18世紀の邸宅で、歴史と創造性を美しくミックス。|アーティストの別荘訪問(3)

Interiors 2024.09.09

フランスの生活に根付く"暮らしの美学"、アール・ドゥ・ヴィーヴル。その精神を体現するアーティストの別荘を訪問。アントワネット・ポワソン創設者のヴァンサン・ファレリーとジャン=バティスト・マルタンのブルターニュ地方の家へ。


18世紀の邸宅を修復し、同時代の手法の壁紙で彩る。

ふたりが18世紀と同じ木版印刷の技術で、32×42センチのドミノペーパーを使った壁紙を作り始めたのは2012年のこと。その頃のインテリアはすっきり無地の北欧風がトレンドだったので、わずかな愛好家の間でしか知られていなかった。「初めてメゾン・エ・オブジェの見本市に参加したら、パリのボン・マルシェやニューヨークのジョン・デリアンに気に入られたのです」とジャン=バティストは語る。

Entrance

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玄関ホールのややざらついた板の間仕切りは、もともとあったもの。素朴な木のモチーフを手描きした結果、味わいがあって明るく、奥行きを感じさせる仕上がりに。スイッチはフォンティーニ製と、ディテールにこだわっている。

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Bathroom

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浴室をサロンのような雰囲気にするため、壁上部は湿気に強いタイプの壁紙を張った。下の木の部分は配管を隠すための厚みがあるので、コンソールのようにお気に入りのオブジェを飾ることができた。

その後、コロナ禍のロックダウンで、家は自己表現の場として見直され、カラフルでミックススタイルのインテリアがクローズアップされるようになった。アントワネット・ポワソンはグッチ、ジアン、ヴェルサイユ宮殿などとコラボし、テキスタイルコレクションから食器や香水まで手がけるまでになる。さらにはパリのアトリエに加え、ブルターニュ地方のポール=ルイに家を購入することに! それは、ふたりにとって予想外の展開だったという。

「顧客のフランソワーズ・ブーズから、ポール=ルイがきっと気に入るであろう18世紀の邸宅がある、と連絡が入りました。購入の予定はまったくなかったのですが、フランソワーズが当時の所有者との約束を取り付け、20年2月に見学に行きました。奇跡的なまでに保存状態が良かったのは、歴代の所有者がきちんと手入れしていたからでしょう。18世紀の造作が多く残っており、ルイ15世様式と一緒にルイ14世様式の暖炉も複数あって......最高でした!」

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Bedroom

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光が入る明るい寝室は扉や柱をインディアンイエローに塗り、間に壁紙を張った。18世紀らしさを強調するチェストの上は、鏡、船の模型、ドミノペーパーでカバーした本など古いものでまとめている。

同年12月に購入したものの、住むには若干の工事が必要だった。

「1950年代に増築されたガレージを壊して、当初の状態を復元することに。昔の外観を取り戻したかったので、唯一残っていた壁の造作を頼りに想像力を働かせました。また、張り替えられていた1階の床には、18世紀の床のままだった2階の床に似た寄せ木張りの床を探して替えました。自分たちも修復が専門なので壁を削ってみたのですが、壁紙は見つからず......。もともとグレージュの塗装壁だったのがわかってがっかりしました」

とはいえ、ふたりがこの家の歴史を損なうことなく修復した結果はご覧のとおり。ここはセカンドハウスとしてではなく、どうやらふたりは腰を据えるらしい。一部のスタッフがこの地で働き始め、レストランを併設した新ショップもオープン。提供する料理もふたりが作っているそう。手をかけたふたりの田舎暮らしが始まっている。

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車で数分のビーチで18世紀風ピクニック。木の板と架台でできたヴィンテージの折りたたみテーブル、陶器の皿、グラス、テーブルクロスに使ったアンティークのシーツなどなど。
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『Chez Antoinette Poisson, ou l'Art de Vivre au Fil des Saisons
(アントワネット・ポワソンの家、四季折々の暮らし)』

2023年10月にフラマリオン社から出版。単なるインテリア本ではなく、古さとクリエイティビティをどうミックスさせるべきか、の指南書にもなっている。アントワネット・ポワソンのスタイルにどっぷり浸かれる全240ページ。ヴァンサン・ファレリー&ジャン=バティスト・マルタン著 Flammarion刊 55ユーロ

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Vincent Farelly(左)& Jean-Baptiste Martin(右)
ヴァンサン・ファレリー & ジャン=バティスト・マルタン
オーベルニュ地方の歴史建造物を修復している時に、18世紀の壁紙、ドミノペーパーを発見。当時の手法を蘇らせ、2012年にブランドを設立。パリ11区にアトリエを持つ。

【合わせて読みたい】
サラ・ラヴォワンヌ、インテリアもモードも自然の手触り。
「青は私の色」サラ・ラヴォワンヌのブルー・コレクション。

*「フィガロジャポン」2024年9月号より抜粋

photography: Ruth Ribeaucourt(Flammarion, 2023)  text: Vanessa Zocchetti(Madame Figaro)

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