進化する国際都市、ドバイへの旅。#05 砂漠に囲まれた、ドバイの世界一高いビルから見えるもの。

Travel 2019.09.28

中東の国際都市ドバイは、広さでいうと4,114 km²で、埼玉県とほぼ同じだ。そこに世界一の高層ビル、バージュ・カリファ(ブルジュ・ハリファ)を擁する大都市と、広大な砂漠が同居している。

拡大し続ける巨大都市。

高層ビルが林立するドバイの都心から車で20分ほど内陸へ走ると、見晴らしのよい土地に、大きな施設を建設している現場を見かけた。それはおそらく街で働く人たちが住むための、郊外の集合住宅。未来都市のようなドバイの風景は、まだまだ拡大していくようだ。

「僕はこの街で生まれ育った。ほとんど何もなかった場所に、たくさんのビルがこの20年の間に建設されていくのを目の前で見てきた。この街は勢いがあって魅力的だよ」

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広い大地と空の間に、浮かび上がるようにドバイのビル群が見える。街と郊外のいたる所でクレーンが稼働している。

そう話してくれたのは、ドバイ生まれのパキスタン人の男性。外国籍の人はドバイに永住することができないから、すでに退職した彼の両親は故郷に帰ったという。それでも彼はこの街が好きで、ここでの仕事に誇りを持っていることがはっきり伝わってきた。かつて日本も経験した高度経済成長時代のように、都市が巨大化していくさまは、そこに住む人々にエネルギーを与えるものなのかもしれない。そしてその高揚感と充足感が、国籍の別なくここに住む人たち皆に行きわたっているのではないかと感じられた。

「休日には、友達と砂漠へキャンプに行く。火を焚いてバーベキューしたり、お茶やコーヒーを飲んだり、ただリラックスするんだ。以前は30分も走れば着いたけど、いまは開発が進んで砂漠が少し遠くなった」

もちろん夏は暑いから行かないけどね、と笑う。リラックスしに砂漠へ行く、とはどんな感覚なのか。旅人でもそんな気分を少しだけ味わうことのできる、現地のツアーに参加した。

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砂漠へ向かう途中、タイヤの気圧を抜くための中継地点にて。フェンスの向こうに早くも野生動物を発見! こちらはガゼル。

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砂漠を疾走する4WDから、ラクダの背中に乗り換えて。

アラビアン・アドベンチャー「モーニング・ドゥーン・ドライブ」
Arabian Adventures “Morning Dune Drive”

朝、ホテルまで迎えに来てくれた4WDに乗り、30分ほど走った頃に、舗装された道路から砂漠に入る手前の中継地点でタイヤの空気圧を調整。そうすることでタイヤがさらさらの砂に沈み込んでしまうことなく、うまく走れるようになるという。そこからしばらく進むと、見渡すかぎりどこまでも続くかと思われる砂漠の風景が広がる。

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アラビアオリックスがのんびり食事中。車や人に慣れているのか、すぐ近くを通っても警戒していない様子。

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ここまで来ると360度同じ景色。ところどころに砂漠の植物が生い茂る。

高低差のあるエリアに差しかかると、熟練ドライバーによる砂丘疾走ドライブがスタート。まるでジェットコースターのように駆け抜け、車内で歓声が上がる。砂の上の道なき道を自由自在に突き進む感覚は、ほかでは得られないほど爽快!

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砂埃を上げながら走る4WDの勇姿。車酔いが心配な人は、事前に伝えておけば穏やかに運転してくれるのでご安心を。

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キャンプサイトに到着すると、砂漠の上に広げられた絨毯やクッション、そしてここでもアラブ流のおもてなしであるアラビックコーヒーでのお出迎え。ひと息ついたら、ラクダに乗って砂漠を歩く体験が用意されている。

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砂漠の風景に溶け込むように作られたキャンプサイト。

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屋根が設けられたスペースも。光と影がコントラストを成し、日差しの強さがうかがえる。

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砂漠でいただくアラビックコーヒーとデーツは格別!

ラクダの背中に乗ると、視界がぐんと上に上がり、遥か先まで見渡せるような気がしてくる。初めてのことばかりの砂漠では、“リラックスする”気持ちにはほど遠いほどの刺激がいっぱいだ。それでもドバイに住む人たちがいかに砂漠を近くに感じ、楽しんでいるかを、全身を使って感じられる。

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かつて交易を担ってきた砂漠のキャラバンの姿が目の前に!

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ラクダは後ろ脚から立ち上がるため、その時は座面が急傾斜になるので、乗る際には気をつけて。ベドウィン役はアラブ系の人ではなくインドやパキスタンの人たちが多いが、ラクダの扱い方や乗り方について丁寧に教えてくれる。

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ラクダと4WDが同居する現代の砂漠の風景。シーズンによっては、砂の上でのスノーボード、サンドボードも楽しめる。

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ヒヨコ豆のペースト、フムスや、米や香味野菜をブドウの葉で包んだドルマなど、アラビックスタイルの軽食をキャンプサイトでいただける。

Arabian Adventures “Morning Dune Drive”
料金:1名230AED
問い合わせ先(日本語対応):land@vacation-ota.co.jp
www.arabian-adventures.com
*アラビアン・アドベンチャーでは、砂漠で夜明けを見る「サンライズ・サファリ」やバーベキューを楽しみながら夕日を眺める「サンセット・サファリ」、ラクダに乗って砂漠の動植物を観察できる「キャメル・トレッキング」など、数々の砂漠のアクティビティを用意。詳しくは公式サイトを参照ください。

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世界一高い場所からの眺め。

バージュ・カリファ Burj Khalifa

前述の男性が“この20年の間に〜”と言ったのは、ドバイの象徴ともいえる7ツ星ホテル、バージュ・アル・アラブが1999年に完成し、世界にインパクトを与えて以来、瞬く間に多くのビルが建設されていったから。1950年代には、アルシーフ・ヘリテージ・ホテルが再現したようなエキゾティックな街並みだったのが、信じられないスピードで近未来都市へと変貌した。しかもその過程には湾岸戦争や9.11、リーマンショックなど、激動の時期を経験して、それをドバイの人々はずっと肌で感じてきたのかと思うと想像を絶するものがある。

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円環状のユニークなフォルムの「未来博物館」は、2020年開業予定。未来のサイエンスやテクノロジー、イノベーションを体感できる施設になるという。

午前中に砂漠を満喫したら、午後には世界一の高層ビル、バージュ・カリファの展望台に登り、その砂漠を俯瞰してみることもできる。ダウンタウンにある世界最大規模のショッピングセンター、ドバイモールから入場。地上555m、148階の展望台「アット・ザ・トップ・スカイ」からの風景は、展望台というよりもまるで飛行機から見下ろしているよう。ビル群のすぐ背後には、開発を待つ平らな土地、そして広大な砂漠が広がっているのを一望できる。

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バージュ・カリファは160階建て、高さは828m。「世界一高い建造物」をはじめとする8つの「世界一」でギネス記録に認定されていたが、今年9月には新たに152~154階の「ラウンジ」が「世界一高いラウンジ」に認定され、9冠に!

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148階の展望台「アット・ザ・トップ・スカイ」。エレベーターを降りると、ウェルカムドリンクやスイーツが提供され、リュクスな雰囲気の空間が気分をさらに高めてくれる。

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148階(地上555m)からのドバイの眺め。もはや展望台の枠を超えた見晴らしのよさ。2020年にはサウジアラビアに建設中の1,000mを越すビルが世界一になるが、ドバイではそれを上回る「ドバイ・クリーク・タワー」の建設が進行中。再び世界一の座を奪還予定だ。

バージュ・カリファの階下のドバイモールでは、アバヤと呼ばれる黒い伝統衣装を纏ったローカルの女の子たちも、可愛いサンダルを履いたり、涼しげなPVCのバッグを持っていたり、おしゃれを楽しんでいる。また、ムスリムの女性の中にはヒジャブというヘッドスカーフを巻き、服装はシャツにジーンズなどカジュアルな装いの人も多い。ノースリーブの西洋人やアジア人もいて、ここは世界中の人々が集まる都市だと実感する。

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バージュ・カリファ(写真中央)のふもとには人工湖が広がり、周囲をホテルやスーク(市場)スタイルの施設スーク・アル・バハールなどに取り囲まれ、美しい景観を作り上げている。

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水の煌めきに魅了される、数分間のショー。

ドバイ・ファウンテン Dubai Fountain

夕方になると、そんな人々が次第に外へと向かい、人工湖を囲むレストランのテラス席には家族連れやカップルが着席し始める。お目当ては世界一の噴水ショー「ドバイ・ファウンテン」だ。

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伝統的な渡し舟アブラに乗って至近距離からドバイ・ファウンテンを鑑賞するプランもある。

ショーの時間はわずか3〜5分ほどだが、毎日数回開催され、そのバリエーションは1,000パターン以上あるのだとか。国籍も世代も超えた人々がドバイ・ファウンテンの周りに集まり、感嘆の声をあげ、笑顔を交わし合う。エキサイティングでありながら、何ともピースフルなひととき。そして数分間のエンターテインメントが終われば、それぞれの日常へと戻っていく。

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ドバイ・ファウンテンがスタート。音楽に合わせてリズミカルに噴水が上がる。

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最大150mの高さまで上がるという噴水ショーは、ラスベガスのベラージオホテルの噴水も手がけたアメリカのWET社によるものだ。

Burj Khalifa
1 Sheikh Mohammed bin Rashid Boulevard, Dubai
Tel. +971 4-888-8124
開)8:30〜22:00 *季節により変更あり
入場料:「アット・ザ・トップ」(124、125階)149AED〜、「アット・ザ・トップ・スカイ」(124、125、148階)378AED〜、「ラウンジ」(152〜154階)608AED〜
要予約
*料金は時期や時間帯により異なります。下記公式サイトをご参照ください。
www.burjkhalifa.ae/en


Dubai Fountain
Dubai Mall, Sheikh Mohammed bin Rashid Boulevard, Dubai
Tel. +971 4-362-7500
入場無料
*アブラ乗船、ボードウォークからの鑑賞など有料プランもあり。
*ドバイ・ファウンテンは毎日、数回開催。スケジュールは下記公式サイトをご参照ください。
https://thedubaimall.com/en/entertain-detail/the-dubai-fountain-1

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夜に、地元在住の人が、ドバイのムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム首長が住むという、ザビール宮殿へ連れて行ってくれた。門の手前までは、誰でも訪れてかまわないのだという。

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ザビール宮殿に近づくと、猫がたくさんいるのかと思う鳴き声が。その正体は、宮殿の敷地内に放し飼いされているという無数の孔雀たちだった。そんなところもスケールが大きい!

派手なイメージが先行するドバイだが、いっぽうで「2050年までに二酸化炭素の排出量を世界一抑える都市にする」という計画のもと、17年には砂漠の真ん中にスマートコミュニティ「サステイナブル・シティ」を作り上げたという。

その経済力も、豊富な人材と資源も、ドバイはいまの時代にふさわしいやり方で活用していく底力を秘めているようにも感じられる。かつて星や風を読み、砂漠にいても進むべき道を見極めることに長けていたベドウィンの末裔は、世界一見晴らしのよい場所を手に入れたいま、何を指針にどこへ進んでいくのか。ますますドバイから目が離せない。

【関連記事】
進化する国際都市、ドバイへの旅。INDEX
#01 ドバイのいまと昔が交錯する、噂の新スポットを訪ねて。
#02 エキゾティックな旧市街で、ドバイの歴史散策。
#03 いま訪れたい、ドバイの最旬スポット。〈前編〉
#04 いま訪れたい、ドバイの最旬スポット。〈後編〉

【基本情報】
※1AED(UAEディルハム)=約29円(2019年9月現在)
※ドバイの休日は金曜と土曜です。日曜から1週間がスタートします。
※掲載店の営業時間、定休日、商品の価格などは取材時と異なる場合もあります。ご了承ください。

●取材協力:ドバイ政府観光・商務局
www.visitdubai.com
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