ゆるやかな時の流れを味わう、長門湯本での休日。

Travel 2024.10.11

新山口駅や宇部空港から車で1時間、福岡・博多から2時間の長門湯本温泉は、そのアクセスの良さとローカルな雰囲気が評判で、休日をゆったりと過ごしたいという人々に、近年、特に親しまれている温泉街だ。食事どころや宿がコンパクトにまとまった街並みは、ゆっくり滞在しながら歩いて回るのにぴったり。

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清らかな自然に囲まれた長門湯本温泉郷。

大寧寺と住吉大明神の神様に守られた「神授の湯」

水深き音信川(おとずれがわ)沿いに広がる長門湯本温泉でのステイは、旅館から一歩外に出て、川岸をお散歩するのが醍醐味。散策ルートのちょうど真ん中、住吉神社のふところには、地元住民に愛される公共の湯「恩湯(おんとう)」がある。室町時代に、近隣の大寧寺の禅師が住吉大明神のお告げによって発見したと伝えられるこの温泉は、岩盤から直接湯が湧出している源泉で、全国でも珍しい神様を祀る湯どころだ。

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神社へといざなう朱赤の橋を渡ってモダンな佇まいの恩湯へ。
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2020年にリニューアルし、旅行者にも快適な立ち寄り湯へと生まれ変わった。男湯、女湯、それぞれの浴槽の奥に住吉大明神の像が祀られている。

恩湯の特徴は、体温に近い36〜38度の「ぬる湯」。ゆっくり時間をかけて浸かることができ、温泉成分が皮膚からじんわり浸透して身体の芯から温まる。源泉掛け流しの湯は、アルカリ性単純温泉ながらほんのり硫黄の香りが漂い、肌をなでるとつるん。美白の湯でもある。

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岩盤から湧き出る源泉を守るように、住吉大明神が鎮座する「神授の湯」。
長門湯本温泉 元湯 恩湯
山口県長門市深川湯本2265
営)10:00〜22:00
休)第3火曜(祝日の場合は変更あり)
料金:大人¥990、子ども(4〜12歳)¥500 一日入浴券、回数券、市民割引あり
https://onto.jp/

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音信川のせせらぎと緑のパノラマにほっと癒やされる宿

長門湯本温泉屈指の老舗旅館・大谷山荘は、2023年夏に客室をリニューアル。以前は布団を敷いておもてなししていた和室の多くをベッド式に変更しているが、日本旅館ならではのお部屋の開放感は健在。音信川の豊かな景観、贅沢な山の緑を取り込んだ景色と相まって上質なステイを約束する。

自然と調和するくつろぎの客室は全23タイプ。最も広い120㎡のスイートルームにはプライベートサウナを備え、テラスには"ととのいスペース"も。ゆったりリラックスしながら外気浴を堪能できる。

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大谷山荘 スイート(露天風呂・プライベートサウナ付き)1泊¥110,300〜。
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サウナルームからも穏やかな山の景色が望める。
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琉球畳を取り入れた和のしつらえが活きる。芙蓉ジュニアスイート(露天風呂付き)1泊¥44,300〜。
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24時間お湯が流れ続ける露天風呂を独り占め。

公共の湯「恩湯」では、ぬる湯を味わい、温泉宿では、広々とした大浴場や風情ある露天風呂、サウナやジャグジーなど、さまざまなお湯に身を委ねる。一泊の滞在ではもったいないほどバリエーションに富んだ温泉体験にあふれているから、リピートして何度も通うお客も多い。

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宙に浮いているかのようなパノラマが迎える大浴場・こもれびの湯。
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明るい時間から湯船に浸かる幸せを噛み締めたい露天風呂。

大谷山荘では、山口県で採れた旬の味覚にあふれた食事も見逃せない。毎朝担当者が市場に出向き、ぷりっぷりの魚介や朝採れ野菜を競り落としては、厨房に届けているそう。朝食会場のパンは、ベーカリー専門のスタッフが、毎朝、生地から手作り。焼きたて、サクサクのクロワッサンやデニッシュがたまらない。

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おいしいと評判の塩パンやクロワッサンは、館内のショップでも販売されるほど話題。
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山海の味覚に恵まれた長門市の旬がずらりと並ぶ朝食ビュッフェ。
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地元の根菜・ヤーコンの煮物など郷土料理もふんだんに取り入れている。
大谷山荘
山口県長門市深川湯本2208
0837-25-3300
https://otanisanso.co.jp/

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郷土料理の瓦そばでボリューム満点のランチタイム

長門を訪ねるなら、お昼前後に到着し、川沿いの飲食店で山口の食文化に舌鼓。大谷山荘から歩いてすぐのこちらで、熱々の瓦に茶そばと色とりどりの具材をのせた郷土料理「瓦そば」をぜひ。ジュージューと音を立てて運ばれるそばのパリパリとした食感と、錦糸卵の甘さがクセになる。

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瓦そばとわかめむずびのセット¥1,560。しそわかめのおにぎりは山口の家庭料理の定番。

街歩きがしやすいよう整備された小道には、かつて商店や家屋だった古い建物をリノベーションしてお店を開く人が増えている。1階に「瓦そば柳屋」が店を構える「だいご長屋」も古民家をモダンに再生。使い込まれた柱や梁が視界に入ると、なんだかホッとする。

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築70年の古い木造建築をリノベーションした味わい深い店構え。
瓦そば柳屋
山口県長門市深川湯本1325-1 だいご長屋1F
営)11:00〜19:00(L.O. 18:30)
休)火、第3水曜
https://kawarasoba.co.jp/

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昼はカフェ、夜はバーに代わる居心地のいい場所

だいご長屋の2階は、昼は「cafe and shop Tre」として営業。平日はお茶やスイーツ、週末と月曜日はランチをいただける。窓際のソファ席に1時間もいると、自分もすっかり街になじんだような気がして居心地抜群。

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この日のランチはカリープレート¥1,200。スパイスの効いた本格的な味でとてもおいしい。
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コスメやオーガニックコットンの服など、温泉に入った後にも身につけたいリラックスアイテムをセレクトし販売。
cafe and shop Tre
山口県長門市深川湯本1325-1 だいご長屋2F
営)11:00〜17:00(L.O. 16:30)
休)火、水
https://www.instagram.com/tre_cafeandshop/

夜は「THE BAR NAGATO」にチェンジ。大阪で30年間バーを営んだというバーテンダーの黒田さんの作るカクテルは、長門のフルーツやハーブをふんだんに使った飲みやすいものも充実。本格的なバーは初めてという方にも好評だ。

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昼の雰囲気とは一転、しっとりしたムードが漂う内観に。カウンターの壁には石州瓦があしらわれている。
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ウォッカをベースに梨とコンデンスミルクを加えた豊水梨のバチータ(¥1,870)は、南米のカクテル、カイピロスカをアレンジした一品。長門特産の梨を主役に、柑橘・ゆずきちのフレッシュな酸味と紅茶のリキュールがアクセント。
THE BAR NAGATO
山口県長門市深川湯本1325-1 だいご長屋2F
営)18:00〜24:00
休)月

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長門湯本から萩や秋吉台を結ぶ旅の拠点が来春オープン

2025年春、音信川のほとりに「SOIL Nagatoyumoto」をオープン予定。リバービューの客室、レストラン、アクティビティセンター、サウナで構成。「街のリビングルーム」として、地域住民や観光客が気軽に食事をしたり、地域の温浴施設「恩湯」や複数の場所で湯巡りができる仕組みを計画。山口県のアウトドアツーリズムの拠点も兼ね備え、車で15分ほどの深川湾でのサップ、秋吉台のハイキングなど、体験型ステイをオーガナイズしてくれる。温泉、自然、地元のおいしいもの、と三拍子揃った山口県の魅力を温泉街に滞在しながらまるごと吸収できるとは、なんという贅沢!

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完成予定図。1階にはピッツァレストランもオープン予定だ。
長門湯本温泉
https://yumotoonsen.com/

【関連記事】
長門湯本で深川萩が繋ぐ、昔といまの茶の湯文化。

photography: Keiji Asayama text: Saiko Ena

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