「ワイン基本のキ」セミナー講義録 そもそもワインってどんなお酒?

Gourmet 2024.05.21

フィガロワインクラブの大人気試飲セミナー「ワイン基本のキ」。イベント内での解説を講義録としてアーカイブしていきます。第1回は序論、「そもそもワインとは?」。講師、講義録の監修はワインジャーナリストの柳忠之さん

>>5月25日(土)13時から、「ワイン基本のキ:白ワインのアイドル、シャルドネ編」参加者募集中!


ワインってどんなお酒?

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赤、白、ロゼ、オレンジ、泡...甘いもの、酸っぱいもの、渋いもの、爽やかなもの、深みのあるもの、苦いものなど、多種多様なワインの世界。果てしなく、おいしいワインの文化を一緒に紐解いていこう!

ワインとはブドウから造られたお酒のこと。いまから8000年ほど前、アジアとヨーロッパの境界線にあたるコーカサス地方、いまのジョージアあたりで誕生したとされる(諸説あり)。

ワイン造りの文化はエジプトに渡ると同時に植民地にも広がり、紀元前3000〜2000年頃にはギリシャ、紀元前1000年頃にイタリアや北アフリカ、それから500年かけてスペイン、ポルトガル、南フランスへと広がっていった。

ヨーロッパ人の入植により、ワイン文化はアメリカ新大陸やオーストラリア、ニュージーランドにも伝播する。しかし本格的なワイン造りは、優良なブドウ品種が導入されるようになった19世紀半ば以降のこと。日本でも明治初期の殖産興業の中、ワイン造りが開始された。

世界中でワインが造られている理由とは?

簡単に言えば、「誰でも簡単に造ることができる」から。ブドウを潰して放置すれば、環境中の酵母の働きによって自然に発酵というプロセスが始まり、酵母はブドウの果汁に含まれる糖分をアルコールと二酸化炭素に分解していく。それを搾れば、ワインが出来上がるのだ。

ただし、「おいしいワイン」を造るのは簡単ではない。ブドウを潰して自然発酵させるだけでは、酒にならず酢(ワインビネガー)になってしまう確率の方がはるかに高い。人類はおいしく安全なワインが飲めるよう、さまざまな研究を重ねてきた。それは近代、エノロジー(醸造学)という学問として確立されている。

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世界のワインの種類とは?

百貨店やスーパーのワインコーナーで戸惑ってしまうのは、ワインの種類が多すぎるから。世界でどれくらいの種類のワインが出ているのか、正確な数字が出せないほどだ。それらは主に次の3つの要因がある。

●ブドウ品種の違い
●気候や土壌などブドウを育てる環境の違い
●ブドウを育て、それをワインにする造り手の違い

これらの中でいちばん違いがわかりやすいのが、ブドウ品種による違いだ。世界中には何千種類ものブドウ品種がある。しかし世界中で売られているワインの大半は、代表的な10種類程度のブドウ品種から造られている。つまり、10種のブドウ品種の特徴を知ってしまえば、日々のワイン選びで困ることはほぼなくなると言っていい。

【代表的な赤ワイン品種】
●カベルネ・ソーヴィニヨン
●メルロ
●ピノ・ノワール
●シラー
●グルナッシュ

【代表的な白ワイン品種】
●シャルドネ
●ソーヴィニヨン・ブラン
●リースリング
●ピノ・グリ
●ヴィオニエ

いくつか例外はあるものの、これら10品種は世界各地で栽培されている国際的なブドウ品種だ。(実際にはイタリアのサンジョヴェーゼ、スペインのテンプラニーリョのように、その国ならではの土着品種も...それはまた基本を抑えた後で! )

品種×産地で、味わいがわかるようになる!?

ブドウの栽培環境、つまり産地によっても風味は変化する。それは、ブドウが育つ気候条件や土壌、斜面の向き、風の通り具合といった環境が異なるためだ。

たとえば同じブドウ品種でも、フランスのブルゴーニュ地方とカリフォルニアのナパ・ヴァレーで栽培したものでは、ワインの風味に明確な違いが生まれる。こうした自然条件のことをフランス語でテロワールと呼ぶ。ブドウ品種による違いを縦軸、 産地≒テロワールを横軸としたマトリックスから、自分好みのワインのスタイルを把握していこう

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テイスティングの作法

「基本のキ」で使用するのは「テイスティンググラス」と呼ばれる、ワインの香りや味わいの特徴をフラットに伝えるワイングラス。グラスを手に取ったら、まずはグラスを少し傾けて、ワインの色を確かめよう

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ワインの色をチェックする際は、白い紙やテーブルクロスを背景にするとより色調や濃度がわかりやすい。写真は本講義の講師を務めたワインジャーナリスト、柳忠之

赤ワインも白ワインも、色が濃ければブドウが成熟し、しっかりとした味わいを感じやすく、温暖な産地で造られている可能性がある。逆に色が淡ければブドウは成熟度が低く、繊細な味わいが想像でき、冷涼な地域で作られた可能性がある。また、ワイングラスに沿った外周部分の色もチェックしよう。縁が青みがかって(赤ワインなら紫、白ワインなら緑)いれば、ワインが若い可能性が高く、経年とともに縁に明るさが見えるようになり、ヴィンテージワインともなればレンガやコハクのような褐色に変化していく。ただし、飲んでみると見た目から想像した味わいとは全く別の個性や特徴が感じられることも! それもまたワインの楽しみだ。

飲むまでにはもう少し我慢! 今度はグラスを鼻に近づけて香りを嗅いでみよう

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グラスの口に鼻を少し突っ込むような形で匂いを嗅ぐ。最初は分かりづらい香りも、テイスティングノートを確認しながら試していくうちに段々と認識できるようになってくるから不思議だ。

グレープフルーツやバラ、ライチなどのブドウ品種由来の香り、バニラやコーヒー、スパイスやチョコレートといった樽からのニュアンスがわかるかもしれない。最初の香りの印象を確かめたら、次に手首を軸にグラスを回し(これをスワリングと呼ぶ)、ワインを少し空気に触れさせて香りの変化を感じよう。ワインの奥に閉じ込められていた特徴が立ち上ってくるはずだ。慣れないうちは、グラスの底をテーブルの上に置いたまま、右利きであれば反時計回り、左利きであれば時計回りに揺するように回せば、こぼしても隣の人の衣服を汚す確率はグッと低くなる。

さてお待ちかね、ワインを口に含んで味わいを確認しよう! この時、あまり大量にワインを口に入れすぎると、風味が分かりづらくなってしまう。最大限にワインを楽しむためには、少しづつワインを口に運び、舌の上を液体が流れる感触を楽しもう。舌全体に液体を渡らせるイメージでワインを飲むことで、甘さ、酸っぱさ、苦さを感じやすくなる。味わいも香りと同様、果物や植物、スパイスなどの、何に似ているかの印象を想像しながら考えていこう。これは、飲んでいるワインがどんな料理に合うかという「ペアリング」の基本となる。

また、飲み込んだ後にワインの風味が続くことを余韻と呼び、これが長いほど上質なワインとみなされている。

赤ワインやオレンジワインの場合、舌の上や頰の内側が収斂するようながざらつくような感触を覚えることがある。これがブドウに含まれるタンニンという渋みの成分だ。これもサラサラと流れるように感じるものから、液体に溶け込んだように緻密に感じるもの、ザラザラとして口が重たくなったかのように感じるものまでさまざまだ。また、ワインを飲んだ後に口の中が乾いたようにキュッと引き締まるような感覚を覚えることも。これはワインに含まれるミネラルが引き起こしている可能性がある。こちらは貝殻や石灰、火打ち石などの鉱物でそのニュアンスを例える。これらの作用を利用して、たとえば脂の多い肉料理にはタンニンの多い赤ワインを合わせて口の中をさっぱりと洗い流す、またクリーミーな牡蠣にはミネラル感のある引き締まったワインを合わせてその旨みを倍増させる、といったように料理の楽しみの幅を広げてくれるのが、ワインと料理のペアリングの醍醐味だ。

ワインを口に含んだ状態で鼻から呼吸をすると、先ほど嗅いだだけでは分かりづらかった香りが取れることも! これは鼻と口が繋がっていることによってよりダイレクトに香りがわかるから。そして実は、アルコール度数の高低も味わいを左右する大事な要因。果実味、渋み、香り、そしてアルコール度数の高いワインを「フルボディ」のワインと呼び、中間くらいのものが「ミディアムボディ」、爽やかさで軽やかな特徴をもつものを「ライトボディ」と呼ぶが、これらは厳密な定義があるわけではない。

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テイスティングノート

シャルドネ・エクスプレッション・リザーヴ

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シャルドネ エクスプレッション リザーヴ2022 ¥2,959/ヴィラール ファイン ワインズ(チリ)

ヴィンテージ:2022
ブドウ品種:シャルドネ
ワイン産地:チリ/カサブランカ・ヴァレー
生産者:ヴィラール・ファイン・ワインズ
編集YKのテイスティングノート:レモンのような柑橘、白い花、花の蜜と、バニラのような樽の香り。熟した洋梨の果実味と、少しリッチなバターのようなコク。

リースリング トロッケン2021

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リースリング トロッケン2021 ¥3,629/ロバート ヴァイル(ドイツ)

ヴィンテージ:2021
ブドウ品種:リースリング
ワイン産地:ドイツ/ラインガウ
生産者:ロバート・ヴァイル
編集YKのテイスティングノート:グレープフルーツ、青リンゴ、白い花のような香り、グレープフルーツ、青リンゴ、クリーミーな味わいに上品な酸味、ミネラル感。

ブルゴーニュ ルージュ レ シャン ド ラ クロワ2021

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ブルゴーニュ ルージュ レ シャン ド ラ クロワ2021 ¥2,749/ドメーヌ デュ フール パッソ(フランス)

ヴィンテージ:2021
ブドウ品種:ピノ・ノワール
ワイン産地:フランス/ブルゴーニュ
生産者:ドメーヌ・デュ・フール・パッソ
編集YKのテイスティングノート:ラズベリー、シナモン、スミレの花、なめした革のような香り、ラズベリーやブルーベリーのような酸味のある味わい、流れるようなタンニン、やや長い余韻。

サブミッション カベルネ ソーヴィニヨン

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サブミッション カベルネ ソーヴィニヨン ¥2,529/689セラーズ(アメリカ)

ヴィンテージ:2019
ブドウ品種:カベルネ・ソーヴィニヨン
ワイン産地:アメリカ/カリフォルニア
生産者:689セラーズ
編集YKのテイスティングノート:ブルーベリージャム、チョコレート、杉の木のような針葉樹の香り、ブルーベリー、カシスのような黒系果実の生き生きした味わい、しなやかなタンニン、やや長い余韻。

>>5月25日(土)13時から、「ワイン基本のキ:白ワインのアイドル、シャルドネ編」参加者募集中!

text: madame FIGARO japon

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