グルメ班のおいしいこぼれ話 Vol.4 町中華に新感覚フィナンシェ......グルメ班が注目するおいしいニュース5選!

Gourmet 2023.06.19

フィガロのグルメ班が、足を使ってかき集めたおいしいネタを座談トーク! 最新ニュースから推しグルメまで、食いしん坊なら押さえておきたい耳寄り情報をテーマ別にお届け。第4回は知っておくと自慢できる新規参入グルメについて、本誌グルメ担当のまりモグとFIGARO.jpグルメ担当のYKが語り尽くします。

八芳園の庭園を眺めながら、新感覚フュージョン料理に舌鼓。

まりモグ(以下M) 今回は、いま注目すべきニューカマーのグルメ情報をお届けします。まずは創業80周年を迎えた八芳園の話題から。こちらの「RESTAURANT ENJYU」が4月25日にリニューアルオープンしました。和洋中のジャンルに捉われない“イノベーティブフュージョン”というのをコンセプトに掲げていますが、大きな窓からは日本庭園を眺めることができ、和のハレの日感がすごい。ディナーはコース1万5千円のみで、リニューアルオープンのレセプションではこちらをいただいてきました。

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明るい時間はもちろん、ライトアップされる夜の庭も雰囲気がある。

最初は生ハムとか出てきてイタリアンっぽいかなと思えば、魚料理では出汁をベースにした料理が出てきたり。最後の締めは、釜で炊いたご飯でしたが、それが阿寒湖飯という出汁で食べるリゾットみたいな料理で。何料理なのかジャンルにくくることができないおもしろさがありましたね。ドリンクをペアリングしてもらいましたが、日本酒が出たり、ワインが出たり……とこちらもミックススタイル。イタリアンをベースに、色んなものが入っている新感覚のお料理ですけど、四季折々のお庭を楽しみながら食事をできるっていうのもいいものだなあと。

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リニューアルオープンメニュー¥15,000。ドリンクペアリングは6杯付きで+¥6,600

YK(以下Y) 格式高い、特別な施設で食べるご飯とかっていいですね、なんか。

M たまにこういうお店を訪れるのは気分が上がっていいですよね。知っておくと結婚式とか宴会以外でも訪れる理由になりそうです。

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運気が上がる⁉ ポップな町中華で餃子や炒飯をがっつりと。

Y 5月頭にオープンした「ラッキー・アレクサンダー・チャイナ」は、町中華を意識したメニューを打ち出していますが、アメリカのチャイナタウンにありそうな中華料理店というか、ちょっと映画に出てきそうな佇まいをしていて。

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松見坂に面したラッキー・アレクサンダー・チャイナの外観。ぱっと見の外国感が好印象!

M ポップな町中華って感じですかね? デザインとかも含めて。赤い机の感じとか、壁に掛けられた漢字の書だったり、いわゆる町中華ぽいんですけど、“ダサかわいい、レトロかわいい”感じですかね? スタイリッシュすぎないというか。そして立地が松見坂、神泉駅から徒歩10分っていう。

Y 電車とかだとアクセスがいいとは言えないエリアですけど、逆に落ち着いた飲食店があるエリアで。

M エリア的に、芸能人がこっそり通うイメージですかね。話題になりそうな店がもうちょっと増えると、20代とかも増えてきそう。

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餃子の皮は厚め。仔羊餃子¥770(5個)。

Y 個人的には羊の餃子が気に入ったんですけど。ラム肉の餃子、独特の風味もあったりして、クセになる味で。

M ここは餃子を推しとしていて、結構皮は厚め。“もっちり系”餃子と謳っていますが、食べごたえがありましたね。ちなみに私は定番の炒飯がいちばんおいしいなあと思いました。「開運玉子チャーハン」っていう、本当にシンプルな炒飯で。これを軸に食べながらおかずをつまんで、ワインやビールを飲んだりするのがいいかなと。

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大海老炒飯¥1,760。

Y あと、めちゃくちゃリーズナブルでしたよね。

M 450円ぐらいから一品料理があって、いちばん高いメニューでも税込で2000円ぐらい。

Y あと、お酒は基本的にナチュラルワインにこだわってましたね。ナチュールが泡と、白、オレンジ、赤ワイン。これらがグラスであって、あとはボトルで用意。個人的には、ロゼのグラスがあるとより良いなと思いましたが、いかがですか?

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ナチュラルワインはグラス¥1045〜、ボトル¥4,950〜。青島ビールや紹興酒、烏龍ハイなど町中華らしいドリンクも揃う。

M これから種類が増えてくるかもしれないですね。あと余談なんですけど、お店に行かれた方は必ずトイレをチェックしてもらいたいなと。キンキラに輝く金のトイレがそこに! 訪れるたびに運気が上がるパワースポットのような空間になっています(笑)

Y “ラッキー”・アレクサンダーですからね。あと、デザートにめちゃくちゃ感動しました。マンゴープリンだったんですけど、かわいいサイズ感のものが出てくると思ったら、ガラスの器にすごいカッコいいのが盛り付けられて。

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パッションフルーツのつぶつぶ感も楽しいマンゴープリン¥715

M 私が食べたのが、湯円(タンユェン)っていう、いわゆる白玉団子みたいなメニューで、お湯とか温かいシロップの中に入ってるんですけど、中国では結構定番のデザートで。日本だとあんまりないので、これが食べられたのが個人的にはうれしく。子どもの頃から大好きなんです。

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あまりお目にかかれない湯円は、黒胡麻と落花生の2味がセットに。¥660

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知る人ぞ知る神戸の割烹の名店が、麻布十番へ進出。

M 天ぷら料理で知られる神戸の名店が、天ぷらと神戸ビーフの割烹「麻布十番 真田」として5月にオープンさせましたね。飲み物込みのコースで5万5000円する、かなりの高級店で。店内は6席のみ、完全予約制というエクスクルーシブなお店です。料理長の真田篤史氏は、兵庫の三ノ宮で割烹「天ぷら料理 花歩」をやられていて、そこもやりつつ、東京では自分の名前を付けてお店をオープンさせたと。名物は神戸牛と天ぷらの二本柱になっています。おもしろいなと思ったのが、最初にかつお節を削るところから始まり、出汁をとるのですが、何も味付けしてないこの出汁をまず飲ませてくれるっていう。この日は実山椒と神戸牛の料理をいただきましたが、目の前でしゃぶしゃぶした神戸牛にたっぷりの実山椒を添えて提供してくれるのですが、お肉がまさにとろけるような味わいで。もうひとつのハイライトが天ぷら。何種類かいただきましたが、稚鮎に関しては泳いでいるところを見せてもらったあとで、目の前で揚げてくれて、あつあつをいただく。で、いちばん感動したのは、低温で揚げたサツマイモですね。銀座の「てんぷら 近藤」とか、サツマイモを輪切りにして30分以上かけて揚げるとか結構話題になりましたが、こちらでは3時間! 皮がザクザク、中がとろとろで。このコントラストがすごくおもしろいなあと思いました。芋の種類はそのときによって変わるんですけれども、どれも3時間以上揚げて仕上げるというこだわりぶりです。

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実山椒と神戸牛のお椀。

Y 焼き芋みたいな食感ですかね?

 中心部の食感はそうですね。サツマイモの天ぷらは本当に衝撃的でした。

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丸ごと揚げたサツマイモは、スティック状にして提供される。

Y 天ぷらから肉、じゃなく肉から天ぷらへ……といった流れもおもしろいですね。

 和食って世の中的にすごく価格が上がってますけど、その中でも特にお高い部類だなと思うので、1年に1回行けたらラッキーかな。店主の真田さんは、神戸牛が大好きで、東京の方はもちろん、世界の方々にも食べてもらいたいと東京進出を決めたのだそう。目利きや調理法にかなり自信を持っていらっしゃる感じでした。

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「Mr. CHEESECAKE」のシェフが、焼き菓子ブランドをローンチ!

 次はスイーツの話に行きましょうか。2018年からオンライン限定で展開している「Mr. CHEESECAKE」っていうチーズケーキに特化したブランドがあるのですが、とろけるような新食感ですごく話題になりましたよね。コロナ禍の状況も後押しして、オンラインで買えるスイーツとして大人気になったんですけど、シェフの田村浩二さんが5月に「ETEL(エテル)」っていう新ブランドを立ち上げました。こちらもオンライン限定販売の焼き菓子ブランドということで、まずはシェフが最も思い入れのあるというフィナンシェを3種類リリースしています。今日のネタにしようと思ってYK君にひとつ味見してもらったんですけど、どうでした?

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Y ハーブの香りがすごく効いていて。食感はふわりとして上品な味わいで、本当にしっかり作ってる味だなって何も説明を受けなくても分かるっていう。黒い部分がサクッとした食感というか、ちょっと舌の上で踊る感じもあって。複雑味があってすごいなあって思いました。

M ちょっとおもしろいですよね、フィナンシェとしては。フレーバーは3種類あって、「バニラトンカ」っていうのが、いわゆる定番の味わいのフィナンシェです。YK君にあげたのが「マーガオ」っていうレモングラスとマーガオを加えたもので、マーガオとは胡椒みたいな台湾の香辛料です。もうひとつの「キャラメルウーロン」には、キャラメルと岩茶を使っています。

Y 紅茶の茶葉を入れるっていうのは結構やりがちというか、あれはあれでおいしいんですけど、合わせてみたときに、フィナンシェって柔らかいから食感が難しいなって思いますね。特に自分で作ったりすると、葉っぱ入れすぎたなとか。バランスよくきれいに作るのは、やはり職人技というか。

M 食感がやっぱりすごいですよね。衝撃というかびっくりしたんですけど、つなぎ目がつかないというかなめらかで。アーモンドプードルを多く配合しているので、フィナンシェらしさが増しているし、恐らく水分の調整なのかしっとりと繋がっているんです。

Y たとえ方がアレですけど、そば粉10割でそばを打つのに近い感覚なのかな。

M 相当難しいんだろうと感じます。でもそれだけ風味はすごくアップするし。

Y  びっくりしたのが、いただいたときに、特にお茶とか水とか用意してなくて。「あっ、コーヒーでも用意しておけば」と思いながら食べたんですけど、そのあとに、口の中の水分を持ってかれる感じがあんまりなくて。

M うん、確かに。このフィナンシェ、常温で送られてくるんですけど、YK君が食べたみたいに常温で食べるのがいちばんバランスが良いんですけど、ちょっとリベイクするのもアリ。ふんわりしてきて香りも立つので、家で食べるならリベイクもいいかな。外はカリカリになるので、それもいいなって。あ、そうそう、普通のフィナンシェって四角いんですけど、こちらのは丸いんです。一般的なフィナンシェって結構周りがガッチガチなのに、こちらはラウンド型なので、ほどよい縁になってて鋭くない。

Y マドレーヌっぽさをちょっと感じつつ。口に入れやすいサイズ感だったし、何ていうか引っかかりが何もない感じ。

M さっきの食べ方の続きですが、リベイクとか常温というのは普通ですけど、冷凍っていうのもぜひ試していただきたいです。冷凍庫で一晩寝かせて、そのまま出してすぐ食べるというのもシェフが薦めていて。アイスみたいになるわけじゃなく、ねっとりしたキャラメルみたいな食感になるんです。これは特に「キャラメルウーロン」が合うような気がします。本当にキャラメルみたいになりそう。これはもう、フィナンシェ革命⁉

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フレンチのシェフがバターサンドを手掛けたら?

M もうひとつスイーツのネタですが、「フロリレージュ」のシェフの川手寛康さんが、新スイーツブランド「DEAR BUTTER SAND」をプロデュース。オンラインショップで5月より発売が始まっています。

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「幸せの焦がしバターサンド」¥4,480(6個)

Y 商品名が「幸せの焦がしバターサンド」。純日本産の沖縄のラム酒を使った、とても贅沢なラムレーズンに、焦がしバターの香りを纏わせたバタークリームを使用。クッキー生地でなくフランスブルターニュ地方の、焼き目のついたガレット・ブルトンヌを使っているのがポイントですね。形が亀甲模様みたいな6角形。

M 縁起の良さもあって、贈り物としてもいいかもしれない。

Y 間に入ってるバターの厚さもすごいですよね。

M 普通の2倍ぐらいありますよね。背徳系デザートの代表かも(笑)

Y ラムレーズンに使用しているラム酒が、日本のラム好きにはたまらない沖縄は伊江島のイエラムのアグリコールのラムを使ってまして。オーク樽熟成なんでめちゃくちゃいい香りするんですよね。

M 沖縄のホテル、ハレクラニに「シルー」っていうファインダイニングがあって、去年取材しました。ひとり3万ぐらいする料理なんですけど、そこの監修を川手さんがされていて。オープン前からずっと沖縄に通い、沖縄の食材をいろいろと捜し当てたみたいなんです。で、現在も通ってるようなので、もしかしたらですけど、その中でこの伊江島のラムに出会ったんじゃないかなと推測しています。

Y バターサンドは6個入りで4480円。人に持って行きたいというのもありつつ、家でひとりでゆっくり、ウィスキーとかそれこそラムと併せていただきたいですね。

M 余談ですけど、バターサンドと言えば、フードエッセイストの平野紗季子さんが数年前からプロデュースしている「ノー・レーズン・サンドイッチ」っていうブランドがあって、それも6個入りで4000円ぐらいするので、ちょっと特別感のあるバターサンドが増えてますね。ひと口食べると結構満足感があるので、ご褒美おやつにはすごくいいと思います。ちなみに「ノー・レーズン・サンドイッチ」は、買うのがすごく大変なんです。昔で言うチケットぴあみたいに、予約開始時刻と同時にサイトにアクセスして、連打する。アラームを5分前にかけて、スタンバイして買いました。

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Y バターサンドで言うと、これも全く余談なんですけど。先日神楽坂の「ジェフリー」っていうカウンターのフレンチに妻と行ったんですけど。

M あ、こちらですね。>>関連記事:【いま行きたいのは、小さくておいしい店】ハレの日は、特別なフレンチで。

Y 陣内さんってシェフが、フリーにやりたいという願いを込めて作ったお店だから「J FREE」という名前なんですが、メニューはシェフが出したいものをちょっとずつ改良して出してるところがあるようで。僕が伺ったときに、最後のデザートでこれ試作なんで食べてみてくださいって出されたのがバターサンドで。パンに付けるバターも塩味が効いてて、めちゃくちゃおいしいエシレバターだと思うんですけど、そこに自分で漬け込んだレーズンを添えて、焼いたパイ生地に挟んでくれて。「皆さんの評価がよかったら定番化するかもしれません」って仰ってました。フレンチシェフも皆さん、バターサンドが大好きなんだなーと。

 

 

まりモグ/幼少期から北京を拠点にアジア、欧米、太平洋の島々などを旅し、モンゴルの羊鍋からフランスのエスカルゴまで、さまざまな現地の料理を食べ歩く。特に香港は、多い時で年4回のペースで通うほどの“香港迷”。食べ過ぎ飲みすぎがたたり、28歳で逆流性胃腸炎を発症。ワイン好きが高じて、2021年にJ.S.A.認定ワインエキスパートを取得。

YK/大学時代、元週刊プレイボーイ編集長で現在はエッセイスト&バーマンの島地勝彦氏の「書生」としてカバン持ちを経験、グルメの洗礼を浴びる。ホテルの配膳のバイト→和牛を扱う飲食店に就職した後、いろいろあって編集部バイトから編集者に。好きなものはオーセンティックバーとトラットリア。ただいまワインエキスパートを目指して修行中。

text: Eri Arimoto

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