鎌倉通に聞く、私的お気に入りアドレス。 #02 岡尾美代子のおすすめ、鎌倉半径1キロの3軒。
Travel 2018.10.28
「高い建物がないので、鎌倉に帰ると空が広いなぁと感じます」と、スタイリストの岡尾美代子さん。自身のショップ「ロングトラックフーズ」は9年目に突入し、いまや鎌倉の顔に! 庭の雑草抜きの息抜きに出かける、お気に入りの3軒をご紹介。
1. フォー・ラスカル
透きとおるスープがどこまでも優しい、フォー専門店。
大磯の人気店「アジア食堂ラスカル」が、今年9月に鎌倉に移転オープン。かねてからファンの多かったメニュー、ベトナムの国民食、フォーの専門店として再スタートを切った。
優しさに満ちた、透明のスープが秀逸。スープとカニの旨味に、パクチーとライムが爽やかな味わいを引き立てる。「カニとトマトのフォー」¥950
「デイリー バイ ロングトラックフーズのあるレンバイ(鎌倉市農協連即売所)からもすぐ近くです。明るくて気持ちのいい店内で、おいしいフォーやエスニックなプレートが食べられます」と、岡尾さんも早くも常連客に。
メニューは、チキンのフォーやベジタブルフォーなど日によって変わるフォーが数種類に、香草たっぷりのラオスの汁ビーフン「カオソーイ」や、「カツオのたたきベトナム風」など、ビールやワインを合わせたくなる一品料理が豊富。パクチーやトマトなど新鮮な野菜と細切りの米粉麺が、鶏出汁の利いた優しい味わいの透きとおったスープと絡んで、するすると箸が進む。
白ワインのコンポートから作ったイチジクソーダに、三温糖のジンジャーエールなど、自家製のジュース類も手の込んだおいしさ。
白ワインで煮込んだイチジクを使って作られた、自家製の「イチジクソーダ」¥600。ほんのりした甘さがクセになる。
壁一面の窓から光が差し込む、明るい店内。シンプルでクリーンなインテリアが心地よい。
まだ看板もないというオープンしたてのお店だが、すでにたくさんのお客で賑わっている。
---fadeinpager---
2. 鈴木屋酒店
100年以上も続く酒屋が、ナチュラルなワインの宝庫に。
現在4代目の店主、兵藤昭さんが鎌倉由比ケ浜で営む酒屋は、100年以上も続く老舗店。その昔は、日本酒にビール、焼酎に食品類など何でも売っているいわゆる町の酒屋だったのだが、兵藤さんがこの店を継いでから自然な製法で造られたワイン“ヴァン・ナチュール”がずらりと並ぶ店へと変貌。
ナチュール系ワインより、オススメの4本を教えてもらった。左から、飲みやすい自然派ワインの代表的な1本「La Biancara PICO」¥3,888、910年から無農薬ワインを生産する仏・マコン村の老舗が手がける「Julien Guillot Bourgogne Rouge Les Crays」¥4,536、ミネラルの旨味が詰まったエレガントな味わいのリースリング「Gérard Schueller」¥8,208、南仏の瑞々しさが詰まったデイリーワイン向けな「Clos Fantine Faugères」¥3,024
「いい酒屋が多い鎌倉ですが、ここのナチュール系ワインの充実ぶりは比ではありません。普通の酒屋の店構えなのに、店内にはこれでもかっていうくらいのワインがびっしりと並んでいるんです」
普段使いだけでなく、手土産やプレゼントを買う際もこの店で選ぶという岡尾さんにとって、この店は鎌倉の宝だという。
店内では珍しいワインを飲める「角打ちVinさん」と命名されたコーナーもあり、まだ知らないワインとの出合いを求めてやってくる客も多い。角打ちでは、店主も飲んでみたかったというワインが開けられることもあり、店主と客とでワイン談議ができるのもまた楽しい。
この日の角打ちは、店員も飲みたいというローヌ地方のワイン「Gangloff Saint Joseph Blanc」¥12,000が開けられた。
手書きのタグにワインの味や風味が丁寧に書かれている。これを読みながら店内を巡るのもまた楽しい。
ワインへの愛と知識が詰まった店主、兵藤さん(右)と、店員の江澤さん(左)。
---fadeinpager---
3. 鎌倉市農協連即売所
瑞々しい鎌倉野菜がずらりと並ぶ、街の台所。
鎌倉の朝は早く、地元の主婦もレストラン経営者も一流シェフも思い思いのカゴを片手に、新鮮な鎌倉野菜を求めて通称「レンバイ」へと向かう。正式名称は「鎌倉市農協連即売所」で、発足は昭和3年。約70年もの歴史を持つ街の台所だ。
朝日を浴びるエントランス。鎌倉駅の東口を出て、徒歩5分ほどの場所にある。
外国人牧師のアドバイスで、ヨーロッパのマルシェを真似たことが始まりで、生産者が直接消費者に届けるというスタイルがいまも続いている。ここでは地元農家たちが4班に分かれてローテーションで、毎朝出店している。まだ朝露がついた瑞々しい葉もの野菜に、バターナッツや空芯菜、カボッコリーなどちょっと珍しい野菜を発見したり、生産者から調理法について教えてもらったりと、買い物が楽しい。
「朝早くから、新鮮な野菜が並んでいるのを見るのは気持ちがいいし、レンバイを訪れると旬の野菜や新しい野菜を知ることができるのもいいですね。でも何より、新鮮な鎌倉野菜はやっぱりおいしいんです」と、岡尾さんも常連客だ。
毎朝、ほぼ休みなく新鮮な野菜が並べられる。その種類は常に30種以上もあるという。
旬の野菜をいち早く手に入れられるのも、即売所ならではの魅力。
「鎌倉市農協連即売所」の一角にある、パン屋カフェ「パラダイス・アレイ・ブレッド・カンパニー」も、岡尾さんの行きつけの店。
「パラダイス・アレイ・ブレッド・カンパニー」に並ぶ、風味豊かなパンの数々。店内ではパンにスープやサラダなどが付く、モーニングやランチのセットが食べられる。
岡尾さんが友人と営むグローサリーショップ「デイリー バイ ロングトラックフーズ」も、「鎌倉市農協連即売所」の一角に。
「デイリー バイ ロングトラックフーズ」では、岡尾さんのセレクトした美しい雑貨の数々が買える。
人気のパンケーキミックスや、カフェオレベース、買ったばかりの野菜を活用できそうなカレーパウダーなどの調味料も可愛らしく並ぶ。
鎌倉市小町1-13-10
tel:0467-44-3851
営)8:00〜昼頃
休)1月1日〜4日
http://kamakurarenbai.com
Paradise Alley Bread & Co. (鎌倉市農協連即売所内)
tel:0467-84-7203
営)9:00〜19:00(月〜金) 7:30〜19:30(土、日)
休)日
http://cafecactus5139.com/paradisealley/
Daily by Long Track Foods(鎌倉市農協連即売所内)
tel:0467-24-7020
営)10:00〜17:00
休)月 ※祝日は営業
https://longtrackfoods.com
【関連記事】
鎌倉通に聞く、私的お気に入りアドレス。INDEX
#01 菓子研究家いがらしろみが選ぶ、鎌倉のおいしい3軒。
岡尾美代子が見つけた、鎌倉の可愛くて小さな店。
鎌倉野菜と湘南の海に癒されて、パワーチャージ。
スタイリスト。雑誌・書籍などさまざまな媒体のスタイリングを手がけるほか、鎌倉で友人とともにデリカテッセン「DAILY by LONG TRACK FOODS」を営む。近著に、フィガロジャポンの連載企画をまとめた書籍『岡尾美代子の雑貨ヘイ!ヘイ!ヘイ!』(CCCメディアハウス刊)や、『雑貨の友』、『Land Land Land―旅するA to Z』(ともに筑摩書房刊)、『肌ざわりの良いもの』(産業編集センター刊)などがある。
photos : MAYUKO EBINA, réalisation : MIKI SUKA