ヴィーガンになったアーティストたち、その理由、その生活とは?
Lifestyle 2024.04.03
環境問題に取り組む5人のアーティストが自分の思いを語り、菜食主義となったいきさつ、現在の食習慣や健康になるためのアドバイス、好きな食べ物について教えてくれた。
ビリー・アイリッシュ
ファンにも植物性食品の摂取を呼びかけている。
©ZUMA PRESS/amanaimages
──肉は食べない?
科学論文を読めば、畜産業と気候変動はダイレクトに繋がっていることに気付く。気候変動はすでに身近な問題で、とりわけ私と同じ20代にとっては恐ろしいこと。2020年、母(マギー・ベアード)が非営利団体Support+Feedを設立しました。この団体は、植物性原料による食糧システムを構築することで気候変動の危機に対応するものです。
──ヴィーガンになったのはいつ?
ベジタリアンの家庭に育ち、12歳の時に動物性食品は一切食べない決断をしました。あるドキュメンタリーを見て、食品産業のシステムの中で動物がどのように扱われているかを知り、もう関わりたくないと思ったから。動物たちへの残酷な扱いにショックを受けた。
──グルテン派? グルテンフリー派?
グルテンフリー派。いつもグルテンを食べると具合が悪くなっていて、数年前にグルテン不耐症と診断された。いまでは完全に避けています。
──理想的な食生活は?
食物繊維が豊富で健康に良い植物性食品中心の食事。いろいろ研究して、全粒粉のシリアル、果物、野菜をたくさん取り入れたヘルシーな食事を実践している。ファンにも、もっと植物性食品を食べるよう呼びかけている。
──良くないと思う食生活は?
鉄分やタンパク質不足の食事。自分ではこれらの成分が豊富なスピルリナや黒豆、レンズ豆、エンドウ豆、ピスタチオ、ブラジルナッツ等を毎日食べるようにしている。お皿に並べてみると、まるで画家のパレットのようにカラフルよ!
──つい手を伸ばしてしまう大好物は?
グルテンフリーのピーナッツバターチョコチップクッキー。
──絶対口にしない食べ物は?
アレルギーがある乳製品全般。ヴィーガンになる理由がさらに増えた。
──ワイン派? ヘルシーなジュース派?
アルコールは飲まないけれど、赤いフルーツのモクテルやスムージーは大好き。
シンガーソングライター
2019年のデビューアルバムが全世界で1位を獲得。20年、グラミー賞で5部門を受賞。ライブツアーは環境保全団体と提携し、会場で提供する料理を植物性にするなど気候危機に取り組む。動物保護についても発信。
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ナタリー・ポートマン
週1日、菜食にするだけでも地球に貢献できる。
©Laurent VU/SIPA/amanaimages
──肉は食べない?
畜産は環境を破壊する産業のひとつで、最も悪影響な可能性すらあります。温室効果ガスの排出、生物多様性の損失、森林破壊の原因にもなっているため、私は肉を食べません。
──ヴィーガンになったのはいつ?
9歳からベジタリアンだったけれど、ヴィーガンになったのは10年以上前、ハーバード大学の学生時代に知り合ったジョナサン・サフラン・フォアが執筆した『イーティング・アニマル アメリカ工場式畜産の難題(ジレンマ)』(東洋書林刊)を読んでから。この本は、人間が肉を食べるようになって以降、動物たちや地球、そして人間がどんな結果になったか、工場式の畜産の残酷さ、畜産製品の生産と消費における環境コストについて書かれています。その後、私はジョナサンとクリストファー・ディロン・クイン監督で、書籍と同名のドキュメンタリー映画『Eating Animals(原題)』(2017年)を製作しました。
──グルテン派? グルテンフリー派?
グルテンは食べます。オーガニック食材を使ったパスタやピザ、ピタは大好き。
──理想的な食生活は?
朝、目覚めたらコーヒーは飲まず、紅茶とフルーツジュースを摂る。朝食はいつもシリアル、オートミール、栄養素が豊富なアボカド中心。時間がある時は、母がよく作ってくれたイスラエルの伝統的な朝食、フムスとタヒーニのサラダを作ります。
──良くないと思う食生活は?
自分の意見を他人に押し付けるつもりはない。私の取り組みを通して、自分たちが消費している製品についてみんなが疑問を抱くようになり、自分たちの選択をもっと意識するようになればいいと願っているだけ。週に1日、ヴィーガン食にするだけでも地球にもたらす効果はとても大きい。
──つい手を伸ばしてしまう大好物は?
自分で作ったシナモンとアップルビネガーのパンケーキ。
──絶対口にしない食べ物は?
牛乳と卵。それらがメスの牛や鶏からもたらされることに気付いてから、絶対に食べられなくなりました。乳牛は強制的に妊娠させられた後、人間が飲むためのミルクを採るために子牛から引き離される。鶏は年におよそ300個も卵を産むように選別されている。ありえないわ。
──ワイン派? ヘルシーなジュース派?
選ばなきゃいけないの? どっちも好き!
女優
1994年、映画『レオン』のマチルダ役でデビュー。2010年の『ブラック・スワン』でアカデミー賞主演女優賞を受賞。ジュリアン・ムーアとともに主演を務めた『May December(原題)』が今年、日本公開予定。
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オラファー・エリアソン
フレキシタリアンだけど、食べる素材を意識。
©ZUMA PRESS/amanaimages
──肉は食べない?
肉中心の食事からプラントベース食に切り替えることで、たとえそれが1日1食でも個々のエコロジカルフットプリントを減らすことができる! 僕はまだ肉から完全に離れることはできなくてフレキシタリアンなんだ。ベルリンにあるアトリエは約90人の従業員がいるので、健康にも環境にも良く、値段も手頃なベジタリアン食を採用した。屋上の有機農園のほか、近隣の農家から食材を仕入れている。それもベルリンから半径10㎞以内で採れたもの。ノウハウ、品質、倫理観を培う農家の人々をサポートすることも絶対必要だから。
──グルテン派? グルテンフリー派?
日によるかな。いまは世界最小の穀物、テフで作られるエチオピアのパン、インジェラにハマっている。グルテンフリーで食物繊維、鉄分、カルシウムが非常に豊富なんだ。
──理想的な食生活は?
手本は、たとえばシェ・パニースのオーナーシェフ、アリス・ウォータース。彼女は僕の料理本『スタジオ・オラファー・エリアソン キッチン』(美術出版社刊)の序文も書いてくれた。
──良くないと思う食生活は?
無分別な食生活。
──つい手を伸ばしてしまう大好物は?
カラフルな料理。ホワイトラディッシュにマスタードシード、鮮やかな緑色のコリアンダーの葉にレモンバター、ショウガとハチミツ入りのニンジンピュレの艶めくオレンジ色......。
──絶対口にしない食べ物は?
僕の身体と精神は、自分や地球にとって何が良いかわかるので、自然と避けている。食事によって世界の一部が身体になる。すべては繋がっていて、何らかの結果をもたらすもの。
──ワイン派? ヘルシーなジュース派?
どちらも適量なら。
アーティスト
1995年のヴェネツィア・ビエンナーレに初参加。以来、世界各国で活躍。2024年3月末まで、麻布台ヒルズギャラリーの開館記念で『オラファー・エリアソン展』が開催された。
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モービー
菜食主義は宗教ではなく、ひとつの科学的事実。
©ZUMA PRESS/amanaimages
──肉は食べない?
人間によって人間のために、毎年何百億頭もの動物が殺されていること、そして熱帯雨林伐採の90%が畜産を支えるためであることを知れば、肉なんて食べられない。非合理的でクレイジーな行為だ。
──ヴィーガンになったのはいつ?
1982年、バチカン・コマンドスというバンドで演奏していた時にヴィーガンを知った。オハイオ州のピザ屋で演奏した後、泊めてもらったのがベジタリアンのパンクロッカーグループの宿だったんだ。ヴィーガンを実践するようになったのは5年後、ジョン・ロビンズ著『エコロジカル・ダイエット 生きのびるための食事法』(角川書店刊)を読んでから。当時は、ヴィーガンレストランはなかった。そうした店が登場したのは90年代に入ってからだ。
──グルテン派? グルテンフリー派?
グルテンは食べられるし、ピザには目がないんだ。
──理想的な食生活は?
2021年に、125のヴィーガンレシピをまとめた本『The Little Pine Cookbook』(Penguin Random House刊)を発売した。パン粉のピカタ、カリフラワーのキムチ炒め、ネギの煮込みオレキエッテなどなど。30年以上前にヴィーガンになる選択をして以来、ヴィーガン料理は最も革新的な料理になった。そして多分最も健康的でもある。菜食主義は宗教ではない、ひとつの科学的な現実だ。
──良くないと思う食生活は?
マクドナルドにヴィーガンバーガーを食べに行くことは絶対ない。
──つい手を伸ばしてしまう大好物は?
チョコレートパンプディングの堕落に誘惑されてしまう。
──絶対口にしない食べ物は?
何もない。ニューヨークのチャイナタウンでジャンクフードや脂っこい揚げ物好きのヴィーガンとして何十年も過ごしてきた。時が経つにつれて、そうした食べ物にまったく興味がなくなったけれど。
──ワイン派? ヘルシーなジュース派?
過去にアルコールで問題を起こしたことがあるので、いまはもう飲酒はしない。毎朝起きたら、バナナとケールとベリーのスムージーを飲むよ。
ミュージシャン
1980年代にキャリアをスタート。DJやプロデュースも手がける。ヒット作に『Play』など。2023年、長編ドキュメンタリー『Punk Rock Vegan Movie』を製作。
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ステラ・マッカートニー
子どもの頃、みんなから"エコ変人" と呼ばれていた。
©Everett Collection/amanaimages
──肉は食べない?
毎年何百億頭以上の動物が食用として屠殺され、そのうちの半量は食べられてすらいない――これは私が100%菜食主義者である理由のひとつ。2009年、父のポールや姉のメアリーとともに、エコロジーや倫理、健康の観点から、イギリス国内の肉の消費削減を提唱するミートフリー・マンデー運動を立ち上げました。
──ヴィーガンになったのはいつ?
母がヴィーガンで、ベジタリアン運動の偉大な先駆者だった。ベジタリアン料理本を最初に出版したのも母。両親から魚や肉を食べることを禁じられてはいなかったけれど、小さい頃から自然とそうなった。いまでこそ、ベジタリアンやヴィーガンであることはクールだけど、私が子どもの頃はみんなに"エコ変人"と呼ばれていたわ。
──グルテン派? グルテンフリー派?
日によりけり。
──理想的な食生活は?
大切なのは新鮮な食材を種類豊富に食べること。毎日料理することが大好きだった母が私のお手本。野菜、果物、乳製品、スパイスなどがベースの料理で育った。創造性豊かな料理ばかりで、当時のロンドンでは滅多にお目にかかれなかった、ベジタリアンキッシュやメキシコ料理も食べていました。
──良くないと思う食生活は?
自分の身体が求めるものは何も禁止しない。身体に耳を傾けることを学べば、正しい選択ができるようになるわ。
──つい手を伸ばしてしまう大好物は?
豆乳と小麦粉で作ったパンケーキに、バターとメープルシロップをかけたもの。
──絶対口にしない食べ物は?
有機農場で両親に育てられたので、持続可能な方法で生産された食材以外は一切口にしません。
──ワイン派? ヘルシーなジュース派?
バナナとラズベリーのスムージーと同じくらい、おいしいワインが大好き!
ファッションデザイナー
1997年、クロエのクリエイティブ・ディレクターを経て、2001年に自身のブランドを設立。皮革、毛皮、羽毛を使わないなど、エコフレンドリーな姿勢を貫く。
*「フィガロジャポン」2024年4月号より抜粋
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text: Paola Genone(Madame Figaro)