に合わせるのが女王のこだわり。ただし、傘はすべて透明。雨の日も国民に女王の顔が見えるようにという配慮だ。

着回しもオーケー

女王はお召し物に第二の命を授けることもある。アンジェラ・ケリーは著書の中で、服を着回す際の間隔など一定の条件をクリアすれば、衣装のリサイクルも許可されると明かしている。一着の服の耐用年数は約25年。また、同じ服を短期間に繰り返し着用することを避けるために、着用した服はすべて記録されている。

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お買い得品もオーケー

自らショッピングすることはないだろうが、女王も割引の品には興味があるよう。アンジェラ・ケリーによると、お召し物を誂えるために素材を選ぶ際、女王はまずお買い得品からチェックするという。

女王のハンドバッグと秘密のサイン

エリザベス女王のハンドバッグには、王室スタッフにメッセージを送る役割もある。スタッフはハンドバッグの位置からメッセージを読み取る。女王がハンドバッグを左腕(通常左腕に掛けている)から右腕に掛け替えたら、そろそろ対談を終えたいというサイン。晩餐の席でテーブルにハンドバッグを置いたら、5分以内に会場を出たいという合図。床に置いた場合は、すぐにその場を離れたいという意味だ。

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象徴的なブローチ

公務に臨む女王のスーツの胸元にはほぼブローチが輝いている。ブローチは女王おなじみのファッションアイテムのひとつで、100点ものブローチを所有しているという。なかでも最も貴重なものは、史上最大のダイヤモンド原石と言われる「カリナン」から切り出されたダイヤがあしらわれた一品。ブローチはいずれも、女王の歴史を物語っている。フィリップ王配との結婚や子どもたちの誕生祝い、外国に公式訪問した際など、ほとんどが特別な機会にプレゼントされたものや、代々の王妃に受け継がれてきたものだ。

女王のブローチにはしばしばメッセージが込められている。2019年12月、恒例のクリスマススピーチの際、女王は欧州連合の旗の色と同じ、サファイアとダイヤモンドのブローチをつけて登場。イギリスの欧州連合離脱が間近に迫っていた時期だけに、深い意味のある選択として話題になった。今年の4月5日にテレビでメッセージを伝えた時は、ターコイズの周囲にダイヤモンドを配したブローチが胸元に輝いていた。祖母メアリー王妃から譲り受けたグリーントーンのジュエリーは希望の象徴で、コロナ禍と闘う国民への励ましとなった。

スリーサイズは秘密

エリザベス女王のスリーサイズは極秘中の極秘事項。女王の衣装を仕立てる際は、女王とまったく同じサイズのスタンを使用する。

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色に関するストラテジー

季節ごとにカラフルな装いを見せてくれる女王。しかし外出先によっては、タブーの色もある。たとえば、競馬場やガーデンパーティなど、緑に囲まれた場所に招かれた時は、グリーンを避ける。一方、2020年4月、コロナ禍の最中に国民に向けてテレビを通して異例の演説を行った際には、希望、治癒、楽観主義を意味するグリーンのドレスを着用した。

外交上の理由で色が選ばれることもある。2012年、ロンドン・オリンピックに出席する際に女王が選んだのはピンク。どの参加国の国旗にも使われていない色で、特定の国を贔屓しないようにという配慮だ。女王のお気に入りの色は青で、グレーやベージュ系の色合いは地味すぎるためか、あまりお好みではない。黒を纏うのは喪に服す時だけ。

新品の靴は絶対に履かない

新品の靴を下ろす時は、足に豆ができないように、足のサイズが同じ衣装係のアンジェラ・ケリーに履き慣らしておいてもらう。女王の靴はロンドン西部の高級住宅街ケンジントン地区にある靴メーカー「アネーロ&ダビデ」の職人によって手作りされる。『デイリー・メール』紙によると、女王の靴は最上級の子牛革で作られるという。

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エリザベス女王、英国女王とファッション

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1 最長在位記録を更新し続けるエリザベス女王。そのエレガンスを讃える展覧会『Fashioning a Regin : 90 Years of Style from The Queen’s Wardrobe』が、ホリールード、バッキンガム、ウィンザーの3つの宮殿で順次開催されている。女王の洗練されたセンスに触れるまたとない機会だ。(ロンドン、1957年7月1日)photo : Abaca

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2 女王のファッションを振り返るこの特別展では、スーツ、ドレス、アフタヌーンドレスやイブニングドレスに合わせるコート、アクセサリーなど、展示場所ごとに厳選された150点のアイテムが出展される。在位期間中のハイライトとなる出来事や家族の歴史を辿りながら、女王のファッションの多様さを浮かび上がらせる。(東京、1975年5月12日)photo : Abaca

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3 女王のファッションを一望するこの特別展は、エディンバラにあるスコットランド王族ゆかりのホリールード宮殿を皮切りにスタート。女王の愛する宮殿で、ノーマン・ハートネル、イアン・トーマス、スチュワート・パービンらがデザインした壮麗なドレスを堪能できる。(エディンバラ、1977年5月24日)photo : Abaca

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4 ときに揶揄されることもある、誰にも真似のできないエリザベス女王のスタイルは、厳しい規定がある王室の”ドレスコード”を反映したもの。(ロンドン、1982年7月1日)photo : Abaca

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5 アニスグリーン、ピンク、パステルイエローなど、華やかな色を偏愛する女王。カラフルな色合いの装いもトレードマークのひとつ。(ウイストルアム、2014年6月6日)photo : Abaca

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6 というのも、女王たるもの遠目でもすぐに女王とわかる装いでなければいけないのだ。ちなみに透ける素材は厳禁。女王のお召し物は真冬でも快適な着心地のものであることが肝心。(ノーフォーク、2009年2月3日)photo : Abaca

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7 どんな強風でも絶対に飛ばないと自ら豪語する、しっかりと固定された女王の帽子。顔が隠れるデザインのものはダメ。(フランクフルト、2015年6月25日)photo : Abaca

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8 エリザベス女王を特徴づける衣装のなかですぐに思い浮かぶのは、プリント柄、カラーブロックコート、羽根飾りやべールやロゼットのあしらわれた華麗なファシネーター、そして、手袋をはめた女王の手首に必ずぶら下がっている、お決まりのハンドバッグ。(アスコット競馬場、1954年6月6日)photo : Abaca

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9 ハンドバッグ以外で女王の装いに欠かせないアクセサリーはブローチ。(ロンドン、2012年11月27日)photo : Abaca

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10 外交的な意味合いも持つ王室ファッション。衣装は訪問客や招待者に配慮して選ばれる。(オークランド、ニュージーランド、1977年2月22日)photo : Abaca

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11 即位50周年を記念するニュージーランド訪問では、1953年の戴冠の際に贈られたコロワイ(キーウィの羽でできたコート)を着用した。(マラエ、2002年2月25日)photo : Abaca

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12 ローマ教皇との会見のためにヴァチカンを訪れる時は、カトリックの伝統を尊重するよう努めている。イギリス国教会首長として1980年にヨハネ・パウロ2世と会談した折も、シルクベルベットのブラックドレスを纏い、マンティラで頭を覆っていた。photo : Abaca

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13 靴のヒールは女王の注文で7cm以下と決められている。女王が快適な状態で着用できるように、スタッフが事前に履き慣らして革を柔らかくしておく。(デュッセルドルフ、2004年11月4日)photo : Abaca

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14 真珠のネックレスは3連のものが特にお好み。ブローチと並んで長年愛用するジュエリーのひとつだ。(バークシャー、2012年6月22日)photo : Abaca

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15 誰にも真似できないスタイルを貫いてきたエリザベス女王。60年以上に渡る在位期間に、4人もの専属デザイナーが女王の衣装を手がけた。(ロンドン、1957年11月4日)photo : Abaca

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16 流行を仕掛けることはないものの、時代の変化を巧みに取り入れてきた女王。ロンドンから遠く離れた場所で撮影された1970年代のこの写真では、なんとジーンズに挑戦!photo : Abaca

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17 若い頃の女王を覚えている人はどれだけいるだろう? 1951年にオタワで舞踏会に出席した時、ニュールック風のウエストを絞ったドレスに身を包んだ女王。photo : Abaca

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18 1953年6月2日に行われた戴冠式で、エリザベス女王はノーマン・ハートネルによるデザインのドレスを着用した。photo : Abaca

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19 こちらも、女王贔屓のデザイナー、ノーマン・ハートネル卿による、戴冠式の日のイブニングドレス。(ロンドン、1953年6月2日)photo : Abaca

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20 現在、女王がロンドンのバッキンガム宮殿に賓客を迎える時も、イギリス国内や外国の都市を公式訪問する時も、衣装選びは、専属スタイリストのアンジェラ・ケリーに一任されている。(ヴィミー、2007年4月9日)photo : Abaca

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21 女王はこれまであらゆるドレスコードを受け入れてきた。(ウィンザー、2009年6月15日)photo : Abaca

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22 そして毎回、すばらしい着こなし力を発揮してきた。アブダビでは、スワロフスキーのクリスタルをちりばめたアバヤ(衣装係のアンジェラ・ケリーによるデザイン)を纏い、裸足でシェイク・ザイード・モスクを訪れた。(アラブ首長国連邦、2010年11月24日)photo : Abaca

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23 どんな状況でもストイックに公務に専念する女王。たとえ日陰でも40度を超える暑さのなかでも、決して汗はかかない。(アンティグア、リベリア、1977年)photo : Abaca

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24 プライベートの外出ではいつもシンプルな装い。(ウィンザー、2011年5月11日)photo : Abaca

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25 イギリス議会開会式では一転、ティアラに毛皮。(ロンドン、2008年12月3日)photo : Abaca

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26 王室儀礼とプライベートに焦点を当てた3つの展覧会を通して、女王という厳格な外見の下に潜む、おしゃれを愛する女性の素顔が垣間見える。(トロント、2002年10月10日)photo : Abaca

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texte : Alexandra Belooussova, Adrien Communier (madame.lefigaro.fr)

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