オスマン様式の部屋を4人家族向けのポップなインテリアに大改造!
Interiors 2025.12.13

スタジオ・カスティーユは、古いままの状態だったアパルトマンを現代のライフスタイルに合わせて再設計し、コンテンポラリーなデザインコードに沿う空間へと作り変えた。気分が上がる空間――それこそが、パリとリヨンを拠点とするスタジオ・カスティーユのリノベーション・プロジェクトを特徴づけるものだ。色彩や光、そして空間全体を変える小さなデコレーションのディテールへのこだわりはもちろん、より心地よく暮らしやすい空間づくりのための動線設計にも力を注ぎ、どんな場所にも" joie de vivre(生きる喜び)"を吹き込んでいる。

パリのローム通りのこのアパルトマンの青い扉を開けると、134㎡の空間が広がり、古いモールディングや暖炉が新しい色彩と調和している。photography: Agence Smilzz
パリ北西部、ローム通りにあるあるアパルトマンを4人家族のために再構築したプロジェクトを手がけたマチルド・アベルに案内してもらうと、その魅力が一目でわかるだろう。
「17区にあるこのアパルトマンは、134㎡の広さの美しいオスマン様式の空間で、長年にわたって同じ家族が住んでいました。そのため、一度も再構築されたことがなく、良い点もあれば不便な点もありました。暖炉やモールディング(装飾的な壁や天井の縁飾り)は保存されていて、それは大きな魅力でした。一方で、現代のライフスタイルに合わせて設計し直されておらず、部屋の配置もいまの生活とはかけ離れたものでした。たとえば、廊下の突き当たりにあるごく小さなキッチンは、昔の使用人部屋に隣接していて、3つの続き間のリビングが並ぶといった具合です。入居するのは夫婦と2人の子どもからなる家族で、もっと流動的で一貫性のある空間を必要としていました。私たちの当初の計画では、キッチンをリビングのひとつに移す予定でしたが、共同住宅の規約上それは認められませんでした。建物全体に関わる技術的な理由で、この案を管理組合に提出しなければならなかったのです。そのため、私たちはこの"離れた場所にあるキッチン"を受け入れて設計するしかなく、結果としてそれが私たちの創造力をさらに刺激するチャレンジとなったのです!」
玄関
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典型的な星形のオスマン様式の玄関。photography: Studio Castille
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敷居のような効果をつくるため、壁と天井をブルーで仕上げた玄関。photography: Agence Smilzz
「この玄関は、典型的な星形のオスマン様式の間取りになっており、すべての部屋へとつながっています。私たちはこの構造をそのまま残しました。モールディングはそれほど上質なものではなかったので、配管や電気系統などの設備を隠すための偽天井を設置して天井を少し下げても、特に残念に思うことはありませんでした。この偽天井によって高さは10cmほど低くなりましたが、その代わりに敷居のような効果を生み出すため、つまりアパルトマン全体の入口としてちょっと特別な箱のような空間にするために、床と天井をブルーに塗装しました。」

玄関からは寝室、バスルーム、リビング、そして奥のキッチンへと続く長い廊下へアクセスできる。スタジオ・カスティーユがデザインしたガラス扉越しに、キッチンが見える。photography: Studio Castille
「また、玄関からはキッチン、リビング、バスルーム、そして主寝室へと続くため、扉のデザインにも力を入れました。 特にキッチンへ通じる廊下に開くガラス扉は、もともと別のプロジェクトのためにデザインしたものでしたが、クライアントがとても気に入り、同じものを使ってほしいと希望されたのです。」
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キッチン
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とても小さく、どこか寂しい空間。photography: Studio Castille
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ガラスの引き戸の奥にランドリールームを隠した、機能的で美しいキッチン。photography: Agence Smilzz
「キッチンは、玄関から伸びる廊下の突き当たりにあります。もともとはとても小さくて窮屈な空間で、日常的に食事もできる暮らしの中心となる場所にしたいというクライアントの希望にはまったく合っていませんでした。そこで私たちは、キッチンと廊下を隔てていた壁をすべて取り払い、隣接していた使用人部屋も取り込むことにしました。この拡張によってできた奥のスペースを活用し、洗濯機などを隠せるランドリールームを新たに設けました。このランドリーはガラスの引き戸でキッチンと仕切られており、光が通り明るさを保てるようになっています。」

日常的に食事ができる、暮らしの場として設計されたキッチン。photography: Agence Smilzz

パノラミックな壁紙や真鍮色のうろこ模様など、あらゆるディテールにこだわったキッチン。photography: Agence Smilzz
「デザイン面では、特に色選びに関して何度もやりとりを重ねました。最終的に、玄関と同じ深いブルーを採用し、オーダーメイドのベンチシートやキッチンキャビネットをその色で統一しました。家具自体はIKEAのベースユニットにPlum社の扉を取り付けたものです(玄関のブルーも、Plum社の扉と同じ色をRessourceで見つけました)。また、床にはヘリンボーン柄の寄せ木フローリングを敷き、空間全体の調和を図っています。さらに、ひときわ装飾的なアクセントとして、壁の一面に大きな柄の壁紙を採用しました。 真鍮製の水栓金具が華やかさを添え、そのゴールドのトーンは取っ手や食器棚、巾木にもさりげなく反映されています。こうして生まれたキッチンは、機能的でありながらとても美しい空間となり、玄関からガラス扉越しに見える景色が家全体の印象を決定づけています。」
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トイレ
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ごくありふれたトイレ。photography: Studio Castille
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忘れられない印象のトイレに! photography: Agence Smilzz
「キッチンへと続く廊下の途中にトイレがあります。構造自体には手を加えていませんが、壁一面にグリーンの壁紙を貼り、そこには金色のスタイリッシュな顔のイラストが描かれています。床はテラコッタ風の新しいタイルに張り替えました。その結果、まるでローラン・ギャロス(全仏オープン)を思わせるような雰囲気になっています。」
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バスルーム
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どこか無機質で味気ないバスルーム。photography: Studio Castille
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ピンクのタイルで仕上げた、浴槽とシャワーを備えたバスルーム。photography: Agence Smilzz
「このバスルームは玄関から直接アクセスできる位置にあります。花柄のロールスクリーンの左側にあるドアがその入口です。もともとこの部屋には浴槽と洗面台があり、それらは同じ位置のまま残しました。ただし、本格的なファミリーバスルームにするために空間の再構築が必要でした。これが少し複雑な作業でした。隣接する子ども部屋の1㎡を取り込むことにし、その部屋には玄関側とリビング側に2つのドアがあったのですが、玄関側を塞いでリビング側だけを残しました。 これによって、新たにシャワーを設置するスペースを確保できました。」

シンプルなIKEAの家具に、ゴールドの取っ手と脚を加えてエレガントにアレンジ。photography: Agence Smilzz
「デザイン面では、3種類のピンクのタイルを組み合わせ、さらに金色のうろこ模様のモチーフをアクセントとして取り入れています。水栓金具や取っ手などには真鍮を使用し、IKEAの家具にゴールドのハンドルを加えて華やかに仕上げました。」
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リビング・ダイニング
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すでに魅力たっぷりのリビング。photography: Studio Castille
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家族の家具を配した、シンプルで洗練されたリビング兼ダイニング。photography: Agence Smilzz
「リビング・ダイニングへは玄関から直接アクセスできます。この空間はもともととても美しく、見事なモールディングやオリジナルの鏡付き暖炉など、十分に存在感のある要素が揃っていました。クライアントはアンティーク家具や家族の持ち物、楽器などを多くお持ちで、それらをこの部屋に置く予定でした。そのため、私たちは壁を白でまとめ、全体をシンプルに仕上げました。暮らしながら『色を足したくなったらそのときに』と考えてもらえるよう、あえて余白のあるデザインにしています。もともとリビングは玄関との間にガラス扉で仕切られていましたが、キッチンへ続く廊下に新たに設けたオーダーメイドのガラス扉と干渉してしまうため、この扉を撤去し、玄関から直接つながる開口部を設けました。これにより動線がスムーズになり、玄関に入った瞬間、扉が多い中でもすぐにどこがリビングか、つまり来客用の空間かがわかるようになっています。」
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寝室
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暖炉をやむなく撤去する必要があった寝室。photography: Studio Castille
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モールディングを隠さない高さに設計された大きなドレッシング収納を備えた寝室。photography: l'agence Smilzz
「この寝室も玄関に直接面しています。もともとはリビングと同じようにガラス扉が付いていましたが、プライバシーを確保する必要があったため、新たにオーダーメイドの扉を制作しました。デザインは既存のモールディングから着想を得て、真鍮の美しい取っ手をあしらっています。この部屋のモールディングはアパートの中で最も美しく、保存状態も良好でした。一方で、十分な収納を確保することも課題でした。モールディングを隠してしまわないよう、ベッドの正面に天井から20〜30cm下までの高さの大型クローゼットを設置しました。」

暖炉の煙突部分を活かした、オーダーメイドのヘッドボードを備えた寝室。photography: Agence Smilzz
「また、ベッドの背面はもともと壊れていた暖炉の煙突の位置だったため、その部分を活かしてオーダーメイドのヘッドボード兼デスクをデザインしました。これにより、テレワークができるワークスペースを確保しつつ、パソコンなどを自然に目立たなく収納できるようになっています。デスクの上部には収納も設け、機能性と美観を両立させました。」
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子ども部屋
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収納を組み込む必要があった部屋。photography: Studio Castille
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IKEAのモジュールをセミハードボードで囲い、黄色くペイントして仕立てた家具を備えた、女の子のための部屋。photography: Agence Smilzz
「子ども部屋へはリビングからアクセスします。両親の寝室とは対照的に、子ども部屋では天井までの高さを活かした収納を最大限に設けました。収納にはIKEAのキャビネットをベースに使い、それをセミハードボードで囲い、塗装仕上げにしています。さらに、一部は特注の木工家具も組み合わせて空間を仕上げました。女の子の黄色い部屋では、クライアントが『いまあるベッドを残したい』と希望されたため、それを基準にレイアウトを構成し、小さな本棚とベッドヘッドを追加しました。ベッドヘッドは読書灯などを置けるようにデザインされています。」
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バスルーム拡張のために1㎡を割かなければならなかった部屋。photography: Studio Castille
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オーダーメイドの収納にデスクを組み込んだ男の子の部屋。photography: Agence Smilzz
「一方、男の子の青い部屋は、バスルーム拡張のために1㎡を譲った部屋ですが、それでも快適な広さを保っています。ここにはデスク一体型の家具を新たに設計し、勉強スペースと収納を兼ね備えた実用的な空間としました。」
From madameFIGARO.fr
text: Vanessa Zocchetti






