【フィンランドが素敵な理由】街のシンボルになる文化施設。

Interiors 2020.05.15

第1回第2回の記事では、カンタ=ハメ県でガラスやテキスタイルデザインの現場をリポートした。最終回は首都ヘルシンキで、建築デザインも特徴的な美術館や図書館、サウナを巡るリポートをお届け。

迷路を歩くように楽しむ、ヘルシンキ現代美術館。

空港からヘルシンキ市内までのアクセスは、電車で30分ほど。ターミナル駅であるヘルシンキ中央駅に到着する。街の入口でもあるこの駅は、ヘルシンキ市街地の中心地だ。国会議事堂からもほど近く、駅のそばにはマリメッコやイッタラなどフィンランドのナショナルブランドの店が並ぶ。

そして、駅から徒歩5分ほどの場所に立つのが「ヘルシンキ現代美術館」。「Kiasma(キアズマ)」という愛称で知られている。アメリカ人建築家のスティーブン・ホールがデザインした「chiasma」という案が国際コンペに勝利し、1998年にオープンした。「chiasma」が意味するのは「交差(医学的には視神経の交差部分)」。北にアルヴァ・アアルトが設計したフィンランディア・ホール、東にはエリエル・サーリネンによるフィンランド中央駅、西方向に少し歩くとヘルシンキ市立美術館が立つこの立地は、街の文化的な交差地点と呼ぶにふさわしい。

200508-finland06.jpgカーブ状の形態が特徴的なヘルシンキ現代美術館の外観。

200508-finland07.jpgエントランスホールから2階へと向かうスロープを吹き抜けから望む。

200508-finland08.jpg2階から3階へと向かう階段とスロープ。この美術館には中2階がいくつかあり、階段も地階から最上階を垂直に結ぶ構造を持たない入り組んだフロア構成になっていて、迷路を歩き回るような建築的な楽しさもある。

200508-finland09.jpg5階のメインの展示室。イギリス人アーティストのエド・アトキンス『Live White Slime』展の模様(会期は8月23日までを予定しているが、現在は休館中)

200508-finland10.jpgリサ・ルーニラ『Passing By』(2008)。フィンランド人アーティストであるリサ・ルーニラの個展『Shadow Zone』は2021年1月10日まで開催(現在は休館中)。

Nykytaiteen Museo Kiasma
ヘルシンキ現代美術館(キアズマ)

Mannerheiminaukio 2, 00100 Helsinki
tel:+358-(0)294-500-501
営)10時〜20時30分(火~金) 10時〜18時(土) 10時〜17時(日)
休)月
https://kiasma.fi

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本の楽園、ヘルシンキ中央図書館。

ヘルシンキ現代美術館から徒歩4分ほど、通りを挟んで斜め向かいにも特徴的な現代建築の建物がある。ヘルシンキ中央図書館「Oodi(オーディ)」だ。フィンランドの設計事務所ALAアーキテクツが設計を手がけ、2018年12月にオープン。2019年夏には、国際図書館連盟(IFLA)によって2019年公共図書館賞で最優秀賞に輝いた。

建物の外観も特徴的だが、フロア構成と内容が従来の図書館から大きく拡張している。1階には本が並んでおらず、ゆったりとしたエントランスホールにカフェ、映画館、返却コーナーなどが設置され、2階に向かうと撮影スタジオや3Dプリンターなどが置かれた工作スペース、会議室など。そして3階に行って初めて”本の楽園”が広がる。

200508-finland11.jpg3階は本の楽園をイメージしたフロア。書籍や音楽ソフトなどが並び、貸し出し可能なアイテムは10万点ほど。

200508-finland12.jpg2階は仕事と学びのスペース。

200508-finland13.jpgさまざまな工作器具、大型ポスターをプリントできるプリンター、音楽スタジオやキッチンスタジオ、さらにはコンピューターゲームで遊べるゲームルームも設置されている。

200508-finland14.jpg1階のカフェは、チョコレートで有名なファッツェル社に運営を委託。有機野菜などローカルな食材にこだわったヘルシーなメニューが人気。

200508-finland15.jpg

Oodi Helsingin Keskustakirjasto
ヘルシンキ中央図書館(オーディ)

Töölönlahdenkatu 4, 00100 Helsinki
tel:+358-(0)9-310-85000
営)8時〜22時(月~金) 10時〜20時(土、日)
www.oodihelsinki.fi/en

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古典から現代までのアートシーンを繋ぐ、ヘルシンキ市立美術館。

キアズマから8分ほど歩いたところにあるのが「ヘルシンキ市立美術館」。1937年にオープンした室内テニス場「テニスパラッチ(Tennis Palace)」が2015年に改装オープンしたという異色の美術館だ。シネコンが併設されていてポップコーンの香りがする空間があるため、「アートは脳のポップコーン(Art is popcorn for the brain)」のキャッチコピーが作られた。フィンランドの古典作家から海外の現代アーティストまでを取り上げ、来年の夏に第1回の開催を予定しているヘルシンキ・ビエンナーレの企画運営に携わるなど、フィンランドのアートシーンの中心を担う美術館だ。

200508-finland16.jpgメイン展示室で10月18日まで開催されているのは、フィンランド出身の画家、ヴィルホ・ランピ回顧展(現在休館中)。

200508-finland17.jpg3階展示室は、天井の高い武骨な空間。写真は、ヤッコ・ニエメラ『Nostalgia』展示風景(3月15日に終了)。

200508-finland19.jpgムーミンの作者、トーベ・ヤンソンの展示は時期ごとに内容を替えながら常設されている。『Party in the Countryside』(1947年)。

200508-finland20.jpg

Helsinki Art Museum(HAM)
ヘルシンキ市立美術館

Eteläinen Rautatiekatu 8, 00100 Helsinki
tel:+358-(0)9-310-87001
営)10時〜19時(火~日)
休)月
www.hamhelsinki.fi

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▶︎▶︎近隣で立ち寄りたいおすすめスポット

1. 朝日を待ち望む、フィンランド湾でウォーキング。

バルト海東部のフィンランド湾に面した首都のヘルシンキ。地下鉄は1路線だがトラムやバスが整備されており、また、規模としてもこぢんまりとしているのでどこへもアクセスが良く、とても歩きやすい街だ。街の規模感を知るためにも、また、美しい街の景色を静かに味わうためにも、朝日を浴びながらのウォーキングから一日のスタートをおすすめしたい。

200508-finland02.jpg橋で結ばれたカタヤノッカという島のかつてのレンガ倉庫は、現在はレストランやバーが入居して営業している。

200508-finland03.jpg東岸を北上するコース。ヘルシンキの道は十分な幅の歩道が確保されていて、広い通りは基本的に自転車コースも整備されている。

200508-finland04.jpg街の中心に位置するエスプラナーディ公園。

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2. フィンランド発祥のロウリュを体感。

一日の終わりはサウナへ。サウナはフィンランド語であり、国の総人口540万人に対して、国内に330万におよぶサウナが存在しているといわれるほど、フィンランド人にとって大切なもの。かつてはどの町にも公衆サウナが存在し、人々の社交の場としても機能していたが、第2次世界大戦後の近代化にともなって公衆サウナは激減した。集合住宅へのサウナの設置が一般化し、人々が公衆サウナを利用しなくなったのだ。日本の銭湯と同じような構図だ。

近所の人が顔を合わせ、挨拶や他愛ない会話を交わすコミュニティの象徴的な場であった公衆サウナ。その減少をコミュニティの脆弱化と捉えたヘルシンキ市の主導で計画されたのが、市の南部、バルト海に面する再開発地域に2016年にオープンした「ロウリュ」だ。フィンランド語でスチームを意味する単語「löyly」をそのまま採用。熱された石に柄杓で水をかけ、熱い蒸気が立ち込める部屋で汗をかき、身体が十分に温まったら階段を下りて海へ! フィンランドを訪れたら、その文化のコアにあるサウナを体験しないわけにはいかない。

200508-finland21.jpg夕陽を浴びた海岸の巨大な岩のような木造建築。レストランとカフェも併設されており、海に面したテラス席は夏の人気スポットだ。

Löyly
ロウリュ

Hernesaarenranta 4, 00150 Helsinki
tel:+358-(0)9 -6128-6550
営)16時〜22時(月~水) 13時〜22時(木、金) 7時30分〜10時、13時〜22時(土) 13時〜21時(日)
無休
※5月31日まで休館中。
www.loylyhelsinki.fi

【関連記事】
【北欧デザイン案内 vol.1】フィンランドのガラスの街へ。
【北欧デザイン案内 vol.2】プリントテキスタイルの歴史と現在。
【コペンハーゲン】サウナ付きカフェが夏の新定番!?

photos et texte : RYOHEI NAKAJIMA

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