揚げ物ばかりの大人に、足りなかったであろう幼少期の経験。
Lifestyle 2021.12.29
文/モイラ・ディーン(クイーンズ大学ベルファスト教授)、フィオナ・ラベル(同大学研究員)
研究によると、年齢に応じた台所作業をまかせることが、食生活の改善や運動技能の発達に役立つ。
初めは収拾がつかなくても、たくさん練習して自信を持つことが大事。 ALENA OZEROVAーSHUTTERSTOCK
料理を覚えることは、子どもにとって大いに価値がある。研究によると、子どもの頃に料理を覚えれば、大人になった時の食習慣が好ましいものになるという。揚げ物やテイクアウトの食事が減り、果物の摂取量が増え、健康的な食生活への関心も高くなる。おまけに料理は、運動技能の発達に役立つかもしれない。腕や脚、手の動きをコントロールし調整する能力だ。
子どもを台所に入らせるのは危ないと心配する親は多い。子どもの安全を図ることは大切だが、身体的発達や認知的発達のためには、何らかのリスクの要素が重要であることが研究によって示されている。危険を全て取り除くのではなく、危険を管理することが、健全な成長のためには欠かせない。包丁で食材を切ったり、熱いオーブンを使ったり──年齢に適したリスクのある活動に参加することは、柔軟な対処能力の獲得に役立つ。
2歳になれば、クッキー生地を延ばしたり丸めたりできるだろう。野菜を洗ってもらうのもいい。いろいろな野菜に触れる機会になるし、食べ物の汚れを取り除くことが大切だと教えることもできる。個人差はあるが、3歳になれば親が見守るなかで包丁を使った簡単な作業ができるはずだ。
まずは、バターナイフやプラスチック製のナイフで、バナナのような柔らかい物を切ることから始めるといい。大切なのは、練習して自信を持つことだ。
ニューズウィーク日本版SPECIAL ISSUE「0歳からの教育2022」48ページより。
こうした「料理のお手伝い」は、子どもの運動技能の発達を助ける可能性がある。手指の細かい筋肉を調整して動かす能力は「微細運動技能」と呼ばれ、腕や脚などのもっと大きな筋肉を調整して動かす能力は「粗大運動技能」と呼ばれる。
かき回す、混ぜるなどの作業は、5本の指と手のひらで物を握る微細運動技能が必要で、腕の動きや、腕の力を使う粗大運動技能も必要だ。オレンジの皮をむいたり、切った野菜を串に刺したりといった作業は、親指とほかの2~3本の指を使う微細運動になる。
すべてを子どもにやらせようすると、初めは収拾がつかないかもしれない。でも、遊びながら学ぶ機会を提供してやれるし、新しい食材やレシピに挑戦していい食習慣を身に付けさせることができる。
Fiona Lavelle, Research Fellow in the Institute for Global Food Security, Queen's University Belfast and Moira Dean, Professor in Consumer Psychology and Food Security, Queen's University Belfast
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
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text: Moira Dean,Fiona Lavelle