二日酔いの奇跡の治療薬? 世界で流行中の錠剤、本当に効くのか。
Lifestyle 2026.01.10

電解質を配合した水分補給サプリが薬局で市販されている。これを飲めば二日酔いしないと信じている人も多い。本当のところはどうなのだろう。フランスの総合診療医、ファイザ・ボッシに聞いてみた。

一部の消費者は、二日酔い防止に経口補水サプリを利用している。photography: ilbusca / Getty Images
しばらく前からシャルロット(仮称)は飲み会の翌朝が以前とは違うことを実感している。それはついに40代に突入したからではない。少なくともそれだけではない。幼児2人の母親であるシャルロットは2年前、Hydratis(ハイドラティス)を初めて口にした。ハイドラティスとは薬局で売っている補水サプリで、水に溶かして飲めば水分吸収を促進してくれる。それまでにもお酒をたくさん飲んだ翌朝には粉末タイプの赤ちゃん向け経口補水剤、Adiaril(アディアリル)を飲んでいた。でもあるサマーフェスティバルに参加した折、粉末タイプよりも手軽なものがあるのを知る。周りの友人たちが、ビールを大量に飲む前の水分補給と言ってグラスの水に錠剤を溶かして飲んでいたのだ。そこで彼女も試してみた。「目からウロコだった」と彼女は言う。以来、自称「あまり飲まないタイプ」の彼女がハイドラティスを持たずに出かけることはない。「大きなパーティーに行く前か後、寝る前に予防的に飲む」と言う。先月は週末に自分の40歳誕生日パーティーを催し、招待した70人のためにこの錠剤を大量に用意したそうだ。
二日酔い防止にサプリを頼るのは、シャルロットだけではない。33歳のマーケティングコンサルタント、ジェレミーはこれまで飲み会の翌朝に飲んでいた解熱鎮痛剤のエフェラルガンを3カ月前からやめ、水分補給サプリに切り替えた。薬局で毎月20錠入りを購入、周囲にも積極的に勧めている。「同僚にも勧めて試してもらった。薬局で毎月20錠入りを買っている。最近あった社内パーティーの翌日には、みんなから欲しいと言われたね」と得意げに語る。25歳のエンジニア、アドリアンは炎天下のヨットで1日過ごした時やランニングの際など、運動した際にハイドラティスを使っているが、二日酔い対策としても使っている。「飲んで帰った後、水道水に2錠入れて飲むのが習慣になった。プラシーボ効果なのかも知れないけれど、翌日に残らないし疲労感もあまりない」と言う。
飲酒の害は変わらない
ここで紹介した人はいずれも、サプリ本来の用途とは異なる使い方をしている。実際、ハイドラティスの公式サイトには、二日酔い防止効果があるとは一切載っていない。このサプリは2019年にフランスで発売されたもので、「日中の水分補給が十分ではない」という認識を踏まえて同社は競合他社も多い水分補給市場に参入した。公式サイトによればモットーは「水を飲むことは必要不可欠。それをより効果的にするのが私たちの仕事」である。ハイドラティスは電解質、ブドウ糖、ミネラルを配合したサプリで全11フレーバーで展開している。成分はWHOが主に途上国での脱水対策として開発した経口補水液を参考に、ブドウ糖とナトリウムを組み合わせることで、消化管での水分吸収を高めるという周知の生理学的原理に基づいている。
では、二日酔い防止効果はどうなのだろう。「アルコールは抗利尿ホルモンを抑制し、体を脱水状態にするため、こうしたサプリで塩分を補給すれば、水分バランスの回復をやや早める効果はあるでしょう」と、医師のファイザ・ボッシは認める。しかし結局は食事や飲酒の合間にこまめに水を飲むという、ごく単純な行動以上の効果があるわけではないそうだ。しかも似たような飲料を家で作ることができてそれは費用もほとんどかからない。コップに水を入れて砂糖を小さじ1杯、塩をひとつまみ混ぜるだけだ。「それに強調したいのは、サプリを飲んだからと言って飲酒が身体や脳に及ぼすダメージが減るわけではないということです」
医師に言わせればこのサプリが有用な場面は限られている。たとえば夏に長時間ハイキングするときや、何時間もドライブに行くときにペットボトルの数を減らしたいといったニーズが考えられる。こうしたサプリが流行る理由について、医師は「より良い自分になりたい」気持ちをくすぐるからと言う。「マーケティングは栄養の機能面を強調するトレンドに上手く乗っています。人々は元気で健康な人間であるだけでは満足せず、元気で高パフォーマンスな人間になりたいと思っているのです。ですが自然界にはすでに何もかも揃っています。健康な人であれば水分補給には水で十分なのです」。あとは節度ある飲酒を心がけるだけだ。
From madameFIGARO.fr
text: Ophélie Ostermann (madame.lefigaro.fr)






