美食、ワイン、工芸......「欧州文化圏の中心」を自認するグラン・テスト地域圏の美しき魅力とは?

Travel 2025.06.30

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2016年、アルザス、ロレーヌ、シャンパーニュ=アルデンヌ地域圏が統合され、「大いなる東の地」を意味するグラン・テスト地域圏が発足した。美食、ワイン、アルティザンたちが手がける工芸など、アールドゥヴィーヴル(暮らしの美学)を育む豊かな土壌があるこの地域の魅力を、2025年大阪・関西万博に来日した地域圏議長のフランク・ルロワに聞いた。

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Franck Leroy/1963年、フランス・パ=ド=カレー県生まれ。パリ政治学院在学中からパ=ド=カレー県選出の上院議員の議会補佐官を務め、卒業後はシャンパーニュ=アルデンヌ地方の公共サービス部門の総合管理部門にプロジェクトマネージャーとして入庁。2000年から複数回にわたりシャンパーニュ・エペルネの市長を務めた。2023年から現職。

ベルギー、スイス、ルクセンブルク、ドイツと国境を接するグラン・テスト地域圏。フランス政府の政策により2016年、フランス北東部に位置していた3地方が統合されたのだが、初期からこのプロジェクトに携わってきたフランク・ルロワは「経済的にも、そしてブランディングとしても大きな意味があった」と語る。

「地方のアイデンティティを消すのではなく、それぞれが強い絆を持って、地方として大きなコミュニケーションを打ち出すことができるようになりました。特に農業・ワイン生産地としての側面において、グラン・テスト地域圏はフランスで1位の生産量を誇っており、国境を接する4カ国への輸出量も豊富です。また、ライン川左岸に位置するストラスブールにはEU欧州議会の本会議場があり、名実ともに"ヨーロッパ文化圏の中心地"、"ヨーロッパのエスプリ"が集うところだと言えます。毎日20万人が、国境を超えて仕事やバケーションのために行き来している、文化の交流地点でもあるのです」

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取材は万博会場内のフランスパビリオンにて行われた。グラン・テスト地域圏は、パビリオンのゴールドパートナーになったアルザスワイン委員会を全面的にバックアップ。4階のビストロでは多彩なアルザスワインが楽しめる。

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ノートルダム寺院の復興にも寄与した、手工芸の職人たち

モゼール地方ではメゾン サンルイが400年以上前から工房を構えるほどガラス工芸が盛んで、アルザス・ロレーヌ地方ではエミール・ガレや、ルネ・ラリックなど名だたるアーティストが工房を構えた。ルネ・ラリックの工房はいまも健在だ。ほかにもアルザスのサン=レオナールでは寄木細工の工房メゾン・スピンドラーがあったり、ヴォージュでは繊維産業が栄えるなど、グラン・テスト地方には手工業の文化も根強い。

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ラリック美術館の展示品。photography: ©ART GE - Pierre Defontaine

「アールドゥヴィーヴル(暮らしの美学)を体現する地域性であり、サヴォアフェール(匠の技)こそが私たちの遺産です。職人はそれぞれが多彩な技能を持っており、自分たちの仕事を伝えることで地域の伝統を紡いできた。それは地域や政府が保護してきたという以上に、職人たち自身が世代から世代に受け継ぎ、繋げてきたという文化があるのです」とルロワ。

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アルザスの繊維産業が日本に紹介された歴史は古く、1863年(江戸時代末期・開国直後)には大阪商人からの発注の記録が残っているという。photography: ©ART GE - Pierre Defontaine

「2019年、不幸な事故でパリのノートルダム大聖堂が火事に見舞われました。その後の再建工事の中で、グラン・テスト地域圏から多くの職人たちが現地を訪れたり、それぞれの工房で活躍しました。屋根組みを直す古くからの建築や、館内のステンドグラス、ガラス工芸などの分野で働きをみせた。あってはならない不幸な事故でしたが、同時に普段は見えなかった、息づいていた伝統が未来を創るということを証明してくれたようにも思います」

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ワインとともに発展してきた、美食の系譜

そしてグラン・テスト地域圏といえば、シャンパーニュ、アルザスというフランスを代表する2大ワイン生産地を抱えることでもその名を馳せている。さらにロレーヌ地方には、近年AOC認定を受けたモゼールなど、小規模ながらも歴史あるワイン産地も存在する。こうした多彩なテロワールは、ワインファンはもちろん、世界中の生産者たちからも尊敬と羨望を集め、味わいやブドウ栽培、醸造技術の習得のために現地を訪れる人たちも多い。

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シャンパーニュのブドウ畑を見下ろしてのテイスティング。photography: ©ART GE - Pierre Defontaine

「シャンパーニュは"プレジール=喜び"のワインだと思います。たとえば赤ん坊が生まれて洗礼を行った時、結婚式の時......昔から祝いの席にシャンパーニュは欠かせないものでした」とルロワ。

瓶内二次発酵から生まれる繊細な泡は王侯貴族や作家、芸術家、映画スターたちも魅了し、祝祭感あふれる席を飾る、常に世界の憧れの飲み物であり続けている。かつては甘口だったと言われるシャンパーニュも、ドザージュ(砂糖の添加量)を少なくし、どんどんとドライに、そしてデリケートな味わいを楽しめるような進化を遂げてきた。

「一方でアルザスワインは、シャンパーニュに比べたらまだまだその真価を世界に届けられているとは言えません。しかしシャンパーニュと同じ製法で造られるクレマン・ダルザスをはじめ、多様な地層が生み出す白ワインと、生産量は少ないながらも美しいピノ・ノワールから造られる赤ワインは、今後ますます多くのワインファンに愛されるようになるはずです。またシャンパーニュと同じように、アルザスワインの生まれる景観はとても美しいものです」

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会場内で提供された、アルザスワインと食のペアリング。

ワインはそれ単体でなく、食卓を彩るもの、と考えるのもアールドゥヴィーヴルのテーマだ。「ワインと食は分かち難いもの。それはお互いを補い合うだけでなく、組み合わせによってはある種のマジックを生むものなのです! 特にアルザスワインにおいて、郷土の料理だけでなく、繊細な日本食と合わせた時のおもしろさが間違いなく感じられるはず」とルロワ。

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「美食もワインも、我々にとって大事な遺産です」と語るルロワ。農業大国でもあるフランスの自信が窺えるようでもあった。

「同時にこれは、素晴らしいシェフがいたから成り立ったわけでも、偉大なワインがあったから生まれたわけでもない。ブドウを育てる人がいて、ワインを造る人がいて、料理を作る人がいて、それを楽しむ人がいる。私たちの地域にとって、美食もワインも大切な"遺産"だと思っています。そのアイデンティティを守るのが、私たちの仕事なのです」

アルザスワインについて詳しく知る

photography: Ami Harita

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