瀬戸内オーシャンビューの開放感と、自然の営みに身を委ねる贅沢。【岡山県・倉敷市|ヘイマ】
Travel 2025.04.11
予定を詰め込む旅ではなく、籠って楽しめる場所でゆっくりと過ごす。そんな贅沢な旅のスタイルにいま私たちは心惹かれる。土地が紡いできた文化や伝統に、モダンな美意識を反映したデザイン宿で、豊かな時の流れを堪能するステイを。
ヘイマ
[ 岡山県 ]倉敷市
最寄りのJR 宇野駅、児島駅からは車で約15分。一日一組でオーシャンビューを独占!
瀬戸内の自然に寄り添い、ミニマルな贅沢を知る。
"ただ、ある"ことを愉しむ。そんな、いたってシンプルな過ごし方がこの宿では特別なひとときになる。天候や時間帯によって表情を変える瀬戸内海の眺望、野生味あふれる木々や岩石がそびえる王子が岳。自然がもたらす恩恵を全身で享受できる場所だから、その営みに寄り添うことが究極の贅沢となるのだ。
エントランスから客室まで、漆喰塗りの長い廊下が続く。白一色の世界は静謐なムード。
美術館を意識したというインテリアはとにかくミニマル。テレビもインターネットもない。削ぎ落とすだけではなく、オーナーの北村健太郎が創り上げた空間には、自然が主役となるようこだわりが織り込まれている。自然光を透かし、海風を捉えた窓際の演出。リビングとダイニングにはオーダーメイドのスピーカーが設置され、風景と調和する音楽が流れている。ルームフレグランスやアメニティ類もこの場所にしっくりくるものだけをセレクト。とはいえ「まだ完成形ではなく、あと数年かけて試行錯誤していくつもり」(北村)。宿も自然の営みのように有機的に変化していく。
リビングのソファなど家具類は、岐阜の工房ヴォールヒュッテにオーダー。
ベッドルームの窓にはカーテンがなく、日の出とともに自然な目覚めが促される。
バスルームの浴槽は左官職人が手塗りで仕上げたもの。オブジェのような存在感。
ヒノキの露天風呂があるテラス。雲のない夜は、波の音を聴き、満天の星を眺めながらの入浴を。
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滞在のもうひとつの楽しみは、武田直シェフによるディナー。瀬戸内の食材を中心に、その日仕入れた素材で繊細かつ自由なクリエイションを展開する。「土地の声を伝え、ここにしかない瀬戸内料理を作りたい」と話す武田の料理は、味わいとともに、うつわの上に美しい情景までもが描かれるよう。
ディナーコースより。地元漁港でとれるアミとガラエビを殻ごと使い、倉敷産の蓮根、自家製セミドライトマト、出汁で炊いた黒米などと合わせた食感も楽しいひと皿。備前焼のうつわは木村肇の作品。
渡り蟹や南瓜のピューレ、温泉卵、燻製したイクラなどを重ね、紅葉した山を表現。
いくつかの温度帯を用いて、水分を失わないよう火入れした鰆はジューシー。ソースに使う香茸もチーズも、地元の生産者を訪ねて入手。
朝食は和定食。米は炊きたてが土釡ごと運ばれ、焼き魚はシェフ自ら天日干ししたものが出される。
アイスランド語で「故郷」を意味するヘイマ。その名のとおり何度でも戻ってきたくなる安らぎに満ちていた。
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立ち寄りスポット
ステイの翌日はココへ!
ベルク
瀬戸内海の多島美を、パノラマで一望。
ヘイマのオーナーが運営するカフェ。王子が岳の頂上にあり、コーヒーなどドリンクや手作りスイーツ、軽食を提供。店内からは瀬戸内海の絶景をパノラマビューで見渡せる。ピアノが置かれ、音楽ライブなどイベントも不定期で開催。
*「フィガロジャポン」2025年3月号より抜粋
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photography: Aya Kawachi