パリの川村さんちの朝ごはん

ソバ粉のガレットと、焼きリンゴで朝ごはん。

今年はまだ一度しかガレット・デ・ロワを食べていないのに、外を歩くたびに、どうしようかなぁ買って帰ろうかなぁとショーウィンドウを覗いていたら、いつの間にか、もういくつも食べた気になってしまった。
それで、早くも1月の半ばから、もうすぐクレープだなぁと思い始めた。

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ガレット・デ・ロワは、キリスト教の祝祭日である1月6日の公現祭に用いられるお菓子だ。フランスでは中世から食べる習慣があるという。
そして2月2日の聖燭祭は、キリスト降誕から40日後の神殿奉献を記念したお祝いの日で(この日を境にクリスマスの装飾は片付けられる)、同時に、クレープの日でもある。
由来には、5世紀に、当時の教皇がローマへの巡礼者にクレープを振る舞った、とか、丸くて黄金色であることが太陽と重なることから立春のお祭りとして食されるようになった、とか諸説あるようだけれど、今日のフランスではともかく2月2日はクレープの日だ。
年末のクリスマスケーキから年始のガレット・デ・ロワ、そして立春のクレープと、お菓子リレーが続く(ちなみに、バレンタインにチョコレートという習慣は無い)。

今、調理器具売り場に行ったら、crêpière(クレピエール)がきっとたくさん揃っているなぁと思った。
フランスには クレープパン(クレープ用のフライパン)なるものが存在して、おそらく日本で言うところのホットプレートくらいには、普及している気がする。
これまで何度も迷いながら、結局買わず、いつも普通のフライパンでクレープを焼いてきた。でもなぜだか今年は潔く、買おう! と気持ちが固まっていた。
クレープパンは何が特徴かというと、縁が浅い。おかげで、生地をひっくり返すときに、パレットナイフを生地の下に滑り込ませやすい。クレープって1枚焼いて終わり! じゃなくて、一度に何枚も焼くから、あのひっくり返す時に毎度生じる緊張感が軽減されるって、結構大きな違いを生むんじゃないかと、今更ながら思ったのだ。

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それで、BHV(日曜大工品から家電まで揃うデパート)に出かけた。イベントにフォーカスしてのプロモーションは料理道具専門店よりも、デパートの方が精力的じゃないかなぁと思って。
料理がテーマのフロアに行くと、思っていた以上に、クレピエールが売り場前面に出ていた。

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サイズも、メーカーによって24、25、26、28、30cmと幅があり、テフロン加工、底がアルミかステンレスか、などで価格にもばらつきがあった。
ただ、うれしいことに大半が冬のセール対象品で、30〜40%オフになっている。
やっぱりこれは買うしかないな!

メーカーごとにコーナーが分かれているから、全部を見比べるのにあっちへ行ってはこっちに戻り、を繰り返し、最終的に、底がステンレスで、柄(持ち手)を取り外しできるタイプを選んだ。サイズは26cm。
それだと、柄を外せばそのままオーブンに入れることができる。
まさに、オーブンに入れて仕上げる、クレープでやりたいことがあって、それが決め手になった。

クレピエールを買った翌朝。早速使ってみることにした。
2月のクレープの日は、慣習的には小麦粉で作るクレープなのだけれど、私は、ソバ粉のガレットの方が好きだ。
食べたくなったらいつでも作れるように、ソバ粉も常備している。

やってみたかったのは、焼きリンゴとソバ粉のガレットの合体。
たまに、パン・オ・ルヴァンや全粒粉パンの上にリンゴを丸ごと1個のせて、オーブンで焼く。
そうするとリンゴの焼き汁をパンが吸い込んで、ところどころキャラメリゼして、とてもおいしい。
それを、ガレットでもやってみたかったのだ。

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●まず、ガレットの生地を用意。
[材料](26cmのクレピエールでだいたい8枚分)
ソバ粉 160g
小麦粉 40g
塩 ひとつまみ
卵 1個
水 400g
バター(溶かしバターにする) 30g

1. ボウルにソバ粉、小麦粉、塩を混ぜ合わせ
2. 1に卵を加えて、少しずつ粉類と混ぜ合わせるようにし(この時点で全体が混ざる必要はない)
3. 2に水を少しずつ加えて、その都度混ぜ合わせる。全体が混ざったらそのまま置いておく。(バターは後で加える)

●生地を休ませている間に、リンゴを焼く。

1. オーブンを180度に温め始める。
2. リンゴの芯をくり抜いて、そこにキビ砂糖とバター(有塩)を詰める。量は適当。
*ここでのポイントは、芯は、種の下くらいまでくり抜くに留めて、底を残すこと。じゃないと汁が全部流れ出てしまう。もし底まで貫通してしまったら、抜いた部分を利用して閉じるようにする。
3. 耐熱容器にリンゴを並べ、オーブンに入れて、20〜25分(リンゴの大きさによる)焼く。
4. ガレットに加えるバターを、別の耐熱容器に入れ、これもオーブンに入れて溶かす(溶けたらオーブンから取り出す)。

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●リンゴを焼いている間に、ガレットを焼く。

1. フライパンにバターを引いて、全体に薄く広がる程度の生地を流し(小さめのお玉1杯分くらい)
2. 生地にフツフツ穴が出来てきたらひっくり返す。
3. 焼きあがったら、平らな皿に上げておく。

ソバ粉のガレットが郷土料理のブルターニュ地方のレシピだと、材料は、水とソバ粉だけ。ブルターニュの人に、卵とか入れないの? と聞くと、何言ってんの? という顔をされる。
だけれど、水とソバ粉だけの生地は、何度頑張っても、どうやっても、フライパンではひっくり返すことができない(私は、ですが……)。
それで、普通のフライパンで問題なくひっくり返せる、かつ、おいしい生地を作りたくて幾通りも試した結果、行き着いたのが上記の分量だ。
クレピエールを手に入れたいま、是非とも、水とソバ粉だけの生地を焼いてみたい。
でも初回は、いつものレシピで作ることにした。

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ガレットづくりの道具は、新たに手に入れたクレピエールと、クレープ用のヘラ、タケコプターみたいな形のものは、フライパンに生地を流し入れた後に、くるっとひと回し(逆さTの字にして使う)して生地を丸く広げる器具、それと片口になっているお玉。

実際にクレープ用フライパンを使ってみて……
格段にひっくり返しやすかった!
だからか、何枚も焼くのに普通のフライパンより手際よくできる。
これは、買ってよかった〜!
これならば、水とソバ粉だけで作る生地でもいける気がする。


●仕上げは……
生地を全部焼き終えたら、一度クレピエールをキッチンタオルできれいに拭く。
ガレット生地を数枚(食べたい分)、二つ折りにしてクレピエールに並べ、

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各生地の折りたたんだ内側に、バターを小さじ1/2程度と、キビ砂糖をパラパラと振りかける。
並べたガレットの上に、焼きリンゴをのせ、バターとキビ砂糖をほんの気持ち加えて、オーブンへ。

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バターが溶けて、ジュワジュワしてきたら、出来上がり。
酸味のあるリンゴのジュースと、二度焼きして外側パリッパリ内側はしっとりのガレットが、とーってもおいしかったです。
ガレットは、焼いたそばから食べないと冷めてしまうから、何枚も焼くとなると、焼き係はなかなか温かい状態で食べられないのが難だといつも思っていたのが、このやり方だったら、あつあつを頬張れる! 大満足でした。

 

●今日の朝ごはん
ソバ粉のガレットと、焼きリンゴ

*ソバ粉のガレットのレシピは、フランスのソバ粉を使って作成したものです。
日本のソバ粉とフランスのソバ粉では、香りも吸水の感触も異なりますので、
生地の質感などは、お使いの粉に合わせて、様子を見ながら調整してみてください。

 

焼き林檎とそば粉のガレットを作りたい気分になった街の様子をYouTubeにアップしました。

パリの川村さんちの朝ごはん一覧

川村明子

文筆家
1998年3月渡仏。ル・コルドン・ブルー・パリにて料理・製菓コースを修了。
朝の光とマルシェ、日々の街歩きに日曜のジョギングetc、日常生活の一場面を切り取り、食と暮らしをテーマに執筆活動を行う。近著は『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス刊)。


Instagram: @mlleakikonotepodcast「今日のおいしい」 、Twitter:@kawamurakikoも随時更新中。
YouTubeチャンネルを開設しました。

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