子どもってどうして噛むの?

Lifestyle 2019.07.23

保育園や幼稚園、ベビーシッターにおいて、腕や手を噛み付く子どもを見かけることはまれではない。どう猛な生き物なのだろうか? いや、探求しているだけなのだ。その謎を紐解こう。

190717-pourquoi-les-enfants-se-mordent-ils-.jpg子ども同士で噛んでしまうことはよくあること。Photo : iStock

子どもはものすごい声で叫んだり、たくさんヨダレを垂らしたり、公園で石を食べようとしたりする。幼い子どもはとにかく何にでも触れようするし、不思議なことをやたらとすることは皆さんご存知のとおりである。

そして驚くべき行為のひとつとして挙げられるのが、噛むことだ。もし噛む対象が、リビングのコーヒーテーブルや子どもの歯固めのおもちゃであれば、大した問題ではない。しかし時にお友達のふっくらした腕や自分自身を噛むことがあったり、常に噛み付く癖がある子もいる。これらを心配する親も少なくない。

「口」は発見するための究極のパーツ

子どもが噛むからといって気難しい性格だとか、行動障害があるだとか心配して思い悩む必要はない。子どもが噛むのは昔から一般的なことだ。生後6カ月から始まり、言葉の発達とともに3歳頃にはやめるのが一般的だ。噛むのは他人を傷付けたり、自分に害を与えたりしたいわけではない。幼い子どもにとって、口は特別なパーツなのだ。

生後、赤ちゃんは口を使ってコミュニケーションを取り始める。「生後最初の身体を使ったコミュニケーションは、口でおっぱいを飲んだり、食べ物を探したりすることです」と精神科医で児童精神科医協会(API)の前代表、イヴォンヌ・コワノン氏は語る。言葉が話せるようになるまでは口で確認したくなるものだ。噛むことは、自分の周辺にあるものを確認したり、研究したりする王道の方法である。そして土でも、お母さんのイヤリングでも、姉の髪の毛でも、友達の手でも噛んでしまうのだ。

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言葉を使わずにコミュニケーションを図る

190717-les-morsures-entre-enfants-en-milieu-de-garde.jpg赤ちゃんは言葉を使わずに、物事を理解する必要があり、時に噛むことで理解しようとする。Photo : iStock

保育園では、赤ちゃんはほかのたくさんの子どもと一緒に過ごしており、噛むという行為は理論的によくあることだ。精神科医のコワノン氏は、噛むことは「知ること」であり、「コミュニケーションすること」なのだと言う。おもちゃを手に入れたい子どもを例に挙げてみよう。

「ほかの子どもが何かで遊んでいるとします。それが何なのか、どんなことができるのか、自分にはわかりません。しかし、それに触れたら楽しそうだから手に入れたいということはわかっているのです。そしてほかのお友達に『貸して』と尋ねることができないため、口で何とかしようとするのです。

おもちゃを掴むために噛み付くのではなく、自分はそのおもちゃが欲しいということを訴えるために気持ちを表現しているのです」とコワノン氏は説明する。また、2歳くらいの子どもはほかの子とルールを守って遊ぶことはできない。

「生後12〜18カ月になってほかの子と同じようにして遊ぶようになります。そして2歳を過ぎると、ほかの子と積極的に関わって遊びたいと思うようになりますが、その方法がよくわかっていません。いちばんの方法は真似ることです。そしてほかの子が噛み付く姿を見ると、それを真似て噛み付くのです」と同氏は述べる。

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噛むことにいったん理解を示す

子どもがなぜ噛むのかは理論的に理解できただろうが、実際に起きた場合はどう対処するべきか。もし子どもが頻繁に腕を噛み、傷ができて帰ってくるような場合にはどうしたらいいだろうか。コワノン氏によると、いちばんよい方法は子どもに対してどうしてそういうことをしてしまうかを説明することだ。

「噛んだ相手はおもちゃが欲しかったけれど、どうやって聞けばよいかわからなかったのだ、と伝えましょう。また、これ以上噛まれないようにする方法、また噛まれても噛み返してはいけないことを伝えましょう」

頻繁に噛まれるような場合は、子どもに対して噛む子からは離れて、ベビーシッターや先生のそばにいるように伝えよう。「もしそれでもその子が同じ子を噛むようであれば、その理由を見つけなければいけませんし、自宅にいる時にはどんなことに興味を持つのかを観察し、理解してあげなければいけません。その子どもの強みや可能性を探ってあげましょう」とコワノン氏はアドバイスする。

噛む子どもに対してどう対処すればよいだろうか。罰を与えたり、議論したりしても意味はない。「現時点で子どもたちは、傷付けることが何を意味するのかわからないので、親や周りから怒られている意味を理解することができません」とコワノン氏は言う。大切なのは、噛むということは誤った行為であり、欲しいものを手に入れるためには別の方法を使ったほうがもっとうまくいくと伝えることだ。

「子どもには、ジェスチャーを使ったり、お友達の腕をポンと軽く触れたりするなど別の意思疎通の仕方を教えてあげましょう」

自分の子どもがほかの子を噛んでしまった場合には、その行為が他者にもたらす影響を伝えることが重要だと精神科医のコワノン氏は述べる。

「生後6カ月では、何が起こっているのか理解することはできません。ですから相手が痛がっている時にその気持ちを理解できるよう手助けしてあげる必要があります。『泣いちゃったよ。あなたも何か食べたいのに食べられない時に、泣いてしまうでしょう』と伝えてみてください。子どもが生きるこの世界をもっと理解できるよう子どもに寄り添い支えてあげましょう」

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texte : Ophélie Ostermann (madame.lefigaro.fr), traduction : Hanae Yamaguchi

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