一流シェフ、ドミニク・ブシェが自閉症児のアート支援クラウドファンディング。
Gourmet 2021.09.14
「トゥール・ダルジャン」「ホテル・ド・クリヨン」などで総料理長を務めたあと、自身の名を冠したレストランをパリに1軒、日本に4軒展開するフランス人シェフのドミニク・ブシェ。自閉症の存在と、自閉症の子どもたちの可能性を多くの人に知ってもらいたいと、この度、クラウドファンディングを立ち上げ、自閉症の子どもたちの輝く個性と創造力を応援するプロジェクトを9月16日より起動する。
フランスのポワトゥー・シャラント地方出身、シェフのドミニク・ブシェ。お皿をキャンバスに、アートなガストロノミー料理を生み出す。
「アール・ブリュット」という言葉を聞いたことがある? これは、1945年にフランスの画家、ジャン・デュビュッフェが考案した言葉で、フランス語で「生(き)の芸術」の意味を持つもの。正規の芸術教育を受けていない人による、技巧や文化潮流にとらわれない自由で無垢な表現を称えている。考案当時、この分野の表現者は、幼児、囚人、精神病患者などを指していたが、現代の日本では、アール・ブリュットの担い手は、自閉症などの知的障がいや発達障がいを抱えている人々が主流となっている。
アール・ブリュットのアーティストたちによる豊かな創造性に、かねてから魅力を感じていたドミニクシェフだったが、大切な友人の息子である自閉症児のJun Jun(ジュンジュン)と、彼の友だちのLily(リリ)と出会い、ふたりの創り出す作品の色彩の豊かさに衝撃を受け、より深く魅了されたと語る。多くの言葉を発することができなくても、心の中に限りなく広がる、ピュアで優しい、色鮮やかな一面を垣間見た想いがしたと。それがきっかけとなり、彼らの隠されたエネルギーに料理魂を揺さぶられるようにして、歓びと躍動の料理が誕生した。お皿をパレットに変え、絵の具をさまざまな食材のピュレに変え……それらはまさに、ドミニクシェフによるアール・ブリュット。
ジュンジュン(右)、リリ(左)と、ドミニクシェフ。
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ドミニクシェフが描いたジュンジュンとリリのポートレート。
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ドミニクシェフは、自らの出会いと体験をきっかけに、自閉症児の未来を応援するために、「アート(生の芸術)とガストロノミー」がひとつに繋がり、ドミニクシェフとその想いに共鳴するチームの気持ちを一冊の小さな本でかたちにし、クラウドファンディングを立ち上げた。その本には、アートからインスパイアされた料理レシピ、子どもたちの作品、保護者たちのインタビューなどが盛り込まれる。支援先は、「進学・就労の選択肢の限られる彼らの日常をアートの力で彩りのあるものに!」というミッションのもと、彼らのアートとプロの仕事をクロスさせることで、新しいワークスタイルを作り出そうと奮闘するCROSS TEAM(クロスチーム)。
ドミニクシェフは、さまざまな食材を色鮮やかなピュレに。
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お皿に描くピュレのイメージを何枚も下書きする。
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「長い料理人人生の中で、こんなふうにワクワクさせてもらったのは久しぶりのこと。自閉症の子どもたちの心は限りなくピュアで、彼らの生み出すアートの可能性は無限大です。でも、彼らの存在は意外に知られていないようです。ジュンジュンとリリーと触れ合い、親御さんたちと話す中で、彼らにいま早急に必要なことは何かを知りました。自閉症を知って、理解して、優しい眼差しで見守る。それだけで彼らの”安らぎ”に繋がるのだと。それなら自分にもできることがありそうだと思ったのです。彼らの頭の中から、心の中からあふれ出るアートを、僕もお皿の上で描いてみようと。レシピにしてみなさんにも作っていただき、レストランではコースの一皿として味わっていただき、自閉症の人たちのアートの素晴らしさに触れていただけたら、それだけでうれしいです。
子どもたちは日々成長します。ジュンジュンはあっという間に父親である友人の背を超え、リリーももうすぐお母さんの肩に届きそうです。親御さんは未来の話をするのは厳しいと声を詰まらせます。自分たちがいなくなった後にこの子たちはどうなるのか。
自分たちと違うから目を逸らすのではなく、同じ社会に生きるひとりの仲間として見てほしい、そんな、ささやかなようで大きな願いに、少しでも寄り添いたいと思っています」とドミニクシェフは述べている。
洗練された見た目の美しさ、味の完成度、厳選された食材、すべてが秀でた料理。クラウドファンディングでは、シェフのアートな一皿が、コース料理でいただける特典もあり。
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クラウドファンディングに支援すると、ドミニクシェフがかたちにした本が贈られるほか、ドミニク・ブシェ トーキョーをはじめとするドミニクシェフのレストランでも(銀座2軒、京都1軒)、シェフのアール・ブリュットな料理を味わえるといううれしい特典も!支援者も楽しみながら、ぜひ優しい想いを彼らの未来のために繋げてほしい。
彩りの美しいピュレが、主役の食材をいっそう引き立てて。
開始日:9/16(木)~
https://camp-fire.jp/projects/474437/preview?token=3rx50fd4
*支援先のクロスチームの活動内容について、詳しくはこちらをご確認ください。
https://crossteam.jp/
text: Natsuko Kadokura