長門湯本で深川萩が繋ぐ、昔といまの茶の湯文化。
Travel 2024.10.11
山口県の北西に位置する長門湯本は、温泉とやきものの街。深川萩と呼ばれる萩焼の窯元が集まり、江戸時代から続く茶文化をさまざまな形で受け継いでいる。その魅力を体感すべく、長門湯本を訪れた。
360年を経たいまだからこそ知りたい、萩焼の美
萩焼は、日本三大茶陶のひとつ。いまからおよそ400年前、萩藩主・毛利輝元公の御用窯として、現在の萩市でスタートし、360年前には長門市三ノ瀬(そうのせ)にも開窯した。長門湯本温泉街のすぐ近くに位置する三ノ瀬の萩焼は、窯元のある深川(ふかわ)という地名をとって特に深川萩と呼ばれ、現在、5軒の窯元、8人の陶芸家が活躍。毎年秋には、作品を展示販売するイベント「うつわの秋」が人気を集めている。
萩焼の特徴は、登り窯の力強い火で焼くにもかかわらず、柔和でやさしい表情に仕上がる土の性質にある。そんな土の魅力を巧みにいかし、茶陶のみならず、現代の暮らしに合うものづくりをしている作家のひとりが、坂倉新兵衛さんだ。「茶碗は茶会においてとても重要なお道具なので、作る自分も身を引き締めて制作にのぞみます。一方、日用のうつわは、こんなものがあったらいいなと自然体で取り組むことができる。両方があることで、精力的にものづくりができています」と坂倉さん。
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13代続く田原陶兵衛窯で次世代を担う田原崇雄さんは、釉薬の流れが優美な流白釉(りゅうはくゆう)の作品で知られる。使うのは萩焼に代々用いられてきた大道土(だいどうつち)だ。「共同窯の土中に見つけた陶片の色味にインスピレーションを得て生み出した思い入れのある釉薬です。萩焼伝統の素材をベースに、自分らしい作品を作っていけたらと思っています」と田原さん。
http://tahara-tohbe.com/
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深川萩のうつわでスイーツやお茶を堪能できるカフェ
長門湯本温泉では、2015年に始まった温泉街の再生プロジェクトを機に、地元で生まれ育った30〜40代の陶芸家や温泉宿主と、県内外から移住しこの地に根を下ろした開発担当者たちが一致団結。コミュニティスペースも兼ねた「cafe&pottery音」を共同で立ち上げた。深川萩のうつわで手作りのスイーツやお茶を提供し、地元の人々と旅行者が触れ合う場所にもなっている。
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「界 長門」の川床にて、青空のもと至福の野点体験
音信川沿いの長門湯本温泉には、星野リゾートの温泉旅館「界 長門」があり、10月14日まで開催されているイベント「うつわの秋」の期間中、川床で野点を体験できる。
宿のエントランスにあるあけぼのカフェで深川萩のお茶碗を選び、あらかじめカゴにセットされた野点用の茶道具を持って川床へ。抹茶のたて方を書いたインストラクションも用意されているので、初心者でも安心してトライできる。
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長門のフルーツを生かしたクラフトビール
2021年にオープンしたクラフトビールの醸造所は、ビール好きが高じてこの街に移住し、セカンドキャリアをスタートした夫妻が営む。坂倉新兵衛さん、田原崇雄さん、坂倉善右衛門さんが「うつわの秋」のために制作したビアマグで、出来立てフレッシュなビールをいただける。
地元の果樹園のブラックベリーを使用した「マッド・ツダ・ゴーゼ」は、ベリーの酸味とコクのある甘味が絶妙にマッチ、コリアンダーシードとオレンジピールの入った「おとずれベルジャンホワイト」は、すっきりとした飲み心地、など味わいの異なるビールを常時6〜7種類ラインナップする。
山口県長門市深川湯本湯本1247-2
営)金15:00~19:00、土13:00~19:00(時期によって変更あり・SNS要確認)
不定休
https://www.instagram.com/sanrokuroku_beer/
会期:2024年9月14日(土)〜10月14日(月・祝)
https://fukawahagi.jp/utsuwanoaki2024/
長門湯本温泉
https://yumotoonsen.com/
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