東京で食べるフランス郷土料理。#03 神楽坂で、本場のリヨン風サラダとクネルを。

Gourmet 2020.09.22

豊かな恵みをもたらす海と山を擁する、美食の国フランス。日本でも知られている名物料理から、味わったことのない逸品まで、フランスには地域ごとの個性あふれる郷土料理がある。旬の食材を用いて、代々受け継がれてきたそんな郷土料理の数々を、フランスの6つのエリアから紹介します。今回はオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地方から、リヨンの名物料理をご紹介。

Auvergne-Rhône-Alpes
歴史と恵まれた環境が育んできた料理。

ルグドゥノム・ブション・リヨネ(神楽坂)

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自家製ベーコンと、クルトン代わりにケークサレを使った「リヨン風サラダ」はコースメニューの一品。

フランス南東部に位置し、フランス第二の都市でもある美食の街リヨン。古くローマ帝国時代からヨーロッパ有数の交易地として栄え、中世からの建築物が並ぶ旧市街は、ユネスコの世界遺産にも指定されている。

金融業で潤い、絹織物も盛んだったリヨンの街は16世紀初頭になると、フィレンツェやミラノなどから多くのイタリア商人たちが率先して移り住むようになった。そしてそれに伴い、当時フランスよりも洗練され、進化していたイタリアの食文化の洗礼をそのまま受けることになる。

こうした歴史的背景のもと、近郊にはボジョレー、ローヌといったワインの産地が控えているなどの恵まれた地域環境が、リヨンをして美食の街と呼ばれるまでにいたらしめた大きな理由のひとつだろう。ブレスの鶏やシャロレーの牛、ドンブ地方のカエルにエクルヴィス(ザリガニ)、そしてこの地を流れるローヌとソーヌの両川でとれる川カマスをはじめとする川の幸など、リヨン近郊の特産物を挙げれば、それこそ枚挙にいとまがないほどだ。

また、リヨンの食を語る上で忘れてならないのが、メール・リヨネーズと呼ばれる女性料理人の存在だろう。

「リヨンの上流階級では、女性のお抱え料理人を雇うところが多く、そうした女性たちが街場で店を出すケースが多かったんです。最も有名なのは、『ラ・メール・ブラジエ』のウジェニー・ブラジエ。近代フランス料理の母と呼ばれ、あのポール・ボキューズの師匠でもある偉大な料理人です」との一言は、リヨン生まれのクリストフ・ポコ氏。神楽坂「ルグドゥノム・ブション・リヨネ」のオーナーシェフである。ちなみに、店名の“ルグドゥノム”とは、ローマ帝国時代、リヨンにあった植民都市。そして“ブション”は、リヨンの大衆食堂、いわばビストロのことで、かの地の庶民の味をベースに、独自のアレンジを加えたリヨン料理を楽しめる。ポコシェフによれば、豚や牛、鶏肉などの精肉はもちろん、内臓類をバラエティ豊かに用いる料理が多く、いずれもボリュームたっぷりに供せられるのもリヨン料理の特徴だそうだ。

代表的な料理としては「リヨン風サラダ」、豚肉を使った「ソシソン・リヨネ(リヨン風ソーセージ)」、内臓のソーセージ「アンドゥイエット」、豚の血のソーセージ「ブーダン・ノワール」などなど。街場のビストロでもおなじみの肉料理が目立つ。

「リヨン風サラダには本来、ベーコン、クルトン、ポーチドエッグが入るのが定番ですが、うちでは、クルトン代わりに自家製のケークサレ、塩漬けの豚バラ肉で作る自家製のベーコンを入れています」とポコシェフ。半熟卵の黄身を潰して、ソースのように全体に絡めて食べれば、ワインが進むこと請け合い。厚切りの自家製ベーコンも存在感たっぷりだ。

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同じくコースの料理より、ポコシェフの祖母の名前を冠した「リヨン風クネル モリセットゥおばあさんスタイル ナンチュアソース」。

また、川カマスで作る「クネル」もリヨンではおなじみの名物料理。川カマスのすり身につなぎのパナード(小麦粉をベースにした混ぜ物)を混ぜた、日本でいえばハンペンのような一品。これにザリガニで作ったナンチュアソースをかけていただくのが常套だが、日本ではザリガニが手に入りにくいため、同店ではオマール海老で代用。さらに「うちではバターライスを下に敷いてある」そうで、これはポコシェフのアイデア。ナンチュアソースとなめらかなクネルの舌触りが実に上品。重すぎず、それでいてトラディショナルな味わいが伝わる佳品だ。

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神楽坂の毘沙門天にほど近い路地に、リヨンのブションを思わせる空間が。螺旋階段や、伝統的錫トップのカウンターも本場さながらに再現。

ルグドゥノム・ブション・リヨネ
Lugdunum Bouchon Lyonnais

東京都新宿区神楽坂4-3-7 海老屋ビル1F
tel:03-6426-1201
営)11時30分~14時L.O.、18時~21時30分L.O.
休)月、第1・第3火曜
※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、営業時間変更の可能性がございます。詳細はお問い合わせください。
www.lyondelyon.com

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photos : KAYOKO UEDA, texte : KEIKO MORIWAKI

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