今日のプチデジュネ、デジュネ、ディネ。#19 パリで和ごころを愉しむ、おうちご飯。

Gourmet 2020.06.14

外出自粛が続き、誰もがおうちご飯を作る機会が増えているはず。
料理上手なあの人は、どんなおうちご飯を作っている? フィガロでおなじみの料理家やフードコーディネーター、フードライターたちが、とある一日のプチデジュネ(朝食)、デジュネ(昼食)、ディネ(夕食)を紹介します。今回は「パリのマルシェとレシピ。」を連載中のHARADA SACHIYOさんが、残り物を利用した「アンチ・ガスピご飯」、「アレンジご飯」に続き、3度目の登場です。


写真・文/HARADA SACHIYO(料理クリエイター)

ステイホームが始まってから無性に食べたくなったものが和食。不安な中になにかすがるもの、ほっとする味を身体が欲しがっていたのかもしれませんね。特に子どもの頃、北海道の母が作ってくれた懐かしい味が次々と浮かんできました。やっぱり、自分の血の中にあるものでしょうか。

それで思い出したのは、フランスのレストランで働く日本人シェフの話していたこと。
「職場の厨房で毎日交代で賄いを作るんだけど、フランス人の同僚が作る“おばあちゃんから伝わる煮込み料理”というのを食べた時に、『ああ、これは自分にはできないなあ』と思った」

なるほどね、韓国人の友人が作る“オモニの味”は、いくらレシピを教えてもらって、分量どおり作っても絶対に真似のできないもの。そのおいしさってなんだろう? テクニックよりも混ぜる手の味だったり、いい意味で大雑把、いい具合の適当さ、身に付いた勘どころかな。

たぶん、私たちには生まれた時から食べてきた舌の記憶、血と肉をつかさどってきたものが、しっかりと心と身体に宿っているのでしょうね。

petit déjeuner

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育ち盛りの頃、母がよく作ってくれたおやつは、大きなアルミ製の無水鍋(昭和のどこの家庭にもあったのでは?)で作ったりんごケーキ、ふかし芋や蒸しパン。
それを思い出して、冷蔵庫にあった“トウモロコシ粉とチーズを入れた蒸しパン”を作ってみました。

香りや形がよく、添えるだけで華やぐ金柑が大好きなので、旬の時に買ったものを丸ごと、半分、薄切りと、使いやすいようにカットしてから冷凍してあります。蒸しパンにのせたものは薄切りをさっと砂糖漬けにしたもので、パンにかけるとシロップが染みて爽やか。

生地を流し込んで蒸した型は、ヴァカンスで行ったドーヴィルのスーパーで買ったカマンベールチーズの入れ物。パリから地方に出かけると、マルシェはもちろん楽しいのですが、必ずスーパーのローカルコーナーへ。その地のワイン、シードル、塩、ハチミツやコンフィチュールなどがおいしく、おもしろいパッケージを発見をするのも楽しみ。気に入ったものは取っておいて、こうして使っています。

一緒にヴェルヴェンヌ(Verveine)のお茶を。疲れを癒やす、鎮静・リラックス効果、また、不安やイライラ、不眠症、頭痛を解消、憂鬱な気分を和らげたり、食欲増進、消化作用……素晴らしい効能がいっぱいなので、目覚めても疲れが抜けていない朝に。この蒸しパンともよく合います。

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déjeuner

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夏野菜が出てくる初夏から秋までいちばんよく作るのが、“野菜の揚げ浸し”もしくは、“焼き浸し”。
自家製麺つゆに漬けたり、暑くなってくると殺菌と味付けを兼ねて、レモンか梅干し、または酢を入れて冷蔵庫へ。そのままでもおいしいけれど、冷たいそうめんやうどんにのせたり、豆腐に添えたりとアレンジしています。スパイスや、ハーブ、薬味にシソやミョウガがあれば香りよし!

今回は細めのうどんですが、たまに海外暮らしならではの裏技“なんちゃって中華麺”パスタを茹でる時に重曹を多めに入れると、それ風になるので、それで野菜たっぷりの冷やし中華を作っています。

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dîner

夕飯は、頂いた日本酒が冷蔵庫で冷えているので飲みたい気分……さて、なにを作ろうか?
冷凍庫の中にヒラメ発見! すぐにできる蒸し物にしてみました。

■白身魚と豆腐の香り蒸し

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うつわ:@ach.so.ne

ー 材料 2人分

白身魚 2切れ
豆腐(絹ごしか木綿豆腐) 1/2丁
ニンジン 1/2本
ズッキーニ 1/2本
オレンジかゆずの皮(千切り) 少々
細ねぎ(又はハーブを飾りに) 少々
昆布(5cm幅×15cmくらい) 2枚
日本酒 60cc
天然塩 小さじ1/4 

*ポン酢、山椒粉 適量

ー 作り方

1. 昆布にさっと水をかけてからバットに並べ、日本酒を振りかけてラップをかけ、1時間ほど置いて戻す。昆布の戻し汁は取っておく。
2. 白身魚に塩を振りかけて、冷蔵庫に15分程置いて出てきた水分をキッチンペーパーで拭く。
3. 1と2を待つ間に、ニンジンの皮をピーラーで剥き、そのまま皮を剥くように細長くカットしていく(ヌードル状に)。ズッキーニは包丁かスライサーで薄切りに。

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4. ふやけた昆布を広げ、ニンジン、ズッキーニを並べ、豆腐、白身魚、オレンジの皮をのせ、最後に昆布の戻し汁を上からかける。

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5. 昆布で具材を包み、端を爪ようじでとめる。強火で10分ほど蒸す。昆布を開いて細ねぎをのせ、ポン酢や山椒粉をかけていただく。

たまたま家にあった冷凍モノを使いましたが、昆布と海の塩と日本酒の旨味のおかげで、こうするとどんな魚も間違いなくおいしくなります。簡単なのですが、ちょっとしたご馳走に見えますね。

食後の昆布は、さっと水で洗って乾燥。出汁を取った後の昆布もそうしておき、ある程度たまったら、また戻して細切りにし醤油とみりんで炊き佃煮にしてからゴマや山椒の実を入れて、ご飯の友を作ります。北海道の漁師さんが命がけで採ってくれたものは、少しでも粗末にはできませぬ。

こんなことをしながら日々の“おうちご飯”を楽しんでいきましょう!

SACHIYO HARADA
料理クリエイター

長い間モードの仕事に携わった後、2003年に渡仏。料理学校でフランス料理のCAP(職業適性国家資格)を取得。 パリで日本料理教室やデモンストレーション、東京でフランス料理教室を開催。フランスの料理専門誌や料理本で、レシピ&スタイリングを担当。2016年春、ベジタリアン向けの料理本『LA CUISINE VEGETARIENNE』をフランス全土と海外県、ベルギー、スイス、イギリスなどのヨーロッパ各地で発売。madameFigaro.jpでの連載をまとめた『パリのマルシェを歩く』(CCCメディアハウス刊)が発売中。
Instagram : @haradasachiyo

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HARADA SACHIYO連載「パリのマルシェとレシピ。」

photos et texte : SACHIYO HARADA

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