東京で食べるフランス郷土料理。#04 ワインをふんだんに使った、ブルゴーニュの郷土料理。

Gourmet 2020.10.01

豊かな恵みをもたらす海と山を擁する、美食の国フランス。日本でも知られている名物料理から、味わったことのない逸品まで、フランスには地域ごとの個性あふれる郷土料理がある。旬の食材を用いて、代々受け継がれてきたそんな郷土料理の数々を、フランスの6つのエリアから紹介します。今回はワインの聖地として知られるブルゴーニュ=フランシュ=コンテ地方(旧ブルゴーニュ地方)から、ワインをふんだんに使った肉料理と、フレンチの定番のひとつであるエスカルゴを紹介。

Bourgogne-Franche-Comté
本場で魅せられた、クラシックな料理の数々。

ロクロナン(自由が丘)

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「ブッフ・ブルギニヨン」¥3,900。付け合わせは肉の下に敷いてあるジャガイモとサツマイモのみ、といたってシンプル。赤ワインにフォン・ド・ボーを加えて煮込んでいる。

パリから南へおよそ300km、リヨンの北部に位置する山がちの地域が、世界的なワインの産地として知られるブルゴーニュ地方だ。古くから交通や通商の要であり、かつてはブルゴーニュ公国として栄えたこの地は、食文化でもその一翼を担ってきた。温暖な気候や耕作に向いた平坦な土地など恵まれた自然条件による食材の豊富さも、ここブルゴーニュが美食の地と言われるゆえんのひとつだろう。

なかでも、ブルゴーニュ地方といえばやはりワイン。これなくしてブルゴーニュの食は語れない。あのロマネ・コンティやモンラッシェなど、世界に名だたるワインを生み出してきたこの地方のワインは、世界中のワイン愛好家から名実ともに“ワインの王様”と呼ばれ、愛されている。力強さの中に繊細さを備えた気品ある味わい、そして深みのある余韻の長さが、ブルゴーニュワインの大きな特徴といえるだろう。

「ボルドーと並ぶワインの一大産地なので、ワインを使った料理が多いことが特徴でしょうか。『ブッフ・ブルギニヨン』もそのひとつです」。こう語るのは、自由が丘のフランス郷土料理店「ロクロナン」の石井啓資シェフ。確かに、この「ブッフ・ブルギニヨン」こと牛肉の赤ワイン煮込みのほかにも、「コック・オー・ヴァン」(鶏肉の赤ワイン煮)や「ウフ・アン・ムーレット」(ポーチドエッグの赤ワイン煮)など、ワインをふんだんに用いた名物料理が多い。

およそ400gもの肉の塊が皿上に鎮座する同店の「ブッフ・ブルギニヨン」は、フランスでの修業先のひとつ「オテル・ドゥ・フランス・レストラン・ル・タストヴァン」のレシピがベース。「クラシックな料理が評判の店で、牛の赤ワイン煮の作り方もオーソドックス。修業先では、肩肉をミルポワ()とともに赤ワインでマリネしてから煮込んでいましたが、ここでは和牛の頬肉を使っているので、マリネは必要ないかなと思い、塩と胡椒だけで煮込んでいます」と石井シェフ。赤ワインとフォン・ド・ボーで約12時間、弱火でじっくりと火を入れたそれは、フォークでほろりと崩れる軟らかさ。それでいて肉質はしっとり、味わうほどに旨味がジワリと口中に広がる佳品に仕上がっている。

*ミルポワ(mirepoix):さいの目に切ったニンジンやタマネギ、セロリなどをバターと白ワインで炒めて作るスープベース。

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「エスカルゴ・ア・ラ・ブルギニヨンヌ」¥1,800。残ったソースは、パンに付けてどうぞ。そのほか、エスカルゴのクリーム煮と自家製パイを合わせた「エスカルゴのヴォロヴァン」¥1,800もある。

また、ワインの葉が好物のエスカルゴもブルゴーニュの名産品。日本のカタツムリとは品種が違い、フランスでよく食べられているのは、主に「グロ・グリ」と呼ばれるエスカルゴ。代表的な一品「エスカルゴ・ア・ラ・ブルギニヨンヌ(エスカルゴのブルゴーニュ風)」は、ブイヨンで煮たエスカルゴを、パセリやニンニク、エシャロットを練り込んだエスカルゴバターとともに殻に入れ、オーブンで熱々に焼き上げたもの。石井シェフは、そこにクルミとアーモンドを加え、香ばしさと食感をプラス。味に奥行きを出している。

そのほか、「ジャンボンペルシェ」(ハムとパセリのゼリー寄せ)や川魚を白ワインやクリームで煮た「ポシューズ」もブルゴーニュの郷土料理としでおなじみの味。また、フランス料理の名脇役ディジョンマスタードもブルゴーニュの名産。首府ディジョンはマスタードの本場として知られている。

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最寄駅は自由が丘駅、奥沢駅、九品仏駅。金〜日曜にはランチ営業も。

ロクロナン
Locronan

東京都世田谷区奥沢5-38-8
tel:03-3721-2339
営)18時~21時L.O.(火~木) 11時30分~14時、18時~21時L.O.(金〜日)
休)月

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photos : KAYOKO UEDA, texte : KEIKO MORIWAKI

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