ビフォーアフター!味気ないオフィスが上質で明るいロフトに。

Interiors 2023.10.08

インテリア設計スタジオUn Jour d’Avrilのクリステル・ラポルトの手によって、ブローニュにある建物の最上階のオフィスが、アットホームな雰囲気のロフト風アパルトマンに生まれ変わった。

230817-mf-avant-apres-01.jpgインテリア設計事務所Un Jour d’Avrilのクリステル・ラポルトが手掛けた居心地のいいアパルトマン。応接間、キッチン、ダイニング、ワークスペースを兼ねたリビング。photography: Gabrielle Voinot

誰でも一度は、家具の裏に隠された秘密の部屋に憧れたことがあるだろう。パリとマルセイユを拠点とするインテリア設計スタジオUn Jour d’Avril創業者のクリステル・ラポルトは、こんな子どもの頃の願いを現実にした。クライアントが購入したのは、ブローニュにあるオープンスペースをメインとしたオフィス。インテリアデザイナーとオーナーでカップルは、プロジェクトの内容だけでなく、建築家とクライアントの双方の感性を考慮して両者の仲立ちをする不動産事務所Archikを介して出会った。クリステルは、PR会社のアーティスティックディレクターからインテリアデザイナーに転業し、2008年にインテリア事務所を設立。今回のプロジェクトを進めるにあたって、クライアントの声に耳を傾け、場所の持ち味を生かすという独自の方法論をフルに発揮した。そうして出来上がったのは、光が隅々まで差し込む、驚きに満ちた125平方mのロフト風アパルトマン……。インテリアデザイナーが自らこの異色の物件を案内してくれた。

Un jour d’avril
unjourdavril.com

Archik
archik.fr

出発点

「クライアントはブーローニュの125平方mのオフィスに一目惚れしたそうです。その気持ちはよくわかります! 建物の最上階にあり、光が燦々と降り注ぐオフィスで、眺望も素晴らしく、広々としたバルコニーとルーフトップテラスも備えていました。また、オフィスを住居に転用するために必要な許可もすでに取得済みでした。オーナーカップルは不動産事務所Archikのアドバイスで、プロジェクトの実現が可能かどうかの相談に訪れました。彼らのプロジェクトとは、個室もいくつか備えたオープンスペースを、寝室2部屋、書斎、リビング、キッチン、浴室ふたつ、ランドリールーム、そして十分な収納を備えたアパルトマンにリフォームすること。これはいわば挑戦でした。たとえば、排水管スペースが1箇所しかないことや、構造上重要なコンクリートの柱がメイン空間の真ん中にあることなど、技術的な制約がいくつかありました。また、場合によっては既存の壁を取り除いても構わないから、光が空間全体に差し込むようにしてほしい、というクライアントの要望を満たす必要もありました。制約こそ創意工夫を生む、と考えているので、このチャレンジを受けて立つことにしました!」

「構造上重要なコンクリートの柱が玄関の正面にあったので、私たちはこれをエントランスの一要素にすることにしました! 温もりを与えるために木製のカバーで柱を覆い、家に帰ってきたときに鍵を置けるように小さい棚板を設置。エントランスにはコートや靴などを仕舞える小振りの戸棚も設けました」

230817-mf-avant-apres-02.jpgビフォー:空間の真ん中にある柱は技術的な問題から抜くことができない。photography: photo presse

230817-mf-avant-apres-03.jpgアフター:木製のカバーで覆い、棚板を取り付けた。太い柱が玄関カウンターに変身。photography: Gabrielle Voinot

 

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リビング

「オフィスの主要部分はオープンスペースでしたが、音響室やディレクターのオフィスなど、間仕切りで仕切られた個室もいくつもありました。間仕切りはほぼ全て取り払い、光が空間の隅々まで届くように、間取りを見直しました。リビングの間取りは窓の位置と技術的な制限を考慮して導き出しています。応接間はアクセスしやすいように、また光を最大限に享受できるよう、バルコニーのそばに。利用機会があまり多くないダイニングは部屋の中央に。キッチンは一番奥。それは既存の排水設備にできるだけ近づける必要があったからです。右側にはワークスペースもあります。床は全体的にもとのフローリングを残しましたが、キッチンだけは防水コンクリートを敷いています」

230817-mf-avant-apres-04.jpgビフォー:仕切られた小さなオフィスとオープンスペース。広いリビングと一体化したキッチンを設けるために、この間仕切りは取り外されることに。photography: photo presse

230817-mf-avant-apres-05.jpgアフター:間仕切りが取り払われた、広々とした空間。バルコニーに面したリビングとキッチン。photography: Gabrielle Voinot

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本棚

「本棚はリビングの要。玄関を開けるとまず目に入るのがこの本棚です。私たちは複数の要望を同時に叶えるデザインを考えました。まずはクライアントが所有する多くの書籍を収納するという実用面。そして、間仕切りを設ける代わりに、本棚を壁として利用することにしました。本棚の裏にゲスト用の浴室とトイレが隠れています。本棚と一体になったトロンプルイユの扉から入る仕組みで、驚きと遊び心のある家具です。色は濃い青緑を選んだので、ホワイトキューブのような印象にはならず、くつろいだ雰囲気をもたらします。色の選択は改装の過程で変化しました。当初、クライアントはオレンジを希望していたので、私の方で青緑を基調とした補完的なカラーパレットを作成しました。最終的にオレンジではなくこの色が採用されました(オレンジは結局どこにも使っていません)。この青緑は寝室やキッチンの防水コンクリートの床でも使用しています」

230817-mf-avant-apres-06.jpgビフォー:左奥の仕切りのあるオフィスは、オープンキッチンに。整理棚は秘密の隠し扉のある本棚になる予定。photography: photo presse

230817-mf-avant-apres-07.jpgアフター:隠し扉のある本棚。扉の奥はゲスト用トイレと浴室。photography: Gabrielle Voinot

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ワークスペース

「ワークスペースはリビングの一角、玄関を入って右側に設けました。間仕切りを残すつもりでしたが、最終的にはやはり採光を考えて取り払うことにしました。ワークスペースは間仕切りを残した主寝室に隣接しています。ワークスペースの家具はすべて造り付けで、空間の他の部分と溶け込むよう一体感のある仕上がりになっています。コンピューターや書類を整理しやすいように、収納の設計にもこだわりました」

230817-mf-avant-apres-08.jpgビフォー:間仕切りが多すぎる! リビングとなるオープンスペース部分を拡張して光が隅々まで届くようにし、オープンタイプのワークスペースを設置するために、内壁の右側は撤去することに。左の部分は残して主寝室に改装する。photography: photo presse

230817-mf-avant-apres-09.jpgアフター:リビングから見たメインベッドルームに通じる木製の扉。寝室の壁に沿って、開放的で機能的なワークスペースを設けた。デスク周りの家具は造り付け。photography: Gabrielle Voinot

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キッチン

「先ほど言ったように、排水管スペースが一箇所しかなかったので、キッチンと浴室を設置できる場所は限られていました。それ以外の場所に設けるとなると、大工事をしなければなりませんでした。キッチンはリビングの一番奥にあり、応接スペースに隣接しています。床には若干青みがかった色合いの防水コンクリートを敷きました。キッチンには間仕切りを設けなかったので、フローリングと質感の違う床材を用いて、視覚的にキッチンスペースを区切る方法を採りました。キッチンの床は本棚の色と同系色。このキッチンスペースに和やかな雰囲気を作り出すために、窓に沿ってボックスを設置し、そこに木製のベンチを設えました。とてもシンプルなキッチンに温かみが加わりました。プレーンな仕上がりにしたのは、存在感のある本棚とのバランスを考えてのこと。ひとつの空間に強い要素がふたつあるのは望ましくないと思ったのです。キッチンの各要素のデザインはかなり控えめですが、とても機能的な作りになっています。たとえばキッチンの右側には、小さな食品庫に通じる扉もあります」

230817-mf-avant-apres-10.jpgアフター:窓際にベンチのあるシンプルなキッチン。木製のベンチが温もりを感じさせる。photography: Gabrielle Voinot

 

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両親用のスイートルーム

「主寝室には本棚の右側にある扉から入ります。ヘッドボードは造り付けで、寝室と浴室を隔てる仕切りでもあります。左側は開放して、浴室とゆるくつながる間取りになっています。ここでも床が空間を区切る役割を果たしています。寝室はフローリングで、浴室はテラゾー仕上げを用いています。浴室はシンメトリックなレイアウト。寝室から木製の洗面台と洗面ボウルが見えますが、まったく同じ作りの洗面台が右側、つまり反対側の窓際にもあります。このふたつのエレメントに挟まれて、浴室の中心に、全面ガラス張りのシャワールームがあります。透明感を重視したデザインで、両側からアクセスできます。クライアントは上質でシンプルな天然素材を使いたいと強く希望していました」

230817-mf-avant-apres-11.jpgアフター:寝室。造り付けのヘッドボードは浴室と隔てる壁の役割も果たしている。photography: Gabrielle Voinot

230817-mf-avant-apres-12.jpgアフター:明るい浴室。ふたつの同型の洗面台に囲まれたガラス張りのシャワーコーナー。photography: Gabrielle Voinot

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text: Vanessa Zocchetti (madame.lefigaro.fr)

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