金沢、モダンなうつわを探す旅。

Travel 2025.02.26

金沢のクリエイティブな食文化に欠かせない料理を盛り付けるうつわの存在。工芸も盛んな金沢で、訪れてみたい日常遣いのうつわの店を紹介する。

金沢に作家が集まる理由とは?

石川県は九谷焼、輪島塗など多彩な工芸が生み出される土地。日本各地から作家が移住し制作を行っているが、街全体で作家を育てる仕組みが根付いているという。国立工芸館や金沢21世紀美術館はもとより、全国から有能な職人を集めた加賀藩の御細工所をルーツに持つ金沢市運営の研修施設、卯辰山工芸工房や、金沢美術工芸大学といった学びの場も充実。伝統工芸の継承とともに、このところモダンな感性で生み出された新しい工芸も台頭してきている。

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独特の色調を持つ九谷五彩の古九谷や超絶技巧の赤絵細描など、この地に根付く希少な伝統の九谷焼。©︎Ishikawa Prefecture Tourism League.

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ガラス作家、辻和美の感性を凝縮。

ファクトリーズーマ/ライフ|factory zoomer/life

金沢の工芸を牽引する人気ガラス作家の辻和美の店。犀川沿いの店舗を拡大リニューアルし、2024年4月にオープン。奥まったエントランスから入ると、まず真っ白なギャラリースペースが。さらに奥には480点にも及ぶ、辻和美の作品のスタンダードシリーズを集めたnest(ネスト)と名付けた小部屋を設けている。

木村硝子店に依頼したzoomer+(ズーマ プラス)のコレクションのほか、縁のある作家の作品などセレクトしたうつわやカトラリーなども並ぶ。2階にはアーツアンドサイエンス、ユーモレスクといったこだわりのファッションブランドも。また店で扱ううつわでドリンクを提供する小さなカフェも併設。辻和美の感性を伝える穏やかな空間で、豊かな時間を過ごしてみたい。

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企画展を行うギャラリースペース。写真は過去に開催された佃眞吾の個展の展示風景(会期は終了)。
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nestには辻和美作品スタンダードシリーズが一同に。グラフィカルなパターンのグラスなど、どれも硬質なガラスでありながら温かみのあるモダンさが漂う。現在は納期未定。
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柔らかく淡い色調やテクスチャーに惹かれる辻和美のガラス作品。スタンダードシリーズのカップ各¥9,350
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その場で購入可能なうつわなどをセレクトしたコーナー。井山三希子、中本純也らの作品が並ぶことも。いずれも希少な作品ゆえ、常時置かれているわけではないので幸運にも出合えたら手にしてほしい。zoomer+のグラスは¥3,520~
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金・土・日のみの営業のカフェ、teeor cafe(テオアカフェ)。京都・オオヤコーヒ焙煎所のコーヒーや兵庫・月乃音の中国茶、数量限定でプリンを提供。
ファクトリーズーマ/ライフ|factory zoomer/life

石川県金沢市清川町3-18
営)12:00~18:00
休)火、水
@factoryzoomer_life
https://factory-zoomer.com

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金沢暮らしの豊かさをうつわにのせて。

文月|Fuzuki

金沢駅から徒歩圏内、東別院を有する330mほどのレトロな金澤表参道沿いに、2024年11月にオープンした文月。系列店のカフェ、茶室小雨とともに東京・蔵前から金沢に移転。以前に比べ、うつわを充実させて展開している。

若いスタッフも開店に併せ、金沢に移住。金沢での生活は時間に余裕が生まれ、自然が近く人間らしい丁寧な暮らしができているという。そんな彼らが自身が使いたい、日常に溶け込むようなうつわを、と考え、リアルな視点でセレクトしている。地元石川の作品も並ぶが、佐賀・有田焼や波左見焼など全国各地や海外からのラインナップが主力。

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漆器用の木地からスタートした、石川・輪島を拠点とする四十沢木材工芸のトレイ。KITO雪輪盆、輪花盆 各¥5,500~
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日本の魅力的なアイテムを集めた金沢のニグラムによる、色付けしていない無地の九谷焼の型九谷シリーズ。¥1,210~
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料理が映える白いうつわ。有田焼、やま平窯のフランスシリーズ。小皿¥1,386、菊割小皿¥1,584など。
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奥行きのある広々とした店内は、おしゃれなディスプレイと豊富な商品数で目移りしてしまうほど。
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エントランスに飾られた500枚以上のレコードセレクションも、この店の軽やかなカルチャー感を伝える。

文月|Fuzuki

石川県金沢市安江町5-21 優和マンション1F
営)10:00~17:30
休)月、火
@fuzuki.kanazawa
https://fromafar.stores.jp

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遠出する価値のある、うつわの宝庫。

オンラクル|on la CRU

うつわと生活道具の店、オンラクルは、金沢駅から車で30分ほどの住宅地に2023年6月に移転オープン。ゆったりとした空間には、全国から買い付けしたうつわやガラスが所狭しと並べられている。つくり手の思いも伝えたいと店主、室屋誠が作家と対話しながら集めた選りすぐり作品ばかり。

鑑賞する美術工芸ではなく、普段使いできる作品にこだわったセレクション。虚空蔵窯、九谷青窯など九谷焼のほか、平井悠一、岩崎晴彦、森岡希世子ら地元の作品が充実している。ゆっくりと選んでほしいという思いから、必要以上に店側から声がけをしないという心配りもうれしい。

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石川・能美市で作陶する九谷焼窯元、虚空蔵窯のゴブレット¥3,630~
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テーブルをさりげなくおしゃれに彩ってくれそうなうつわの数々。左は堀畑蘭 鉄絵 花摘オーバル皿(大)¥13,200、(中)¥6,820、右は平井悠一作品¥2,200〜
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滋賀・信楽焼の遊楽窯の谷井直人作品。ギャラリースペースでは定期的に企画展が行われている。¥3,300〜
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日本酒の酒蔵も多い金沢では酒器が豊富。左は兵庫で作陶する市野耕の片口¥5,500、ぐい呑¥3,300。右は信凛窯の仲岡信人の片口¥11,000
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うつわを扱うオンラクルは2階。1階には店のうつわで発酵食ランチやデザートを提供するカフェ然れど(@saredo_cafe)も併設。

オンラクル|on la CRU

石川県金沢市大額町ル 1-1
076-287-3025
営)10:00~17:30
休)年末年始
@on_la_cru
https://shop-onlacru.com

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心和むユニークな九谷焼を。

金沢長右衛門|Kanazawa Choemon

九谷焼の本拠地、石川県能美市で明治12年に創業した老舗窯元、上出長右衛門窯。その直営店として2023年4月にオープンし、人気を集める金沢長右衛門。街なかの香林坊の裏手に位置し、用水が流れる金沢らしい雰囲気を残すせせらぎ通りに店を構えている。

割烹食器に端を発したうつわや、九谷焼を原点とした工芸的で親しみやすいデザインものなど、六代目上出惠悟のユニークかつ独創的なセンスにファンも多い。金沢の飲食店でも多く使われており、ディナーで出合ってお土産に購入したいと訪れる人もいるという。金沢の街歩きをするときに、ぜひチェックしておきたい遊び心あふれるショップだ。

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和食に遊び心を添えるうつわ。左は古九谷の丸紋と古染付の唐子から着想を得たという窯を代表する絵柄、丸紋遊童子。花型皿:中¥5,500 小¥4,730 醤油差し¥8,800。右は茶道具のモチーフ、一閑人がサーフボードに! サーフボード箸置 各¥2,640
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ギフトにもぴったりなくまの蜂蜜瓶。右から黒釉黄彩龍文「HONEY」¥82,500、金白¥41,800
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あえて高温で焼き締めないことで、柔らかな口当たりや手触りを楽しめる新シリーズ「九谷瓷器」。お茶やコーヒーの成分が徐々に沈着し、経年変化を楽しめる使う人が育てるうつわ。九谷焼らしいカラーをモダンに。茶杯 各¥4,070
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雛人形の調度品、犬筥(ばこ)。左右一対で厄除けとし、子どもの健やかな成長と幸せを願ったもの。内側にも玩具などが描かれている。御伽白狗(おとぎしろいぬ)若松に桜・橘 ¥42,900
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金沢長右衛門の内観はポップなイエローの壁が印象的。楽しい驚きに満ちたうつわがラインナップされている。

金沢長右衛門|Kanazawa Choemon

石川県金沢市香林坊2-12-10 1-B
076-254-6388
営)10:00〜12:00、13:00~18:00
休)火
@kanazawa_choemon
https://www.choemonshop.com

 

photography: Masato Shiga(factory zoomer/life, Fuzuki)  editting: Hiroko Koizumi

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