歴史と文化の層が深く複雑に重なり合う都市・イスタンブールの現在。

Travel 2024.09.11

アジア、アフリカ、ヨーロッパに広大な領土を持ち、繁栄を誇ったオスマン帝国の首都・コンスタンティノープル(=イスタンブール)には、はるか昔から世界中の人々が集まり、多様な文化が形成されてきた。そんな土地の食文化が豊かにならないわけがない。古くからイスラム圏をはじめとした国々に影響を与え続け、伝統を守りながら進化するイスタンブールの食を堪能する。

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各方面から注目を集めるモダンターキッシュ・レストラン「ミュルヴェル」。

トルコの食が豊かで色彩にとんでいることはいまに始まった事ではないが、そこにモダンな要素が加わることで、近年さらに豊かになっているという。

ヨーロッパとアジアの中間に位置し、中東文化が融合するという地政学的なユニークさ、そして地中海や黒海などで採れる海産物に恵まれ、酪農、農業も盛んなトルコの食文化は、長きに渡って独自の発展をとげているのだ。

近年、トルコ料理をモダンに進化させたレストランが増えてきた中、2022年に初めて公開されたミシュランガイド・イスタンブール版で「ミシュラン ヤングシェフ&サービスアワード」を受賞したメヴリュット・オズカヤがシェフを務めるミュルヴェルが注目を集めている。

美しいボスポラス海峡を見渡すことができるホテルノボテル イスタンブール ボスポラスの最上階に位置するミュルヴェルに入ると、明るくカジュアルでありながらダークトーンの家具や設えでモダンな印象。エントランスから最奥のテーブル席まで見渡すことができ、抜けの良い開放的な空間に胸が躍る。

ミュルヴェルで提供される料理は、シェフの地元であるアナトリア地方や地中海地方で採れたオーガニックの生産者から届く食材だという。

新鮮な食材を用いて伝統を大切にしつつも冒険心にあふれた料理は、「薪を使って炭をつくる。それが私の料理のすべてのベースにあります」とシェフが話すように、この店の心臓部ともいえるオープンキッチンの、さらに核となる暖炉から生み出される。シェフを中心にして料理人たちが躍動するオープンキッチンは、いつまでも眺めていられるほど、躍動的で新鮮な活気に満ちあふれていた。

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スモークしたヨーグルトやグリーンピースのペーストなど、すべてトルコの食材を用いてメニューが構成される。「新鮮なものを正しく扱うようにしています」とシェフ。
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スローローストされたラムの肩肉。香辛料のマリネ液に24時間漬けてから95℃で9時間火を入れ、ハチミツと80種類のスパイスがミックスされたメッセルマージュを塗って焼く。香ばしさと柔らかさが混ざり合う複雑で豊かな味わい。
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「生まれ故郷のアナトリア地方ほかトルコの伝統的な料理をモダンにアレンジできるようにしています」とメヴリュット・オズカヤ氏。2022年にミシュラン2つ星を獲得したレストランの「トゥルク・ファーティヒ・トゥタック」で修業を積んだ。
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店の中央に配置されたオープンキッチン。
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客席のどの席からもボスポラス海峡の美しい景色を眺めることができる。

Murverre
ミュルヴェル

Novotel İstanbul Bosphorus, Kemankeş Cad. no: 57-59 Karaköy İstanbul
https://www.murverrestaurant.com

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歴史ある旧市街にて、暮らすようなステイ体験を

世界各都市の文化を特別な空間と体験で届ける、個性豊かな魅力にあふれるヒルトンのコレクションブランド「キュリオ・コレクションbyヒルトン」に2019に加わったのが「ハギア ソフィア マンションズ イスタンブール キュリオ コレクション バイ ヒルトン」。アヤソフィア大聖堂、トプカプ宮殿にも徒歩5分の距離という、旧市街の中心部に位置している。フロントデスクと客室棟、カフェやスパがあるメインエリア以外に、近隣の邸宅をリノベーションした客室棟がいくつもあり、トータルで17のホテルで形成されているのだ。宿泊者たちは美しい旧市街に点在する棟を行き来し、まるでアルベルゴ・ディフーゾように、旧市街の一角すべてがホテルのように感じられるのだ。この魅惑の都市に暮らすように滞在することができる。

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離れた邸宅ホテル棟やレストランへの移動はカートサービスがある。

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イスラミックな模様のタイル装飾が美しいバスルーム。
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キングスーペリアルームのベッドルームーム。1泊271リラ~。
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邸宅ホテルの一角で開催されていたトルコ伝統芸術「エブル(マーブリング)」のワークショップ。水の上に落としたインクで模様を描く。
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マーブリングで描かれたチューリップ。オランダのイメージが強いチューリップだが、その原産国はトルコ。トルコの黒花にもなっている。

ホテルが経営するレストランは2018年オープン。およそ1500年前に造られたという貯水池跡。井戸の跡だった天窓から光が差し込む荘厳な地下空間で、イスタンブールの歴史の階層の深さに触れながら、カイセリ出身のシェフが手がける、トルコ各地の伝統料理をベースにして洗練されたモダンターキッシュ料理を楽しむことができる。

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ホテルが経営するレストラン「サルニック」のランチコースの前菜。ひよこ豆のフムス、モハマラ(トマトとパプリカのペースト)、ハイダレ(ヨーグルトとミント)メゼ。
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1500年前の貯水池跡をリノンベーションして2018年にオープン。

The Salnic
サルニック

Cankurtaran, Soğuk Çeşme Sk. No:26, 34122 Fatih,İstanbul, Turkey
https://sarnicrestaurant.com/tr

Hagia Sofia Mansions Istanbul, Curio Collection by Hilton
ハギア ソフィア マンションズ イスタンブール キュリオ コレクション バイ ヒルトン

Kabasakal Cd No5 Sultanahmet, Fatih, Istanbul, 34122, Türkiye
https://www.hilton.com/ja/

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かつて確かに世界の中心だった都市の自信と誇り。

イスタンブール。紛れもなく世界有数のツーリスティックシティであるこの街の魅力は多くの人によって語られてきた。時代と地政学的背景、この奥深さは唯一無二の存在感を放つ名所は目が回りそうなほど多く点在し、魅力が多いゆえに観光地化がされすぎているという面もあるのも事実。だが、あらためて訪れるとこの街のレイヤーの深さに驚かされることばかりなのだ。

滞在中に訪れたギリシャ料理のレストランで隣に座ったトルコ人男性は「ギリシャ料理もトルコ料理の影響下にあるんですよ」と得意げに語った。確かにギリシャ料理とトルコ料理の類似点は多い。かつてトルコ族によって建国され西アジアからバルカン半島、地中海にも領土を広げた広大なオスマン帝国にギリシャも入っていたことからもその話は頷けるというもの。数種類の前菜が少しずつ盛り付けて提供される「メゼ」の発祥はやはりトルコで、ギリシャや中東各国でも親しまれている。

この文化的背景がイスタンブールの面白さ、魅力なのだろう。西洋でも東洋でもない全く独自のカルチャー。イスタンブールにはかつて世界の確かに中心であった土地ならではの自信と誇りがある。観光化が進んだとしても、計り知れないほどに深く広い魅力にあふれているのだと再認識した。

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1616年に完成したスルタンアフメット・ジャーミィ。オスマン朝建築の傑作のひとつに挙げられるその姿は圧倒的な存在感を放つ。
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「ブルーモスク」の愛称を持つスルタンアフメット・ジャーミィ内部は2万枚以上の鮮やかな青色のイズニックタイルで装飾されている。
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537年にギリシア正教の大聖堂として建てられた後に1453年にジャーミィ(イスラム礼拝堂)に変えられたアヤソフィア。ジャーミィにする際に一度漆喰で塗りつぶされたモザイク画が20世紀初頭に発見され、現在は博物館として一般公開されている。
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イスタンブール風物詩のひとつ(?)である、ガラタ橋の釣り師たち。釣果はまずまずのようだった。
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かつてはユダヤ人の居住区で若手アーティストが多く暮らし始めたことで注目を集めるバラットエリアにて、いい顔をしているムール貝売りのお兄さんを発見。
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トルコ伝統菓子の代表といえばヴァクラヴァ。1864年創業の老舗『ハフィズ・ムスタファ1864』のピスタチオのヴァクラヴァはピスタチオがぎっしり。

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開放的な「Miles&Smiles ラウンジ」でくつろぎの時間を。

2018年に運用を開始したイスタンブール空港。日本からヨーロッパ、アフリカ、中近東、南米を広範囲に繋ぐ空港として世界有数の利用客数を誇るのだが、実はまだ拡張を続けているのだ。2030年の完全開港時には世界最大の空港になるのだという。そんなイスタンブール空港にある「Miles&Smiles ラウンジ」は、世界最大規模になろうとしているイスタンブール空港らしく約 5,600m²というスケール。ビジネスクラス利用客以外も、スターアライアンスのゴールドメンバ―であれば、エコノミークラスの搭乗でも利用ができるのも嬉しい。ラウンジというと、どちらかといえばクローズドな空間になることが多いが、「Miles&Smiles ラウンジ」はどこまでも開放的。そして、広さだけでない、充実のクオリティが詰まっているのだ。特筆すべきは、食の大国らしく洗練された料理の数々。ライブキッチンで提供される料理をはじめ、前菜からデザートまでビュッフェスタイルで提供される料理は、驚くほどにバリエーション豊かで胸が踊る。フライングシェフに始まり、帰路のラウンジまで、食体験の充実に驚くだろう。

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ラウンジ内に数箇所あるライブキッチンではトルコ料理をはじめとした世界各地の料理が次々にできあがる。
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トルコ料理の前菜であるメゼの数々のほかに、サラダやチーズなども充実。
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有機的なラインで起伏に富んだインテリア。お気に入りの場所で時間を過ごすことができる。

ターキッシュ エアラインズ 
https://www.turkishairlines.com/

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photography and editor: Takuro Watanabe

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