うつわディクショナリー

うつわディクショナリー#62 秋の味覚を堪能、掛江祐造さんのうつわ

うつわディクショナリー

薪窯から生まれる、滋味深くもモダンなうつわ

現代の焼物には、大きく分けて二つの表現方法があると思う。ひとつは、土や釉薬など原料となる自然素材のポテンシャルにまかせた味わい深さを尊重する方法。もうひとつは、自然素材に人の手による表現を加えていまの生活にあうすっきりとした趣きを重視する方法。陶芸家・掛江祐造さんは、薪窯焼成による滋味深さと現代性、そのどちらもあきらめない。だから生まれるうつわの魅力とは?
 
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—掛江さんの作品を初めて見た時、焼物ならではの土っぽさとキリッとしたかたちが同居していることに驚き「こういう土ものなら私でも使いこなせそう」と思わず手を伸ばしました。10年ほど前のことです。
掛江:僕は、いまから15年ほど前、28歳の時に初めてギャラリーで作品を発表しました。その頃は、薪窯で焼成の焼物というとどっしりと重厚なものや釉薬がどろっと力強く流れるものが多かったと思いますし、若手の作家はまだ少なかったので、新鮮にうつったのだと思います。いまでは定番となっている長方皿に目をとめてくれる方が多かったですね。
 
—秋刀魚を一本、無理なくのせられる板皿ですね。自然釉の流れや溜まりといった景色を感じられながら、長方形のエッジがキリッと立っていてかっこいいんですよねえ。
掛江:秋刀魚にもいいですが、僕は、おむすびと卵焼きをのせて朝ごはんセットにしたり、そばの薬味を並べたり。酒のつまみの三品盛りなんかも映えますよ。
 
—なるほど。日常的な使い方だけでなくしゃれたアレンジもしてみたい。それに、土もののうつわには、やはり、煮物や炊き込みご飯、温麺など、秋から冬の味覚が合いますね。
掛江:今回の個展では、そういう献立に合う刷毛目の麺鉢や飯碗も作りました。刷毛目は筆ではなく藁の束でつけますが、藁の弾力にまかせてすすっとひくと気持ちのいい線が出ます。碗ものは「こういうかたちに」と狙って作るより、「手のなりに」というんでしょうか、ナチュラルにふわっとろくろを引けた時に、いいものができたと感じます。
 
—いい表情の飯碗がたくさんありますね。そもそも、なぜ陶芸をはじめたのですか?
掛江:僕は広島出身なんですが、子供の頃は備前焼が人気だったこともあり、岡山の備前に家族でよく訪れていて。食卓には日常的に焼締のうつわが並んでいました。その影響もあるのか、京都の大学に入った時に陶芸サークルに興味を持ったんです。やってみたら面白かったので、卒業後も焼物を続けようと常滑の陶芸の学校で学びました。
 
—その後は、弟子入りなどもしたのですか?
掛江:常滑で学んでいる頃から、先輩の穴窯(あながま)を借りて何人かで一緒に作品を焼いていました。やがてその先輩が窯を使わなくなるというので、そのまま受け継いで自分で制作を重ね、いまにいたります。
 
—最初から、薪窯ひと筋なんですね。
掛江:最初は「与えられた環境を生かそう、これでやるしかない」という気持ちだったと思いますが、薪窯は焚けば焚くほど、次への課題が出てくるのが面白い。10年以上やっていても、焚いている時に、次はこうしてみよう、ああしてみたらどうかとアイデアが浮かび、発想の連続なんです。フラットな平皿など土と釉薬を安定させたいものには、ガス窯を使います。
 
—薪窯というと、炎の力にまかせてガンガン焼くというイメージですが。
掛江:僕の場合は、薪が燃える時の炎で焼くというよりも、炎が消えて薪が真っ赤になった状態(熾き=おきという)でじんわりと熱を加えていくというイメージです。そもそも薪をくべるということは、燃やすことで窯の中に酸素を引き込み空気の流れを作るということだと思うんです。熱量のある空気の流れにのって灰が振りかぶり表情のある焼物になります。今回は65時間くらい焚きました。
 
—三日三晩の窯焚きですね。窯焚きの際には、どんなことに耳をすますのですか?
掛江:窯全体にじんわりと熱が回っているかどうか、ですね。一般的に薪は松というイメージがありますが、常滑では、杉の端材を薪にします。安価な薪だから、熾きの熱量を大事にするのかもしれません。派手な窯焚きではないですが、やり方がよければ気持ちのいいものができるはず。そういう気持ちで、これからも続けていきたいと思っています。
 
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※2019年11月18日まで、横浜の「sumica 栖」にて「掛江祐造展」を開催中です。
 
今日のうつわ用語【穴窯・あながま
斜面に築かれたトンネル状の窯で地下式もしくは半地下式のものが多い。登窯のように部屋は分かれておらず、傾斜を利用した炎の引きで空気の流れを作り高温を得る。
【PROFILE】
掛江祐造/YUZOH KAKEE
工房:滋賀県大津市
素材:陶器(常滑土など)
経歴:大学卒業後、2004年より愛知県常滑市立陶芸研究所で陶芸を学ぶ。2006年常滑にて独立。2018年滋賀県に工房を移す。1978年広島生まれ。

sumica栖
横浜市中区山下町90-1 ラ・コスタ横浜山下公園101号室
Tel. 03-5717-9401
営業時間:11時〜19時
不定休
http://www.utsuwa-sumica.com/index.html
✳商品の在庫状況は事前に問い合わせを

『掛江祐造展』開催中
会期:2019年11/9(土)〜11/18(月)
定休日:11/13(水)

photos:TORU KOMETANI realisation:SAIKO ENA

衣奈彩子

ライター、エディター

「フィガロジャポン」編集部を経て独立。うつわを中心に工芸、インテリア、雑貨など暮らしにまつわる記事を執筆。うつわと食を愉しむ提案をするUTSU-WA?主宰。著書に『うつわディクショナリー』(CCCメディアハウス刊)、『料理好きのうつわと片づけ』(河出書房新社刊)。編集した書籍に『どっちつかずのものつくり』(安藤雅信著・河出書房新社刊)。http://enasaiko.com

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