おうちご飯が楽しくなる、テイクアウト日記。#03 私鉄沿線で発見、宝物のような絶品テイクアウト。
Gourmet 2020.05.20
外出自粛要請に伴い、多くの飲食店がテイクアウトを実施中。大好きな行きつけから、予約の取れない人気店、近所の隠れた名店まで。再びその空間で店主やスタッフと交流し、気のおけない人たちと料理を囲む日まで、テイクアウトして自宅で本格料理を楽しんで。フードライターが自らテイクアウトしたおすすめをご紹介。第3回は、小寺慶子さんが魅了された、心と身体においしさが染みわたるメニューをこちらの4軒から!
選・文/小寺慶子(フードライター)
1. 初台スパイス食堂 和魂印才たんどーる(初台)
研ぎ澄まされたスパイス使いが光るカレーに悶絶!
「まかないカレー2種盛り弁当」(¥1,100~)に梅干し(¥100)をトッピング。ランチのテイクアウトは水・木・金曜に実施。海苔弁は土曜限定。自宅で作れるスパイスセット(¥500)の販売もスタート。
牧歌的な空気が流れる初台の商店街の一角に、カレー好きを虜にしている「初台スパイス食堂 和魂印才たんどーる」はある。最近は独創性を貫く大阪スパイスカレーブームの流れもあり、和食材を使うカレー店も増えてきたが、ここは自由度の高い食材やスパイス使いの先駆けともいえる店だ。さまざまな食ジャンルに精通するライターM氏のインスタグラムで「恐ろしい完成度の海苔弁を出している」という情報を得て、「たんどーるの本気の海苔弁、気になる!」と向かうも海苔弁は土曜日限定とのこと。気を取り直して「まかないカレー2種盛り弁当」(¥1,100~)+梅干しトッピング(¥100)をオーダー。
出来上がりまでの時間に店内を見回してみると、憧れの「アンジュナ」のレトルト「キーマ カレー」を発見(しかも現品限り)! 自家製の瓶詰めチキンピクルスとお弁当とともに購入し、テンション高めで帰宅。その日は某誌の校了日で朝から編集部で隔離作業をした後だったため、深いスパイスの味わいが身体中に沁みわたり、一気に元気回復。ドライな鶏ひき肉とナンコツのキーマと梅干しの酸味がこれまた素晴らしい相性。春キャベツと焼き油揚げのトマトカレーを少しずつ混ぜながら食べると、多面的なおいしさがじわじわ広がり、箸、もといスプーンが止まらない! 聞きしに勝る「たんどーる」のカレーを堪能しつつ、次回は必ず海苔弁を買いに行こうと心に誓った。
東京都新宿区西新宿4-41-10 スカイコート西新宿1F
tel : 03-6276-2225
営)11時45分~14時30分L.O.(水、木、金)※テイクアウト引き渡しは12時〜。現在、土曜はテイクアウトのみの営業(5/20現在。6月以降は変わる場合あり)
休)月、火、日
予約方法:店頭で直接購入か電話予約も可能。
※メニューや営業日時についての詳細はブログ、フェイスブックなどSNSで告知。
http://tandoor1997.com
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2. 炭火焼肉 ふちおか(経堂)
小田急線沿線で見つけた、底抜けに美味な焼肉弁当。
手前から、「サーロイン弁当」¥5,400と赤身弁当¥3,240
某日、テイクアウト企画の撮影で伺ったお店で「最近食べたテイクアウトのお弁当のなかでも鳥肌が立つほどおいしかった」という店主の言葉にいてもたってもいられなくなり、その場で予約。経堂の「炭火焼肉 ふちおか」の店主は、焼肉好きの間で圧倒的な人気を誇る市ヶ谷「炭火焼肉 なかはら」で修業を積んだことでも知られるが、いまは小田急線沿線イチの実力派の焼肉店といわれている。
めったに乗らない自転車で店前に乗りつけ、赤身弁当(¥3,240)と「サーロイン弁当」(¥5,400)をピックアップ。自宅で蓋を開けてみると、お米の上に敷き詰められた肉の美しさにうっとり。白米に肉、というシンプルなお弁当はごまかしがきかない分、ストレートなおいしさがガツンと心に響く。タレの甘さもすっきり上品、横に添えられたナムルもいい仕事をしている。少し食べて夕食に取っておこうと思ったけれど、結局2箱ともその場で完食。焼肉弁当の極みをここに見た。
東京都世田谷区経堂1-5-8 ロイヤルハイツ経堂1F
tel : 050-3374-6283
営)17時~20時(月、火、木、金) 16時~20時(土、日)※テイクアウト引き渡しは17時〜20時(5/20現在)
休)水
予約方法:受け取り時間の1時間前までに電話にて要予約(予約は14時〜20時)
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3. ネムクリュ(祖師ケ谷大蔵)
彩り豊かなベトナム料理で、野菜不足もおいしく解消!
「ネムクリュ弁当」¥780と「バインミーサンド」¥600 *メニューは変更になる場合があります。
良店が続々とオープンしている世田谷・祖師谷大蔵。少し前にフィガロ編集部のAさんが「祖師谷に新しくできたベトナム料理が気になる」と言っていたのを思い出し、調べてみると、なんと期間限定でテイクアウトを始めたとのこと。翌日、オープン時間に合わせてお店を訪ねると、すでに色とりどりのベトナム料理がスタンバイ。野菜とご飯を混ぜ合わせて食べる「コムアンフー」(¥820)におなじみの「バインミーサンド」(¥600)、「生春巻き」(1本¥200)、「ネムクリュ弁当」(¥780)がカウンターにずらり。どれにしようか目移りするも、悩んだ時は全種買い!
さっそく自宅に持ち帰り、まずは生春巻きから食べてみる。パツンと張ったライスペーパーに透けるグリーンとエビの美しいこと。ピーナッツソースを付けて頬張ると健やかなおいしさが口いっぱいに広がる。そして、お弁当も食べる前から心浮き立つ鮮やかさ。切り干しダイコン入りの手羽先に揚げ春巻き、サバのトマト煮込み、なますなど、素朴なベトナムのお惣菜はどれも手が込んでいて、ひと口ごとに幸福感に包まれる。おやつに食べたバインミーもコクのあるレバーペーストと焼豚のバランス感が最高。最近は予約完売してしまうというのも納得。お店が再開したら333を飲みながらベトナム料理を食べるのが楽しみでならない。
東京都世田谷区砧6-36-6 FLAPビル 2F
tel : 03-6874-4034
営)11時〜15時(火〜日)※テイクアウトのみ(5/20現在)
休)月
予約不要、売り切れ次第終了
https://nemcru.com
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4. 鮨いち伍(千歳烏山)
宝石のような煌めきに心奪われる、極上ばらちらし。
「ばらちらし」¥4,500~
京王線の千歳烏山駅から徒歩7~8分と決して地の利がいいとはいえない場所で10年。地元以外からも多くの鮨好きが訪れる理由は、店主のきめ細かな仕事にある。オープン当初から通っている鮨店だが、店主の腕前と鮨愛は年々高まっているように感じる。その緻密を極めた技と心意気を存分に感じられるのが、テイクアウトで不定期に登場する「ばらちらし」(¥4,500~)。鮨店のおみやげといえば、ばらちらしは定番中の定番。箱を開ける瞬間のわくわく感もさることながら、さまざまな魚介がたっぷりと散りばめられた宝石箱のような絢爛豪華さには“ハレ”のパワーが宿っている。
握り同様、職人のセンスが求められるばらちらしだが、「鮨 いち伍」のものは見事のひと言。刻んだショウガやカンピョウをさっくりと混ぜ込んだ酢飯は、これだけでもすでにごちそう。漬けマグロにイカ、コハダ、ウニなど、ぴかぴかと輝くネタはすべてに丁寧な仕事が行き届いており、なんとも贅沢。日本酒と一緒に少しずついただけば「至福とはまさにこういうこと」と心の底から思う。「鮨 いち伍」は握りも一品料理も素晴らしいが、その根底には食べ手思いの店主の心と繊細を超えた仕事にあるのだと再認識した。
東京都世田谷区粕谷4-18-7
tel : 03-3307-5591
営)18時〜20時(5/20現在)
休)月
予約方法:電話にて要予約
※この記事に記載している価格は、軽減税率8%の税込価格です。
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photos et texte : KEIKO KODERA