グルメ班のおいしいこぼれ話 Vol.3 フィガログルメ班推薦! いま押さえておきたい、絶品肉料理。

Gourmet 2023.05.18

フィガロのグルメ班が、足を使ってかき集めたおいしいネタを座談トーク! 最新ニュースから推しグルメまで、食いしん坊なら押さえておきたい耳寄り情報をテーマ別にお届け。第3回は肉好きを夢中にさせる絶品肉料理について、本誌グルメ担当のまりモグとFIGARO.jpグルメ担当のYKが語り尽くします。

話題の「筑穂牛」のお取り寄せで、自宅しゃぶしゃぶに興じる。

まりモグ(以下M) 今回は、肉談義を繰り広げるわけですが、肉好きの我々にとっては待望のテーマです。先日はYKくんの家でしゃぶしゃぶをやりましたね。

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YK(以下Y) 知り合いの方から戴いた、福岡県は飯塚の「筑穂牛」のしゃぶしゃぶセットでした。

M 漫画「美味しんぼ」で、海原雄山が「牛肉をまずく食べる料理方法は、すき焼きとしゃぶしゃぶ」だって言ってましたが(笑)。

Y 「美味しんぼ」でそう書かれてから、特に牛のしゃぶしゃぶは、だし汁に旨味が抜けてしまうと敬遠する人も多いと(以前働いていた)肉屋時代によく聞きました(笑)。僕が勤めていたところの社長は、解決策として「だし汁を濃く取る」のがポイントと言っていましたね。牛肉の旨味成分はアミノ酸なので、だし汁のアミノ酸濃度が高ければ牛肉の旨味は抜け出さない、と。あと、牛肉はレアめで食べても大丈夫なので、沸騰しただし汁にさっと潜らせるようにして、ちょっと色付くくらいで食べるのがベストだそうです。

M 付属のだしは、昆布も入っていてかなり濃い目でしたね。筑穂牛は、まったりとした甘さがあって、とても柔らかく美味でした。

Y 日本人の食べ方って、お米と合わせて食べるのもポイントなので、ちょっとした脂の甘みがおいしかったりしますね。牛のしぐれ煮や佃煮といった食べ方から始まり、すき焼きも甘口だったり。焼肉ってそもそも韓国から入ってきた文化ではありますが、タレに甘さがあったりしますよね。和牛の脂の甘みはすごく強いので、そういった甘さを求めて食べるのは和牛の食べ方としては方向性があっているのかなって思います。ただし、自宅でも塊で焼いたり、ステーキを焼いたりするんですけど、脂をどうやって逃がすかってところが、すっごい難しくて。やっぱり脂が最後はくどくなってくるので。

M なるほど。ちなみにまだ脂はいける歳ですか?

Y 僕は全然いけるんですけど、妻がちょっと苦手だっていうんで、最近ではすき焼きでない限りは、基本的にアンガス牛系を選んでいます。

M 私は同世代の中ではかなりいける方だと思うんですけど、焼肉に同世代で行くと、途中でみんながストップしちゃって、私だけが満腹にならないっていうフラストレーションを最近感じているので、なるべく男の人と行くようにしてます。

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Y あと、これも以前勤めていた飲食店の社長に聞いたんですけど、ニューヨークで“サーフ・アンド・ターフ(波と芝)”って呼ばれる、牡蠣とステーキがコースになっている料理があるじゃないですか。

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photography: shutterstock

M 最初にオイスターを前菜で食べて、メインでステーキみたいな。

Y 牡蠣の消化酵素って、やっぱりすごいらしくて。LボーンとかTボーンのコッテリした脂身をいただいても、牡蠣を食べて消化酵素を身体に入れた状態だと、翌日胸焼けもせずにケロリとしていられるというわけです。

M さっき焼肉の元祖は韓国って話があったじゃないですか。先日、ブラジル出張に行ってきたんですね。とあるシャンパーニュメゾンの仕事だったんですけど、世界から12人のトップシェフが集まり、その中のひとりが韓国人のシェフで。韓国で星を取ってるフレンチのスターシェフなんですけれど、なんでも彼のおじいさんが大阪で1946年に「食道園」っていう焼肉屋を創業した人で、焼肉を焼いてからタレにつけて食べるスタイルを開発したのだとか。韓国の焼肉は、壺の中でタレを染み込ませておいて、焼いて食べるじゃないですか。でも、日本ではそのまま食べると肉が熱いと。それで、焼いてからタレをつけて食べることで、ちょっと冷めてちょうどいい温度になって。それが結構受けて、現在では大阪を中心に12店舗展開する大企業になったそう。日本で焼肉と言ったら、そこが発祥という説もあるみたいですよ。

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photography: shutterstock

Y これも肉屋に勤務していたときに聞いた一説ですけど、韓国ではもともと農耕牛として牛を使っていて、それを食べる文化があったそうですが、農耕牛なので肉付きは良くなくて、硬めだった。で、硬い肉を食べるために壺のタレとニンニクに漬け込んで柔らかくして、さらにハサミで切りながら食べていく文化ができたと。でも、脂があって肉質の柔らかい和牛でそれをやると、味がくどくなるんですよね。なので、新しい焼肉屋さんだと、タレよりもむしろレモンだったり、ピンク岩塩、ホースラディッシュで食べてくださいっていう提案を打ち出したりしますね。

M ブラジルにいるときから焼肉モードになってしまい、帰国するやいなや、恵比寿に新しくできた「焼肉ぽんが」に行ってきました。チェーン店で目黒にもあるんですけど、全店で犬の入店OKで、この新しい店舗も可。しかも恵比寿店は全室個室なんです。赤身セットをオーダーしたところ、カイノミとかイチボとかミスジには意外にもサシが入っていて、私はおいしくいただきましたが、友人は若干胃もたれしたようです(笑)

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希少な銘柄和牛のホルモン焼き専門店へ!

Y ニューオープンといえば、高級店「焼肉うしごろ」の中でもホルモンに特化した姉妹店「焼肉ホルモン うしごろ」が中目黒と銀座にできました。

M 銀座の方が最新で3月にオープン。どちらもふたりで行きましたが、生肉のメニューが豊富で。センマイ刺とかハツ刺とか、ユッケとかありましたよね?

Y ハツのユッケに卵を溶いて食べるやつもおいしかったです。

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メインとなるホルモン盛り合わせのセット。

M タレもおいしかったですよね、ほんのり甘くて。肉はサクサクとした食感があって。ただ全体的に味は濃い目の印象でした。お酒と合わせて、とかそんな感じですかね。メインはホルモン盛り合わせです。いろんなホルモンのセットなんですけど。

Y シマチョウ、コプチャン、小腸、ハツ、コリコリ、大動脈、上ミノ、胃袋、センマイが出てきました。さらに、焼き時間がいまいちわかりにくく、つい焦がしがちなホルモンの焼き方指南がちゃんと卓上にあって。「この時間でまずはどうぞ!」って親切に書いてくれている。

M こっちの面から焼いて、こうなったらこうひっくり返してとか。

Y ちょっと目を離すと、すぐ真っ黒になっちゃうんですよね。脂が多いから。でも生焼けだと怖いし、ホルモンってなかなか難しい。鮮度も大事だし。

M そんな中でも、「焼肉ホルモン うしごろ」は、神戸牛とか佐賀牛といった希少な銘柄牛のホルモンを入れていると。

Y 他にあまり聞いたことないですね。高級和牛でホルモン焼きというのは。鮮度が命の分野ですが、安定して入荷するんだからすごいなあ、と思います。

M あと、銀座店限定メニューの「石焼ホルモンガーリックライス」もおすすめです。若干味は濃い目で、いろんなホルモンの食感がワンボウルで楽しめる。

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ご飯の上には生のホルモンが!「石焼ホルモンガーリックライス」

Y 熱々で出てきて、自分で混ぜながら食べるんですよね。

M さっぱりしたのが好みなら冷麺がいいでしょうけど、がっつり締めたいときにはガーリックライスか石焼ホルモンガーリックライスがいいんじゃないかな。

Y あと銀座店は、ドリンクが素敵でしたよね。メニューに「ドン ペリニヨン」があるのを久々に見たと思って。

M 「オーパス・ワン」もありましたっけね? 銀座っていう土地柄、そういうのを求める人も多いのかなと。中目黒より高級感がありました。

Y 西五番街通りにあって、銀座からも新橋からもアクセスしやすいのがありがたいです。

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ヘルシーで栄養満点!馬肉専門店でいただく“焼肉”とは?

Y 西麻布交差点から徒歩3分のところにある、馬肉の焼肉を楽しめる「西麻布さくらや」も注目のアドレスです。プレミアムコースで12,000円。霜降り馬肉と、雲丹とかトリュフも含まれるから意外とリーズナブルというか。シャンパーニュを飲みながら、まずはじっくり馬刺しをいただき、その後、部位ごとに焼肉を楽しんでいきます。馬肉って癖が多少あるものだけど、熊本直送で新鮮、そしてさばき方がすごくきれいなので気にならない。

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生でも食べれる鮮度の馬肉を、部位ごとに焼き肉で味わえる楽しさ! 癖になる味です。

 赤身と白いタテガミの部分、2枚をいっしょに食べるのおいしいですよね。

 「馬肉、焼くんかい!」っていったところですけど、焼いてみるとちょっと香ばしさが出てくるあたり、牛や豚との違いがより顕著に出てくるところで、これが面白い。

 馬って馬刺しのイメージが強いけれど、焼きっていうのも確かに面白いかもしれない。

 脂が落ちるんで、バリバリ食べれちゃいますよ。昔、所ジョージさんが、ビートたけしさんとテレビ番組で馬刺しを食べて、「馬のタテガミってマグロなのかな?」って言ってましたが、鉄分が多いしなやかな筋肉の部分って、確かに同じようなニュアンスがあると思いましたね。だからワインとの相性も実はいい。

M 赤ワインだったら、メルローとか飲みたくなる気がするけどどうでしょう? 馬刺しのときは焼酎を飲んじゃいますが(笑)。

 臭みがあると、焼酎とか、旨口系の日本酒がめちゃくちゃ合うんですよね。ちょっと包み込むような感じのものを合わせてあげると、すごくおいしい気がします。

 焼酎には常圧と減圧蒸留の2通り造り方があるんですけど、ソムリエ協会「酒ディプロマ」の教本によると、馬刺しには常圧蒸留による「球磨焼酎」がマッチする、と。「その土地のものには、その土地のもの合わせろ」っていう。日本酒の生酛(きもと)造りとかそういったのは、どうなんだろう。でもまあ、焼いたり生だったりとか、脂があったりとか、その都度で選んでいくのがいいのかもしれないですね。

 やっぱり肉を食べると元気が出るじゃないですか。これからの季節、精がつくものを食べたいときの選択肢として、久々に皆で焼肉に行こうよってときにいいんじゃないでしょうか。今回のテーマを総括すると、お取り寄せもありだし、高級和牛のホルモンや、ちょっと変わり種で馬の焼肉を食べに行こうよっていうのが面白いんではないかっていうフィガロなりのご提案です。

M うんうんうん。

 ちなみに馬肉は、鉄分は牛肉や豚肉の3倍もあるそう。貧血気味の女性や育ち盛りの子どもには特におすすめの食材と言えそうです。

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肉好き必見の映画、『ステーキ・レボリューション』

 またもや雑談なんですが、『ステーキ・レボリューション』という映画がありまして、パリでいちばん有名な精肉屋の店主イヴ=マリ・ル=ブルドネックさんが「フランスの牛肉事情はすごく遅れている」と、世界中の牛肉を求めて飛び回るドキュメンタリーなんですけど、肉好きならぜひ見ていただきたい1本です。

とにかく作りがお洒落なんですが、日本から和牛が出てきますし、ブラジルのシュラスコだったり、ニューヨークのステーキハウスだったり、世界の牛肉事情と、どうやって食べられているかっていうのを延々と追っかけていて。さあ、世界1のステーキハウスはどこでしょうっていう、めちゃくちゃ面白いドキュメンタリーなんです。

興味深いのが、ローマ字で「WAGYU」っていうカテゴリーがあって。黒毛和牛の遺伝子って日本政府がしっかり守っているにも関わらず、なぜかヨーロッパでWAGYUって呼ばれている牛がいる。日本は1度も種を輸出したことはないのにですよ。そこに闇があって……。誰かが持ち出して、勝手に繁殖させてしまったのでしょうか。「和牛は脂がクリーミーでおいしい」とはよく知れわたっているのですが、そのタイミングでWAGYUが広まってしまっている。もちろん外務省とか、すごく頑張っているんですけど、こういう事実って日本人はあまり知らないよねっていう。

 うん。確かにそうですね。

Y 日本公開は8年前の映画なんですけど、ヨーロッパだと畜産業や農業はもうすでにサステイナブルなんですよ。酪農に関して、かなり先進的なことをやってたりして。比べると、和牛の育て方って、実はあんまりサステイナブルなことをやっていないっていうことが分かったり。食への興味はもちろん、本当に色んなことを学べるおすすめな映画です。肉を食べることって本当にサステイナブルなのか……? といったところも含めて、かなり勉強になる映画なのですが、なんとアマゾンプライムでも見られるという

M ウォッチリストに入れておきます(笑)。あー、なんかサステイナブルのことを言われると、私なんかもう目も当てられないっていう。どうしたらいいんでしょうかね? まあ、世界はそれだけ意識が高いっていうことですよね。取材する機会が多いから、フランス人の意識の高さとか、毎日のように感じています。買い物をするにも、自分は本当にそれを買っていいのかどうかって、必ず自問自答したりするんですよね。テイクアウトでも容器が使い捨てってことに疑問を感じて、リユースできる容器に統一し、戻したらデポジットとか、そういうシステムが発達してて。日本だとやっぱり過剰包装だし、そこは全然違うなと思う。日本は多分、これからって感じですかね。

関連記事:ステック・アシェはハンバーグ? 肉料理が苦手な人へ告ぐ。

筑穂牛・あかね荘
https://hiizuru-akane.com/
焼肉ホルモン うしごろ
https://ushigoro.com/hormone/
西麻布さくらや
https://nishiazabu-sakuraya.com/
『ステーキ・レボリューション』
http://steakrevolution.jp/

 

まりモグ/幼少期から北京を拠点にアジア、欧米、太平洋の島々などを旅し、モンゴルの羊鍋からフランスのエスカルゴまで、さまざまな現地の料理を食べ歩く。特に香港は、多い時で年4回のペースで通うほどの“香港迷”。食べ過ぎ飲みすぎがたたり、28歳で逆流性胃腸炎を発症。ワイン好きが高じて、2021年にJ.S.A.認定ワインエキスパートを取得。

YK/大学時代、元週刊プレイボーイ編集長で現在はエッセイスト&バーマンの島地勝彦氏の「書生」としてカバン持ちを経験、グルメの洗礼を浴びる。ホテルの配膳のバイト→和牛を扱う飲食店に就職した後、いろいろあって編集部バイトから編集者に。好きなものはオーセンティックバーとトラットリア。ただいまワインエキスパートを目指して修行中。

text: Eri Arimoto

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