ウイルスと闘う世界のいま。#19 「ニューノーマル」で定着する、自転車のある暮らし。
Travel 2020.05.29
文/長谷川安曇(在ニューヨークライター)
ニューヨークのアンドリュー・クオモ州知事は5月26日、前日の新型コロナウイルス感染症の死者数が、ニューヨーク州の感染拡大が急増し始めた3月下旬以降で最低水準の73人になったと発表した。州内では、10の地域のうち9つの地域が段階的に経済活動を再開。「フェーズ1」と呼ばれる第1段階では建設業、農業、林業、水産業、一部の小売業が再開する。残るはニューヨーク市だが、フェーズ1の再開は「6月上旬になるだろう」と、ビル・デブラシオ市長が発表。不安はまだ残るが、もう少しでロックダウンが緩和されると思うと、明るい気持ちに。
ありがたいことに仕事はあるので、決して時間を持て余している訳ではないのだが、ロックダウン中にできることはほぼすべてやった。Netflix、Amazon Prime、HuluにApple TV+と、テレビ番組は網羅。普段決して得意でない料理にも挑戦して、スムージーやピザ、バナナブレッドとパンデミック中に流行っているメニューも作り、ブレッドメーカーでパンも焼いた(そして失敗した)。
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まったく運動していなかったので、10年ぶりくらいにセントラルパークの約10kmのループを走り、翌日激しく後悔。もっとソフトなエクササイズをしようと、シティバイクに加入して、自転車でウィリアムズバーグ・ブリッジの袂まで行き、橋を歩いて渡るという地味なルートを考案し、週に数回実践。これが意外と気分転換になり、なかなか楽しい。まさかウィリアムズバーグ・ブリッジが1日のハイライトになるとは思わなかったけど、地下鉄がエッセンシャルワーカー(生活の維持に必要不可欠な仕事に従事している人)のみの乗車が奨励されるいま、みんな同じことを考えているらしく、夕方になるとシティバイクの自転車を確保するのも至難の技。自転車屋には毎日列ができ、自転車不足は深刻で、いまネットで注文しても届くのに数カ月かかるという。
ブルックリンのバイクショップ。常に長い列ができている。
パンデミック中でもやっぱりニューヨーカーはカリカリしているらしく、ちょっと自転車でよろよろしたり、間違った方向に行こうものなら、他のサイクリストから即効で怒号が飛び交う。「そんなに怒んなくてもいいじゃん」と感じるいっぽうで、なぜか「活気がある」懐かしのニューヨークを実感するのも事実。地下鉄も恋しいけど、自転車も悪くない。坂道でもペダルが漕げるように、足腰を鍛えないと!
片道40分ほどで渡れる、ブルックリンとマンハッタンを結ぶウィリアムズバーグ・ブリッジ。
私にとって、この生活の中で唯一、自然に触れることができるセントラルパーク。
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texte : AZUMI HASEGAWA, title photo : alamy/amanaimages