パリの川村さんちの朝ごはん

夏の終わり、いつものラタトゥイユとフロマージュ・ブラン。

8月最後の日、近所のマルシェに出かけると、まだバカンスの人たちが少なからずいるのか、平日なのに土曜のような賑わいを見せていた。
新学期(新年度)を迎える直前の子供たちもたくさんで、みんな日に焼けている。

私も8月は帰国して留守にしていたので、この日が、パリに戻って最初のマルシェ買い物日。
作りたいものは決まっていた、ラタトゥイユだ。
パリに到着した日の気温は19度で、翌朝は12度と、夏の終わりというには随分と肌寒いお天気で、夏野菜を煮込みたい気分になっていた。
旬も終わりを迎えるこの時期のトマトを煮込むのが好きで、9月は例年、切らすことなくラタトゥイユを仕込む。肌寒ければ温めて、暑さが戻って来れば冷たいまま食べればいいし、温め直してどんどん煮詰まり汁気がなくなった状態もまた好きなのだ。

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いつもの生産者さんのスタンドに行くと、ラタトゥイユを作ってくださいと言わんばかりに、トマトとナスとピーマンが隣り合わせで積まれていた。
「ラタトゥイユにするから、傷がついてても全然構わないし、なるべく熟れたものが欲しい」とトマトのリクエストをしたら、熟し具合を確かめつつ選んでくれた。煮込み用のグジュグジュに熟れたものがあればそれを買いたかったのだけれど、もう売り切れだったのだ。

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ラタトゥイユに入れるのは、トマト、ナス、ピーマン、ズッキーニ。
私は、タマネギもニンニクも入れない。
タマネギを入れずに、旬のトマトの甘みを存分に味わいたいのと、朝ごはんに食べたい時にニンニクが入っていると食べるのを躊躇するから、いつからか入れないようになった。
ただ、それぞれの野菜は品種違いで数種類使う。今回トマトは1種になったけれど、ナスもピーマンもズッキーニも、2〜3種類。そうすると食感が少しずつ異なって、味に膨らみが増すように思う。
そして、手間がかかるけれど、野菜はそれぞれ別々にまずフライパンで焼き目をつけてから、鍋で合わせ、トマトを加えて煮込む。
トマトはフレッシュなものだけ。缶詰はもちろん、ピューレもペーストも加えない。
時間をかけてただただ煮込む。少し黒みがかってくるくらいまで煮込むのが好みだ。

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今年は、ラタトゥイユに合わせたいパンがあった。
9区にあるレバント地方(東部地中海沿岸地方:イスラエル、レバノン、シリア、ヨルダンを含む地域 by wikipedia)のブーランジュリーBabka Zanaの、オリーブオイルで作られるブリオッシュ(乳製品不使用)ハッラーだ。ローズマリーを生地に練りこんだものがあって、春に初めてこのパンを食べたときから、ラタトゥイユにぴったりだろうと思っていた。
甘い系のパンが2000年のオープン直後から話題になり、ずっと食事用のパンを食べる機会を持たずにいたのだけれど、今ではすっかり我が家のレギュラーパンの一つになっている。

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Babka Zanaに行った帰り、マルティーユ通りの商店街を抜けて、パリ郊外農家の直営ブティックHumphrisに向かった。目当ては、フロマージュ・ブラン。フロマージュ・ブランの水気を切り、キュウリのみじん切りとチャイブを加えて和えたものをラタトゥイユに添えようと思って。この組み合わせを朝に食べるのは、もう随分と長いこと気に入っている。

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今日の朝ごはん
・ラタトゥイユ
(トマト、ナス、ピーマン、ズッキーニ、タイム、ローリエ、オリーブオイル、塩、コショウ)
・フロマージュ・ブランのキュウリとチャイブ和え
(オリーブオイル、白ワインビネガー、塩、コショウ)
・Babka Zanaのハッラー、ローズマリー風味
・レンヌ・クロード
・プラム
・コーヒー

*フロマージュ・ブランがなかったらギリシャヨーグルトで代用すると良いかもです。
*フロマージュ・ブランに加えるハーブは、お好みで。ディルでもコリアンダーでもチャービルでもなんでもアリです。

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パリの川村さんちの朝ごはん一覧

川村明子

文筆家
1998年3月渡仏。ル・コルドン・ブルー・パリにて料理・製菓コースを修了。
朝の光とマルシェ、日々の街歩きに日曜のジョギングetc、日常生活の一場面を切り取り、食と暮らしをテーマに執筆活動を行う。近著は『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス刊)。


Instagram: @mlleakikonotepodcast「今日のおいしい」 、Twitter:@kawamurakikoも随時更新中。
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