【フィンランドが素敵な理由】デザインにこだわるものづくり。

Interiors 2020.05.13

ガラス製品の人気ブランドといえばイッタラの名を思い浮かべる人も多いはず。第1回は、工場所在地の村の名前をそのままブランド名にしたイッタラの工場を始め、フィンランドのカンタ=ハメ県でガラスデザインの魅力に触れる。

高品質にこだわるフィンランド製品。

首都のヘルシンキ中央駅から特急で北へ50分ほど。リーヒマキという駅で降りる。ヴィンテージのガラス製品コレクターにこの街の名前はよく知られている。1910年に創業し、1990年に惜しまれながら工場が閉鎖されたガラスメーカーが「リーヒマキ(フィンランド語:Riihimäen Lasi)」だから。その工場のうちの一棟が1961年にリノベーションされ、フィンランド国立ガラス美術館として開館した。

リノベーションのデザインを担当したのは、フィンランドを代表するデザイナーのひとりであるタピオ・ヴィルカラ。チケットカウンターや展示空間はもちろんのこと、照明や家具、タイポグラフィーまでオリジナルで手がけた。

200415-finland02.jpg展示されているのは、リーヒマキ製品に限らずフィンランドのガラスデザインの膨大なコレクション。

200415-finland03.jpgフィンランド人アーティストでガラス職人であるタルモ・マーロネンが、フィスカルス村の工房「ビアンコ・ブルー(Bianco Blu)」で手がけたフラワーベース(右)。

200415-finland04.jpgオイヴァ・トイッカが手がけた『Glass Forest』など、ガラス彫刻作品も数多く展示。

200415-finland06.jpgスウェーデン人デザイナーのマッティ・クレネルが手がけたテーブルライト「Virva」はイッタラ社の製品。

フィン人の国としてフィンランドが独立したのは1917年。実はまだ独立してから100年ほどだ。それ以前は、長くスウェーデンとロシアの支配下にあった。その歴史から、国民の間に支配関係や格差を生み出さずに、真の共和国を築こうとした。

ヘルシンキ市内に高層ビルがないのは、高層階と低層階の住人格差を生み出さないため。また、高品質のデザイン製品を適正な価格で販売しているのも、国民全体の暮らしのスタンダードを高く維持するためだと、以前ヘルシンキのデザインミュージアムを取材した時にチーフキュレーターが語っていた。アーティスティックな作品から、自然がモチーフのシンプルなプロダクトまでが並ぶ展示には、そんなデザインの背景が感じられる。

200415-finland07.jpg1階ロビーのチケットカウンターはもちろんのこと、家具もすべてタピオ・ヴィルカラが美術館のためにデザイン。

200415-finland09.jpgガラス美術館には、コレクションに加え現代作家の企画展を行う展示室も。グラフィティアーティストとして1990年代に活動を始め、現在はガラス彫刻も手がけるEGSの個展『Writing Stories with Three Letters』が開催中(新型コロナウイルスの影響で臨時休館中のため、個展会期は未定)。

200415-finland10.jpg旧式のスライドプロジェクターでガラスの彫刻に光を透過したインスタレーション作品。

200415-finland12.jpgガラス美術館のすぐそばにあるガラス工房で、職人たちとの共同作業で作品を制作するEGS。「作品のイメージを職人たちと共有するために」と、スケッチをする。

200415-finland13.jpg顔料を混ぜて色を付け、熱したガラスをコテやハサミなどで成形して彫刻作品を完成させる。

200415-finland14.jpg

Suomen Lasimuseo(The Finnish Glass Museum)
フィンランド国立ガラス美術館

Tehtaankatu 23, 11910 Riihimäki
tel:+358-50-500-1956
営)5月〜8月:10時〜18時 1月〜4月、9月〜12月:10時〜17時
休)月
https://www.suomenlasimuseo.fi

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イッタラの工場で生まれた、さまざまな名作。

リーヒマキから北西方向50kmほどの場所にある村の名前がイッタラ。赤い円に「i」の字のロゴでおなじみのこのブランドが創業したのは1881年。ヘルシンキまでの交通の便がよく、湖からほど近く空気のきれいな環境に着目したスウェーデン人ガラス職人のピーター・マグナス・アブラハムッソンが、スウェーデンから腕利きの職人を招いて多様な技法でガラス製品の製造を開始した。

20世紀に入って間もなく、それまでは装飾的なディナーウェアが一般的だったヨーロッパで、機能性にフォーカスしたシンプルなデザインへとシフト。ラップランド地方の風景など自然のモチーフを取り入れながら、洗練されたデザインを確立させていった。カイ・フランクやアルヴァ・アアルト、タピオ・ヴィルカラ、ティモ・サルパネヴァなどフィンランドのデザインの歴史を彩るデザイナーや建築家が数々の名作を手がけた。

200415-finland15.jpgイッタラの工場には見学スペースが設けられており、入場無料で予約なども必要なく自由に見学することが可能。

200415-finland16.jpgオイヴァ・トイッカがデザインした「Birds」シリーズもこの工場で生産している。

200415-finland17.jpg「美しく機能的で毎日の暮らしを楽しくするガラス製品」を職人たちが手作業で生み出す。

200415-finland18.jpg「Ultima Thule」の開口部をカットし、断面をチェックして商品と廃棄品とを仕分ける様子。

Iittala Glass Factory
Tehtaantie 3 C, 14500 Iittala
tel:+358-(0)-20-439-6230(Design Museum Iittala)
営)9時〜20時
※13時50分〜14時5分はシフト交代のため閉鎖
休)土、日
※祝日は不定休
https://iittalavillage.fi/en/the-iittala-glass-factory

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▶︎▶︎近隣で立ち寄りたいおすすめスポット

1. お気に入りの一点を見つける「デザイン・ミュージアム・イッタラ」

200415-finland19.jpg工場から徒歩5分ほどの場所にデザイン・ミュージアム・イッタラを併設。

200415-finland20.jpgアルヴァ・アアルトが手がけた「Aalto Vase」のモチーフはフィンランドの湖。

200415-finland21.jpgオイヴァ・トイッカの「Birds」シリーズも複数の種類を展示。

200415-finland22.jpgカイ・フランクがデザインしたタンブラー「Kaltio」など、色のトーンも特徴的。

200415-finland23.jpgミュージアムに隣接するアウトレットの品揃えは当然ながら圧倒的。

Design Museum Iittala & Iittala Outlet Iittala
Könnölänmäentie 2 C, 14500 Iittala

<ミュージアム>
tel:+358-(0)-20-439-6230
営)11時〜17時
休)1月〜5月、9月〜12月:月〜金 6月〜8月:月

<アウトレット>
tel:+358-(0)-20-439-3512
営)1月1日〜5月14日、9月1日〜12月31日:10時〜18時 5月15日〜8月31日:10時〜20時
不定休
https://www.iittala.com/about-us-travel-destinations

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2. アンティークの北欧デザインを堪能できる「B&B Matin ja Maijan Majatalo」。

200415-finland24.jpgイッタラとリーヒマキの中間に位置するハメーンリンナのB&Bは、アンティークな北欧テイストのインテリアが心地よい。

B&B Matin ja Maijan Majatalo
Eteläkatu 5, 13100 Hämeenlinna
tel:+358-(0)-40-355-6640
www.matinjamaijan.fi/en

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3. 北欧の食材を楽しめるレストラン「Uoma」。

200415-finland25.jpgB&Bから徒歩3分のレストラン「Uoma」は、北欧の食材と旅で得たインスピレーションを融合したスタイルでフィンランド中から注目されている。

200415-finland26.jpgポルチーニの冷製ポタージュなどがアミューズとして登場。

200415-finland27.jpgメインはポークロースト。カリッと香ばしく焼き上がった肉に、爽やかな味わいのホワイトアスパラのピュレが添えられている。

Uoma
Saaristenkatu 4, 13100 Hämeenlinna
tel:+358-(0)-44-241-8759
営)11時〜14時(月、火) 11時〜14時、16時〜23時(水〜金) 16時〜23時(土) 12時〜16時(日)
不定休
www.ravintolauoma.fi/en/home

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photos et texte : RYOHEI NAKAJIMA

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